
スズキが初めて量産バイクに電子制御サスペンションを投入したのがGSX-S1000GX。ライターの谷田貝さんによる海外試乗の模様は以前お届けしたが、改めて日本の道路に持ち出して試乗してみた。その走りはいかに?
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:スズキ
ワイルドさも残る洗練のクロスオーバー
スズキの量産バイクで初めて電子制御サスペンションを採用したGSX-S1000GX(以下GX)は、前後17インチホイールを履いたクロスオーバー・アドベンチャー。欧州を中心に人気のカテゴリーだが、日本でもスポーティなツアラーの一種として地位を確立してきている。
【GSX-R1000[2005]】2001年に初登場したR1000からエンジンを新設計してフルチェンジ。このとき178psを発揮したエンジンは今なお名機として多機種に採用される。
搭載するエンジンは名機と言われた2005年型GSX-R1000(所謂K5)系の並列4気筒で、最新の排ガス規制に適合しながらも程よくワイルドさを残しているのが特徴だ。
GXの軽快でスポーティな走りは予想通り兄弟車のGSX-S1000や同GTに通じるもの。ここではクロスオーバーとしての走りとスズキアドバンスドエレクトロニックサスペンション(SAES)を中心にインプレをお届けしたいと思う。
まずは、ハスキーなノイズがわずかにワイルドさを主張するエンジンから。150psを誇る4気筒の高回転域はかなりパワフルだが、低回転域から繋がりがスムーズなためか回すことに抵抗を感じない。SDMS-αによるパワーモードの切り替えはハッキリと変化が感じられるが、ほとんどの場面は標準的なBモードでOK。ワインディングでのスロットルの開けやすさもBのほうが安心だ。
一方、Bモードだと極低回転でのレスポンスは結構まろやかなので、渋滞路などノロノロ運転でバランスを取るときには意外にもスポーティなAモードのほうが好印象だった。Cモードは全体的に穏やかになり、普通の市街地走行ではこれで十分と感じられる。
走りのキャラクターをより大きく変化させるのは電子制御サスペンションのほうだ。減衰力を3段階、プリロードを3段階+オートモードに切り替えられる(さらなる微調整も可能)ので、組み合わせは豊富。前後サスストロークが150mmあるので、オンロード系ツアラーよりも吸収性は高めだ。
減衰は中間のMにしておけば多くの場面で程よく締まった脚が感じられる。ソフト(S)にすれば如実に乗り心地がよくなり、一方でライントレース性は少し曖昧に。ハード(H)にするとビシッと筋が通ったようになり、積極的な走りに応えてくれるが、一方で乗り心地もそれほど悪化しないのが印象的だった。
プリロード調整は、1人乗り設定だとややリヤ下がりの姿勢になり、かなり穏やかなキャラクターに。1人+荷物にするとリヤ車高が上がり、2人乗り設定だとさらに上がる。オートでは乗員数や荷物に合わせて自動的に水平にしてくれるという。
【クイックだけど安心感がある!】電子制御サスペンションのおかげで深く考えずとも安心してスポーティに走れる。クイックシフトは加速中のシフトダウン/減速中のアップも可能だった。
ワインディングロードで気持ちよかったのは『1人+荷物』だ。スポーツネイキッド並みのフロント荷重が得られる感じで、ブレーキングからのターンインで狙った走行ラインに乗せやすくなる。また、コーナリングから立ち上がりにかけてもスロットルで姿勢をコントロールしやすく、ワインディングを快走したいならこれ一択という感じだ。
ただし、ライダーの体重や好みによっても変わると思うので、軽めの方は1人乗り設定でいいかも。2人乗り設定はちょっと極端なリヤ上がりになるので、パッセンジャーや重めの荷物を積んだとき限定になるだろう。
荒れ気味の路面から高速道路、快走ワインディングまで守備範囲は広く、いつでもスポーティに走れるのがGX。リラックスしたライポジと軽量コンパクトでスポーティなキャラクターの組み合わせが面白く、前傾がきついのは嫌だけど速いのが欲しい、というベテランに最適だろう。
膝まわりのフィット感がよく様々なライディングフォームがしやすい。ハンドルは幅広で高く、ステップは自然な位置にあってリラックスしたライディングポジションだ。足着きは参考にしにくい身長で申し訳ない。(身長183cm/体重81㎏)
SUZUKI GSX-S1000GX
主要諸元■全長2150 全幅925 全高1350 軸距1470 シート高830(各mm)車重232kg(装備)■水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ 998cc 150ps/11000rpm 10.7kg-m/9250rpm 変速機6段 燃料タンク容量19L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/50ZR17 ●価格:199万1000円 ●色:青、濃緑、黒
GSX-S1000と主要部分の基本を共有しながら脚長サスで車高を上げ、アップハンドルや大型スクリーンなどでアドベンチャー仕立てに。
縦2灯のLEDヘッドライトと左右2眼のポジションライトで精悍な表情に。前後タイヤはダンロップ・ロードスポーツ2だ。
