
世に出ることなく開発途中で消えて行ってしまったマシンは数あれど、それが表に出てくることは滅多にない。ここではそんな幻の名車を取り上げてみたい。今回はロータリーエンジンを積んだ幻のバイク・ホンダCB125/ヤマハRZ201/スズキRE-5を紹介する。
●文:ヤングマシン編集部
空冷なのがいかにもホンダ〈CB125〉
ロータリーエンジンを搭載したバイクは、’72年にモーターショーで発表されたヤマハRZ201や’74年に海外で市販されたスズキRE5があるが、ホンダも試作していたという証拠がこれ。 技術的な課題はなかったが、メリットも少なく市販されることはなかった。RZ201やRE5が水冷のビッグバイクだったのに対し、空冷で小排気量なのが特徴。ホンダは空冷エンジンに対するこだわりが強く、’70年発売の4輪車、1300クーペ9にもDDAC(一体式二重空冷)という独創の強制空冷方式を採用していたのだ。
※ヤングマシン2000年12月号より
【HONDA CB125ロータリーエンジン 1975年完成】外観はまさにCB125。こんな気軽なロータリーエンジンのバイクがあったら人気になったに違いない。
ベースは’71年の輸出用CB125でマイル表示のメーターもそのままだ。
幻のヤマハロータリー〈RZ201〉
今回のモーターショウの最大の話題は彗星のように登場したこのローターリー車だ。水冷・横置きツインローターを搭載、また前輪と共に後輪にもディスクブレーキを採用するなどユニークな機構を持つ魅力のマシンだ。国内販売も予定され40万円強の価格といわれる。
主要諸元 全長2195mm 全幅910mm 全高1175mm 軸間距離1485mm エンジン 水冷・横置きツインローター(330cc×2) CCR方式 コンビネーションポート 最高出力 68ps/6500rpm 最大トルク 7.8kg-m/4000rpm 潤滑方式 ヤマハオートルーブ 始動方式 セルフスターター 変速機 常時噛合式5段 ブレーキ 前・独立2系統式ダブルディスク 後・ディスク 乾燥重量 210kg 最高速度 テストでは190km/hがスムーズに出たとのこと。
※ヤングマシン1972年12月号より
【YAMAHA RZ201 1972年東京モーターショー参考出品車】ヤンマーと共同開発した横置き2ローターの660ccエンジンを採用。オイルショックの影響で発売されなかったと伝えられる。
キャブレターからエンジンへ送る混合気に別系統からオイルを混合して潤滑と冷却を行うCCR(Charge Cooled Rotor)コンビネーションポートシステムを採用していた。2ストの分離給油式のようなシステムと言える。
世界初の量産2輪車ロータリーモデル〈RE-5〉
’74年11月、高品質・高性能の代名詞となった日本製バイクに、新しい時代を築くモデルがスズキから登場。それが、国産で唯一の市販ロータリーバイクのRE-5だ。
ロータリーエンジンは、ピストンがシリンダーの中を往復運動するレシプロエンジンに対し、おむすび形のローターがまゆ形のハウジングの中で回転する画期的な構造で、コンパクトでハイパワー、低振動なのが特徴。4輪では、すでに’67年に東洋工業(現:マツダ)が量産化に成功し、コスモスポーツに搭載。また、2輪でも’73年にドイツのDKWがハーキュレスW2000(294cc)の生産を開始していた。そうした中、RE-5は497ccの排気量から62psという、レシプロの750ccクラスに匹敵する性能を実現。イタルデザインの創始者であるジウジアーロがデザインした先進的なスタイルも、大きな話題となった。
※ヤングマシン2015年8月号より
【SUZUKI RE-5A 1975年型】写真は後期型のRE-5A。メーターには初期型で特徴的だった「茶筒」タイプではなく、一般的な3連メーターを採用している。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事([特集] 幻の名車)
幻のヤマハロータリー〈RZ201〉 1972年東京モーターショウの最大の話題は彗星のように登場したこのローターリー車だ。水冷・横置きツインローターを搭載、また前輪とともに後輪にもディスクブレーキを採用[…]
石油危機で消えたポストZ1候補2台目はロータリーエンジン 1970年代初頭、ロータリーエンジンは一般的なレシプロエンジンよりも低振動でよりフラットなトルクカーブとスムーズなパワーデリバリーが実現できる[…]
