
世に出ることなく開発途中で消えて行ってしまったマシンは数あれど、今でも記憶に残るコンセプトモデルは決して多くない。ここではそんな幻の名車を取り上げてみたい。今回はホンダCBフォアを紹介しよう。
●文:ヤングマシン編集部
市販バージョンは750ccオーバー!?
ホンダが世界に先駆けて量産直4マシン=CB750フォアを発売したのは’69年のこと。つまり、今年は直4CBの生誕30周年にあたるってわけ。そこで、提案モデルというカタチで展示されたのが、このCBフォアだ。見てのとおり、モチーフはCB750フォアだ。エンジンはSOHCではなくDOHCだが、各部のディテールは「復刻」と言っても差し支えないほど、当時のCBを踏襲している。排気量は未発表ではあるが、メーカーでは「オーバーナナハンを想定している」とのことだ。ホンダは過去に、CR110レプリカを提案モデルとしてショーに展示し、ドリーム50として発売した前例がある。つまり、反響次第ではCBフォアの発売も十分アリってわけ。こいつはけっこう楽しみだぜ。
※ヤングマシン1999年12月号より
【HONDA CB FOUR 1999年東京モーターショー出品コンセプトモデル】CB750フォアの30周年を記念して出品された復刻のコンセプトモデル。ホイールは前後ともスポークでフロントのブレーキキャリパーはCB750フォアの例に倣いアウターチューブ前方にマウントしている。■全長2124 全幅870 全高1140(各mm)
タイヤはダンロップTT100GP。フロントのタイヤサイズは100/90-19でリヤは130/80-18という組み合わせ。スイングアームは小判型断面のスチール製でチェーンケースも樹脂ではなくスチールで作られる。リヤサスはイニシャル調整が可能なタイプで、懐かしいハーフカバーが付く。フェンダーは前後ともスチール製でメッキ仕上げだ。
エンジンは空冷直4で、シリンダーの前傾角は極小。クランクケース前方のオイルフィルターケースは当時のデザインを忠実に踏襲している。キャブは負圧式だ。サイドカバーのエンブレムは中央にウイングマークがないものの5角形のデザインはCB750フォアを踏襲。
ガード類を一切持たない美しいリバースコーンタイプのマフラー。(当時)現行のCB400フォアと同様に、集合部や連結パイプなどがない、独立構造となっている。
繊細なデザインのメータAssy。スピードメーター内にウインカーとオイル残量、タコメーター内にニュートラルとハイビームのインジケーターを配置する。
タンクは接合面が外から見えないシームレスタイプを採用。エンブレムはもちろん立体だ。なおタンクキャップも当時のデザインを忠実に再現している。
【後日談】CB FOURが後のCB1100につながった
1999年にCBフォアが出品されて以降、このモデルの動向については音沙汰がなくなり、企画は消滅したものと思われた。そして8年後の2007年、全く異なるスタイルのCB1100Fが東京モーターショーに出品された。1100Fは、前後17インチのキャストホイールを採用しタンクの造形も大きく変更。4本出しだったマフラーは右1本出しの集合タイプとなり、モチーフはCB400フォアと言えるものだった。
そのため、この時点では1100FがCBフォアと関連するコンセプトモデルとして認識されることはなかったが、2010年にCB1100Fの市販版としてCB1100が発表される段階になって、原点が1999年のCBフォアだっということが明かされたのだ。
上は後にデザイン部門のトップとなった小濱光可氏が描いたスケッチ。2010年にCB1100が海外で発表された時に公開され、コンセプトの原点として紹介された。CBフォアはまさに小濱氏のスケッチを形にしたもので、これがCB1100の出発点だったのだ。排気量は750㏄に設定しつつ900ccまで想定していたことも分かる。
「美・匠・楽」の徹底演出
- 空冷4気筒の機械美を最大限に演出するENG設計(外観) DOHC750㏄(900)バーチカル4気筒はこの車の主役
- シンプルかつ合理的手作り感あふれるダブルクレードルフレームはフレームの王道。フレームとENGの空間の美しさ演出
- 深しぼりフランジレスタンクは外観部品の主役。自然で美しいフォルム
- クロノグラフを連想するメーター(スミス風)。針動美の追求
- 一世を風靡した殿様ライディングポジション。楽で堂々
- 1シリンダー1マフラーの4本マフラー。機能をシンプルに演出
CBフォアのスケッチとともに記されたメモを読むと、空冷エンジンの美しさに拘り鷹揚な乗り味を目指したCB1100は、CBフォアが掲げたコンセプトと合致している。750~900ccの排気量や4本マフラーまでは採用に至らなかったものの、フランジレスタンクは2017年モデルで採り入れるなど、「美・匠・楽」の徹底演出が貫かれているのが分かるだろう。よって、CBフォアは幻のモデルとは言えないが、CB750フォア復刻という意味では幻の名車としておきたい。
【HONDA CB1100F 2007年東京モーターショー出品コンセプトモデル】前後17インチのスポーティなモデルに変貌した。エンジンは900㏄だったと伝えられる。ちなみに’17型で前後17インチのCB1100RSも追加されている。
【HONDA CB1100 2010年型北米仕様】エンジンをCB1300ベースの空冷1140ccとし、ホイールを前後18インチにして市販された。デザインはモダンな2007年コンセプトモデルからクラシック路線に修正されている。