6.5インチフルカラーTFTディスプレイは専用アプリでスマートフォンと連携することが可能。左側にUSBソケットを装備する。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(スズキ [SUZUKI] | 新型アドベンチャー/クロスオーバー/オフロード)
日本でも正式発表が待たれる400ccオフロード/スーパーモト スズキは、昨秋のEICMA(ミラノショー)にて、新型400ccデュアルパーパスモデル「DR-Z4S」およびスーパーモトモデル「DR-Z4S[…]
正式発表が待たれる400ccオフロード/スーパーモト スズキは、昨秋のEICMA(ミラノショー)にて、新型400ccデュアルパーパスモデル「DR-Z4S」およびスーパーモトモデル「DR-Z4SM」を発[…]
前輪19インチの無印800は全色刷新、前輪21インチの800DEは一部刷新とホイール色変更 スズキ「Vストローム800」「Vストローム800DE」の2025年モデルが登場。前者の無印800は全カラーバ[…]
GSX-R1000由来の4気筒スポーツツアラーにアドベンチャーの自由度を融合 スズキは、2005年型GSX-R1000(通称K5)由来の4気筒エンジンを搭載するクロスオーバーツアラー「GSX-S100[…]
双方向クイックシフト&クルーズコントロール搭載、ホイールサイズが異なる2車 スズキは、国内向け2025年モデルとして「Vストローム1050」およびバリエーションモデルの「Vストローム1050DE」をカ[…]
最新の関連記事(スズキ [SUZUKI] | 試乗インプレッション/テスト)
想像していたよりスポーティで楽しさの基本が詰まってる!! エントリーライダーや若年層、セカンドバイクユーザーなどをターゲットに日本でもラインアップされているジクサー150のʼ25年モデルは、ニューカラ[…]
コスパモンスター、それだけだと思っていたら これまでなかなか試乗する機会のなかった(筆者がたまたま試乗機会に恵まれなかった)スズキの軽二輪スタンダードモデル「ジクサー150」に乗ることができたのでイン[…]
ジクサー150でワインディング 高速道路を走れる軽二輪で、約38万円で買えて、燃費もいいというウワサのロードスポーツ──スズキ ジクサー150。 まだ子どもの教育費が残っている50代家族持ちには(まさ[…]
シリーズの中心的な存在、語り継がれる名車の予感 昨年3月に発売されたVストローム800DEと、その7か月後に登場した同800は、ともにミドルネイキッドのGSX-8Sとプラットフォームを共有している。 […]
2025年11月の規制を睨み、2021年頃に開発の話が持ち上がった ご存知のように、バイクの世界にもカーボンニュートラル(CN)の波は激しく押し寄せていて、国内外の二輪メーカーはその対応に追われている[…]
人気記事ランキング(全体)
50ccでも実用カブとは別系統のOHCスポーツ専用エンジンを開発! ホンダは1971年に、50ccではじめてCBの称号がつくベンリイCB50を発売した。 それまで50ccにもスポーツモデルは存在したが[…]
ミニカーとは何かがわかると登録変更のハードルもわかる まず「ミニカー」とは、法律上どのような乗り物として扱われるのか、基本的な定義から押さえておく必要がある。実はこれ、道路交通法上では「普通自動車」扱[…]
熱膨張率の均一化によって様々なアドバンテージがある 2ストローク/4ストロークエンジンを問わず、エンジン性能を向上するためには様々な課題や問題がある。特に大きな課題は、“熱膨張率”に関わる問題だ。 「[…]
LEDのメリット「長寿命、省電力、コンパクト化が可能」 バイクやクルマといったモビリティに限らず、家庭で利用する照明器具や信号機といった身近な電気製品まで、光を発する機能部分にはLEDを使うのが当たり[…]
発売当初のデザインをそのままに、素材などは現在のものを使用 1975年に大阪で創業したモンベル。最初の商品は、なんとスーパーマーケットのショッピングバックだった。翌年にスリーピングバッグを開発し、モン[…]
最新の投稿記事(全体)
2026年以降のFIM安全基準に合致したレーシング仕様フルフェイスヘルメット このたびRX-7Xに追加される『RX-7X FIMレーシング#2』は、2020年よりFIMカテゴリーのレースにおいて義務化[…]
RVF400参戦でV4パフォーマンスに優れたハンドリングと闘えるトラクションが加味され最強に! ホンダのV型4気筒戦略がスタートしたのは1982年。 VF750系に続いてVF400系も加わり、当初は高[…]
初心者からベテランまで、老若男女だれもが一日中楽しめる オフロードバイクさえあれば、初心者だろうとベテランだろうと、老若男女だれもが一日中楽しめるフリーライドイベントとして企画されたのがエンジョイライ[…]
ヤマハFZR400:極太アルミフレームがレーサーの趣 ライバルがアルミフレームで先鋭化する中、ついにヤマハもFZの発展進化形をリリースする。 1986年5月に発売されたFZRは、前年に発売されたFZ7[…]
「走る」を変える次世代の相棒 一般的なガソリンバイクが燃料を燃焼させてエンジンを駆動するのに対し、電動バイクはバッテリーに充電した電気でモーターを回して走行する。そのため、排気ガスを一切排出しない、環[…]
- 1
- 2