
昨年10月に「800」が発売されたことで、Vストロームファミリーは全8機種に拡大された。シリーズ唯一の単気筒モデル「250SX」のオーナーである筆者は、800にどんな魅力を感じたのか!?
●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:山内潤也 ●外部リンク:スズキ
シリーズの中心的な存在、語り継がれる名車の予感
昨年3月に発売されたVストローム800DEと、その7か月後に登場した同800は、ともにミドルネイキッドのGSX-8Sとプラットフォームを共有している。
800DEはフロント21インチ&ワイヤースポークホイールを履き、ホイールトラベル量は220/212mmと長めに確保。これに対して無印の800は、フロント19インチ&アルミキャストホイールで、ホイールトラベル量は前後とも150mmに短縮。加えてサスの仕様は、前後フルアジャスタブルの800DEに対し、800はフロントがプリロードのみ。リヤはプリロードと伸び側減衰力が調整可能と、やや簡略化されている。
シリーズ最長のホイールトラベル量を誇る800DEがダート色強めなのに対し、800は舗装路主体のアドベンチャーツアラーという位置付けなのは間違いない。そして、250SXのオーナーである筆者が感じたのは、Vストロームの名前の由来であるバーサタイル(多用途)という点において、この800は明らかに中心的存在だということだ。
シート高は250SXより10mm低く、しかも乗車1Gでほどよくサスが沈むので、足着き性は良好。800DEよりもシッティングに適したライディングポジションだ。【身長175cm/体重68kg】
まずはエンジンから。775ccの水冷パラツインは、このクラスでは珍しくない270度位相クランクを選択する。注目すべきは革新的な2軸1次バランサーの採用で、これにより直4かと疑うほどに振動が軽減されているのだ。それでいて、ライディングモードごとにそのレベルは異なるものの、スロットルを開ければツインらしい出足の良さを見せてくれる。双方向クイックシフターのセッティングは良好で、ローRPMアシストは渋滞時にライダーをさりげなくサポートしてくれる。このエンジンは間違いなく“傑作”だ。
ニーゴーSXの上位互換! これぞグランドツアラーだ!
続いてはハンドリングだ。フロント19/リヤ17インチという組み合わせは、シリーズの中でこの800を含む5機種が採用しており、言わばVストロームにおけるスタンダードだ。そして、800と250SXの旋回性はかなり近しく、シリーズとしての共通の狙いを感じるのだ。
800が優れているのは、サスの作動性だ。調整機構は800DEより簡略化されてはいるが、フロントにショーワのSFFーBPを採用したり、専用設計のタイヤを標準装着するなど、手抜きは一切なし。車体がピッチングしすぎないので、ネイキッドのように倒し込みのタイミングがつかみやすく、旋回中のギャップの吸収性も優秀。加えて、しなやかなスチールフレームにより、非常に接地感が高いのも安心材料だ。
ブレーキは800DEよりも強化されており、フロントにラジアルマウント式4ピストンキャリパーを採用。これによるコントロール性と制動力の高さも800の美点だ。さらに、ABSの介入レベルを2段階に調整できるなど、ブレーキについての不満はほぼ皆無といっていい。
250SXに惚れてオーナーとなり、特に不満を感じていなかった筆者だが、800の常用域におけるエンジンの余裕と、前後サスの作動性の良さに感心しきりだ。Vツインの650がそうであったように、800も名車となるだろう。
【TESTER: 大屋雄一】セロー250からVストローム250SXに乗り換えて以降、リッター40kmを下回らない燃費にゴキゲンなバイクジャーナリスト。すでに800DEには試乗しており、この無印800にも興味津々だった。
SUZUKI V-STROM 800
主要諸元■全長2255 全高1355 シート高825(各mm) 車重223kg ■水冷4ストローク2気筒DOHC4バルブ 775cc 82ps/8,500rpm 7.7kg-m/6,800rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量20L■ブレーキF=ディスク R=ディスク■タイヤF=110/80R19 R=150/70R17 ●価格:123万2000円
独特フィールのパラツイン
革新的な2軸1次バランサーと270度位相クランクを組み合わせた775cc水冷パラツイン。800DEとエンジンスペックは基本的に共通だ。樹脂製アンダーカバーは省略。
200kgオーバーを感じさせないぞ!