【HONDA CB1100EX 2017年型国内仕様】2014年にタイプ追加されたCB1100EXの最新型。フランジレスタンクを採用した他、LEDヘッドライトや新マフラー&ホイールハブなど多くの部分がアップデートされている。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([特集] 幻の名車)
2ストローク90ccの「CO-29」は、キーレスにポップアップスクリーン採用 1988年に劇場版「AKIRA」が公開された翌年、1989年8月にウェルカムプラザ青山で「MOVE HONDA MOTOR[…]
1984年にツインチューブフレームを採用していた これはホンダウェルカムプラザ青山で1989年8月に開催されたイベント「MOVE」に出品されたプロトタイプのCR-1。モトクロッサー、CR500Rのエン[…]
GLの元となった水平6気筒試作車 CB750フォアの発売後、モーターサイクルキングとは何かを探るために試作された1台。ロータリーエンジンのような滑らかさを求めて水平6気筒としたが、ミッションを後ろにつ[…]
市販されなかったターボはミッドナイトスペシャル仕様 1981年10月末~11月にかけて開催された東京モーターショーは、各社がターボのモデルを一斉に出品して話題となった回である。ターボ過給器付き2輪車は[…]
これが後のGL500につながったかは不明 これはいろいろなエンジン型式の可能性を探るために開発された1台で、クランク軸縦置きの200㏄空冷Vツインを搭載したもの。製造コストが高く、商品化できなかったと[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA] | 名車/旧車/絶版車)
2ストローク90ccの「CO-29」は、キーレスにポップアップスクリーン採用 1988年に劇場版「AKIRA」が公開された翌年、1989年8月にウェルカムプラザ青山で「MOVE HONDA MOTOR[…]
ABSタイプに上品なホワイトが登場 発売は、2018年4月20日。ABSの有無によって、2つのタイプが設定されていた。ABSタイプには、CBR250RRの先鋭的なフォルムが際立つニューカラー、パールグ[…]
往年のCBを思わせる伝統のカラーリング 2020年モデルのCB1300 SPシリーズに追加されたのは、1980年代に販売されたCB750Fシリーズ(海外ではCB900FやCB1100Fも)の中でも、青[…]
4年ぶりのフルモデルチェンジだった 2018年モデルが発売されたのは、2018年4月6日のこと。フルモデルチェンジだったこともあり、外観からして第2世代とは異なることが明らかだった。これは、2017年[…]
ホンダ初の市販ターボ【1981 ホンダCX500ターボ】 時は1980年代。本車が”省エネ目的”というお題目で当時の陸運局を”陥落”させ、日本にもターボの時代が訪れた。これを追うように各バイクメーカー[…]
人気記事ランキング(全体)
自分のミスではないアクシデントで運命を分ける空気圧! タイヤの空気圧は大事……わかっちゃいるけど、つい面倒でチェックが疎かになりがち。 しかし脅かすワケではないけれど、実は空気圧が適正に保たれていない[…]
1位:「モンキー125」で黄色いモンキー復活【欧州】 ホンダが欧州で、125ccモデル×3車種を発表。いずれも、日本で販売中のカラーリングを纏ったモンキー125、ダックス125、スーパーカブC125の[…]
1990年に撤廃された、国内販売車の排気量上限自主規制 大排気量ランキングの話を始める前に、少し歴史を遡ってみよう。日本では、1969年のホンダCB750Fourの登場を機に、当時の国産車の最大排気量[…]
整備部門に加えて塗装や磨き作業まで社内で行うエルオート。コンディションに応じた最善策で販売車両を製作できるのが最大の強み 数ある絶版車の中で頂点に君臨し続けているカワサキZシリーズ。人気車種ゆえ大物の[…]
オイルの匂いとコーヒーの香り。隠れ家へようこそ。 56designが4月12日に奈良県奈良市にオープンさせる「56design NARA」。以前から要望が多かったという、同社初となる関西圏の新店舗だ。[…]
最新の投稿記事(全体)
XSR900 GPの登場によりカジュアル寄りに回帰したXSR900 ヤマハは、クロスプレーンコンセプトの888cc並列3気筒を搭載するスポーツヘリテイジ「XSR900」をマイナーチェンジ。ライディング[…]
2025年2月6日改訂 125ccスクーターは16歳から取得可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)[…]
1位:ホンダ「CB1000ホーネット」試乗インプレッション エンジンが抜群に気持ちいい! ホンダが2025年1月23日に発売した新型モデル「CB1000ホーネット/SP」は、ダブルアールこと「CBR1[…]
スマホで各種申請書を作成、二次元バーコード経由でプリントアウト可能に 自動車検査登録手続きのデジタル化を推進する国土交通省は、関東運輸局にて2025年2月より「登録手続き申請書メーカー」を運用開始した[…]
時代に合わせて生き続けた、愛すべきヤマハの象徴 スポーツバイクにおいて、スペックが重要な指標のひとつなのは間違いない。しかし1000ccで200psオーバーが当たり前の近代において、最高出力が25ps[…]
- 1
- 2