イタリアンイメージをネーミングやデザインに注入 これらデザインスケッチ等は、1989年8月にウェルカムプラザ青山で実施された「MOVE」展で公開されたもの。これは本田技術研究所 朝霞研究所が企画して実[…]
2ストローク90ccの「CO-29」は、キーレスにポップアップスクリーン採用 1988年に劇場版「AKIRA」が公開された翌年、1989年8月にウェルカムプラザ青山で「MOVE HONDA MOTOR[…]
1984年にツインチューブフレームを採用していた これはホンダウェルカムプラザ青山で1989年8月に開催されたイベント「MOVE」に出品されたプロトタイプのCR-1。モトクロッサー、CR500Rのエン[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI] | 名車/旧車/絶版車)
随所に専用部品を投入したZシリーズ初のR仕様 Z1000の派生/上級機種として’78年に登場したZ1‐Rは、評価がなかなか難しいモデルである。まず当時の流行だったカフェレーサーの手法を取り入れながら、[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
一線から退くことすらファンが許さなかった「革新モデル」 世界最速を目指したZ1発売から10年余り、ついにカワサキは水冷4気筒エンジンを搭載するGPz900Rを1984年に発売。北米モデルはNinja([…]
20年ものロングランは、ライバルに気をとられない孤高を貫く開発があったからこそ! カワサキは1972年、DOHCで900ccと先行する初の量産4気筒のCB750フォアを上回るハイクオリティなZ1を投入[…]
400cc4気筒ブームの立役者、第3世代の直4を実現したカワサキの戦略 Z1/Z2系からZ650のザッパー系に続くカワサキ直4の第3弾がZ400FX。1980年代初頭に日本で巻き起こった空前のバイクブ[…]
人気記事ランキング(全体)
125ccクラス 軽さランキングTOP10 原付二種は免許取得のハードルも低く、手軽に楽しめる最高の相棒だ。とくに重要なのは「軽さ」だろう。軽ければ軽いほど、街中での取り回しは楽になるし、タイトなワイ[…]
コンパクトで使いやすいワイヤーロック ヘンリービギンズの「デイトナ ワイヤーロック DLK120」は、質量約90gの軽量設計で、ツーリング時の携行に適したポータブルロックです。ダイヤルロック式のため鍵[…]
日本仕様が出れば車名はスーパーフォアになるか ホンダの名車CB400スーパーフォアが生産終了になって今年ではや3年目。入れ替わるようにカワサキから直列4気筒を搭載する「Ninja ZX-4R」が登場し[…]
どうする? スクーターのエンジンがかからない ※これはまさに、筆者が直面した実話です。我が家のスクーター(TODAY)に乗ろうと思って、車庫から引っ張り出しました。ちょっと久しぶりですね。エンジンをか[…]
50レプリカのフルサイズからミニバイクレースを経てデフォルメフルサイズへ! VR46カラーのTZR50……実はヨーロッパで1997年から2012年まで生産されていたイタリアのミナレリ製エンジンで、現地[…]
最新の投稿記事(全体)
コンパクトで携帯性に優れた携帯灰皿 「プルプラ クリップオンケース」は、ヒートスティック(加熱式タバコ)専用の携帯灰皿です。商品重量は約10gと非常に軽く、ポケットやバッグの隙間でも邪魔になりません。[…]
トレリスフレーム+ユニトラックサスペンションの本格派 カワサキは欧州で、15psを発揮する水冷125cc単気筒エンジンをスチール製トレリスフレームに搭載し、前後17インチホイールを履かせたフルサイズス[…]
2025年モデルで排気量アップしたニンジャ1100SX カワサキは欧州で、スポーツツアラーの2シリーズを2026年モデルに更新。「ニンジャ1100SX」および「ニンジャH2 SX」それぞれの標準モデル[…]
バイクを取りまく、さまざまな環境の向上を目指す バイク(二輪車)ユーザーがより安全で快適なバイクライフを過ごせる社会をめざし、二輪車を取りまく環境の向上のために活動している日本二普協。 同協会安全本部[…]
本物のMotoGPパーツに触れ、スペシャリストの話を聞く 「MOTUL日本GPテクニカルパドックトーク」と名付けられるこの企画は、青木宣篤さんがナビゲーターを務め、日本GP開催期間にパドック内で、Mo[…]
- 1
- 2