800DEより7㎏軽いだけだが、数値以上に取り回しが軽く、最小回転半径も0.1m小さい。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(スズキ [SUZUKI] | 新型アドベンチャー/クロスオーバー/オフロード)
正式発表が待たれる400ccオフロード/スーパーモト スズキは、昨秋のEICMA(ミラノショー)にて、新型400ccデュアルパーパスモデル「DR-Z4S」およびスーパーモトモデル「DR-Z4SM」を発[…]
前輪19インチの無印800は全色刷新、前輪21インチの800DEは一部刷新とホイール色変更 スズキ「Vストローム800」「Vストローム800DE」の2025年モデルが登場。前者の無印800は全カラーバ[…]
GSX-R1000由来の4気筒スポーツツアラーにアドベンチャーの自由度を融合 スズキは、2005年型GSX-R1000(通称K5)由来の4気筒エンジンを搭載するクロスオーバーツアラー「GSX-S100[…]
双方向クイックシフト&クルーズコントロール搭載、ホイールサイズが異なる2車 スズキは、国内向け2025年モデルとして「Vストローム1050」およびバリエーションモデルの「Vストローム1050DE」をカ[…]
スクエアデザインの1050/800/250SXに対し、650と250は穏やかな意匠 スズキは、「Vストローム650」および「Vストローム650XT」の価格を改定し、2025年2月5日に発売すると発表し[…]
最新の関連記事(スズキ [SUZUKI] | 新型大型二輪 [751〜1000cc])
北米にもあるイエローグラフィック! スズキ イエローマジックといえば、モトクロスやスーパークロスで長年にわたって活躍してきた競技用マシン「RMシリーズ」を思い浮かべる方も少なくないだろう。少なくとも一[…]
大型二輪免許は18歳から取得可能! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外には“AT限定”免許も存在する[…]
前輪19インチの無印800は全色刷新、前輪21インチの800DEは一部刷新とホイール色変更 スズキ「Vストローム800」「Vストローム800DE」の2025年モデルが登場。前者の無印800は全カラーバ[…]
GSX-R1000由来の4気筒スポーツツアラーにアドベンチャーの自由度を融合 スズキは、2005年型GSX-R1000(通称K5)由来の4気筒エンジンを搭載するクロスオーバーツアラー「GSX-S100[…]
楽なポジションと優れた電子制御で扱いやすいオールラウンダー スズキ最新の775cc並列2気筒エンジンを搭載するモデルとして4機種目にあたる「GSX-8R」が、登場から1年経って価格改定を受けた。 兄弟[…]
人気記事ランキング(全体)
Z1、GPz900R、Ninja ZX-9Rから連なる“マジックナイン”の最新進化系 カワサキは、948cc並列4気筒エンジンを搭載したスーパーネイキッド「Z900」および上級モデル「Z900 SE」[…]
涼しさの心臓部。それは「素材」と「構造」の魔法的組み合わせ うだるような暑さと、じっとりと肌にまとわりつく湿気。毎年繰り返されるこの季節に、多くの人が少しでも快適に過ごせる服を探し求めている。そんな中[…]
『Wheels and Wavesフェスティバル』にカスタムマシン×11車を展示 6年目を迎えたHondacustoms(ホンダカスタムズ)、過去にはCB1000Rやレブル、CL250/CL500、モ[…]
左右2本出しマフラーやベルトドライブ、6速ミッションも採用 ヒョースンモータージャパンは、水冷124.7cc・V型2気筒エンジンを搭載したクルーザーモデル「GV125Xロードスター」を発売する。 挟み[…]
アメリカは”英国車マニア”多し! この1956年製MGAはご覧の通り左ハンドルで、最初から北米仕様だったもの。そもそも、アメリカは英国車マニアが数多く存在しており、1950年代どころか1930/194[…]
最新の投稿記事(全体)
ライダーが抱く「ヘルメットの悩み」を解消するために誕生 デルタから発売される高機能ヘルメットスタンドは、多くのライダーから寄せられた「こんな製品があったらいいな」を形にした、実用性とデザイン性を兼ね備[…]
「パンヘッドのチョッパーに乗りたい」理想像を具現化 目の肥えたファンが集まるカスタムショーに大きなブースを構え、絶え間なくハイレベルな作品を発表し続ける遠藤自動車サービス。その確かな技術力/信頼性の高[…]
2023年モデル:400クラス唯一のクルーザーとして復活 発売は2023年4月25日。先代となるエリミネーター400から実に15年ぶりの登場で、エリミネーター/SEの2グレード展開だった。 ニンジャ4[…]
日本を代表するツーリングロードのティア表だっ! 「次のツーリングは、どこへ行こう?」 そんな嬉しい悩みを抱える全てのライダーに捧げる、究極のツーリングスポット・ティア表が完成した。 ……いや、そもそも[…]
フレンドリーさも持ち合わせていた名機’89 NSR250R 1986年に初登場した2ストロークレーサーレプリカの名車、NSR250R。登場から30年以上が経過した現在でも、型式を問わず根強い人気を誇っ[…]
- 1
- 2