
ドゥカティは、『ドゥカティ・ワールド・プレミア2025』の第2弾として、9月19日(現地時間)に『Multistrada V4(ムルティストラーダ V4)』とその上位モデル『Multistrada V4S』、さらに派生モデルとなる『Multistrada V4 Pikes Peak(ムルティストラーダV4パイクスピーク)』の2025年モデルを発表した。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●写真/外部リンク:ドゥカティジャパン
熟成度が深まったアドベンチャーツアラー
【DUCATI Multistrada V4/S/Pikes Peak】主要諸元■全長2301 全幅990〈963〉 全高1460-1520〈1404-1464〉 軸距1565〈1591〉 シート高840-860(各mm) 車重229[231]〈227〉kg■水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ 1158cc 170ps/10500rpm 12.7kg-m/8750rpm 変速機6段 燃料タンク容量22L■タイヤサイズF=120/70ZR19〈120/70ZR17〉 R=170/60ZR17〈190/55ZR17〉 ●価格:279万8000円[337万7000円~]〈438万7800円〉 ●色 赤[赤、黒、白]〈赤×黒×灰〉 ●国内発売日:未定 ※[]内はS ※〈〉内はPikes Peak ※写真はSTD
ムルティストラーダはドゥカティのアドベンチャーツアラーで、2021年のフルモデルチェンジで1158cc水冷V型4気筒エンジン『V4グランツーリスモ』を搭載した。2025年式ムルティストラーダV4は、広範囲にわたるアップデートによってあらゆる道を走破する性能と安全性、快適性を熟成させた。おもなアップデート内容は──
- V4エンジン改良による燃費向上
- フェアリング改良による空力性能向上
- 前方衝突警告機能追加による安全性向上
- ヘッドライト機能の進化による安全性向上
- 各種電子制御デバイスの性能向上
- 自動車高低下機能による安全性向上(Sのみ)
V4グランツーリスモエンジンは、逆回転クランクシャフト、ボア×ストローク、最高出力、最大トルク、またそれぞれの発生回転数などの仕様に変更はないが、軽量化によって従来型のムルティストラーダV2(2気筒)よりも1.2kg軽くなった。
アイドリング時にリアバンク(車体後方のシリンダー)を停止する機能は強化され、エクステンデッドディアクティベーション(強化版シリンダー休止機能)へ進化した。アイドリング時だけでなく、低速走行中もリアバンクを休止させるもので、従来型と比較してCO2排出量と燃料消費量を最大6%低減。環境に与える影響を減らすとともに、航続距離も伸ばしている。これによって新しい排ガス規制ユーロ5+に対応している。
エンジンのメンテナンスサイクルは延長され、オイル交換は1万5000km毎、バルブクリアランス点検は6万km毎になった。
フェアリングデザインは従来型を踏襲しつつ、よりシャープとなり、916を源流とするドゥカティスーパーバイクに通じるクロスオーバースタイルとなった。さらにフェアリングの下に設けたデフレクターによってライダーの膝あたりへの走行風を増量すると同時に、エンジンの放熱を効率的に排出する。これは横方向に2個のラテラルコンベアによって相乗効果を生み、空力性能を高めることでとくに高速巡航時のライダーとパッセンジャーの疲労を軽減する。
電子制御デバイスは、『ドゥカティビークルオブザーバー(DVO)』を新たに導入することで、各種デバイスの精密さをさらに向上。DVOは慣性プラットフォームのデータを統合する機能で、車体各部にある70個のセンサーの入力をシミュレートし、車体に作用する路面からの入力と、さまざまな走行条件で車体が耐えうる荷重を予測する。
これによってコーナリングABS、ドゥカティトラクションコントロール(DTC)、ドゥカティウィリーコントロール(DWC)の作動をより正確に、緻密にすることに成功した。
ブレーキ関連では、フロントとリアのブレーキ配分を制御して車体を安定させる『エレクトニックコンバインドブレーキシステム(eCBS)』を新採用した。フロントブレーキをかけるとリアブレーキも作動し、制動時の車体安定性と安全性を高める機能だ。逆にリアブレーキをかけたときもフロントブレーキが作動し、コーナリング時の安定性を向上。緊張を感じることなくコーナリングに集中できるうえ、よりタイトな走行ラインをトレースできる。また、ブレーキシステムではリアディスクが従来型の265mmから280mmへ大径化された。
レーダー機能も強化され、従来型が搭載していたアダプティブクルーズコントロール、ブラインドスポット検知機能に加えて『前方衝突警告機能』がプラスされた。これは前走車との車間距離が短くなって衝突の危険が高まった際に、メーターにインジケーターを表示することでライダーへ警告を発する機能だ。
ライディングモードは、従来のスポーツ、ツーリング、アーバン、エンデューロに加えて、『ウェット』が追加された。文字どおり濡れた路面で効果的なモードで、スロットルレスポンスは穏やかになり、最高出力は115psに制限され、ABSやトラクションコントロールその他のデバイスも連動する。また、従来から引き継ぐそれぞれのモードも、より安全かつ快適な走行フィールへと改良されている。
夜間走行のコーナリング時にヘッドライトの照射範囲を最適化するドゥカティコーナリングライトに加え、フロントホイールの影の領域を減らす『ヘッドライトクラスター』を新たに装備した。これにより、夜間走行時の視認性も向上させ、さらに『カミングホーム』は、イグニッションをオフにした後もロービームヘッドライトを数秒間点灯する。
V4Sに搭載される電子制御サスペンション『ドゥカティスカイフック(DSS)EVO』も進化した。フロントフォークに備えたセンサーが路面の凹凸などを検知したデータを基に車体の挙動を予測し、リヤサスペンションの減衰力を自動調整する。これにより荒れた路面やバンプなどをスムーズに通過できるようになった。また、車体姿勢を一定にするセルフレベリング機能を持つほか、どのライディングモードを選んでいても走行中に任意のサスペンション設定に変更することも可能となっている。
DSS EVOには『自動車高低下』機能も新たに採用している。走行中に車速が10km/h以下になると最大で30mm車高を下げるものだ。下がった車高は50km/hを超えると解除され、通常の車高に戻る。これにより停車時、低速時の足つき性が向上し、転倒の危険を軽減する。
車体関連も熟成
車体関連では、フレームやスイングアームに変更はないが、スイングアームピボットを従来より1mm上げたことで、アンチスクワット効果を向上。タンデムや積載時の走行安定性を高めている。また、パニアケースとトップケースの装着位置を従来型よりも後方へ移設したことで、同乗者の快適性を向上させた。
なお、サスペンションはV4、V4Sともにマルゾッキ製が装着される。V4は50mm倒立フォークとリザーバータンク付きモノショックで、前後ともフルアジャスタブル。リヤサスペンションのプリロード調整幅は12~20mmと従来型よりも広くなった。V4Sは前後とも電子制御式となるが、フロントフォークのプリロードのみ手動調整となる。
『ムルティストラーダV4パイクスピーク』は、フロントホイールを17インチとしてリアホイールをワイド化(6.0×17)していること、片持ち式スイングアームを装備すること、前後サスペンションはマルゾッキ製を採用するV4/V4Sとは異なり、オーリンズ製スマートEC 2.0サスペンションを装着することが特徴だ。これらにより、パイクスピーク仕様はオンロードでの走行性能を重視したモデルとなっている。
2025年式となる新型では、スタンダードV4と同様の改良に加えて、MotoGPやWSBK、モトクロスからインスパイアされたドゥカティコルセ専用カラーが新たに採用された。また、前後ホイールは新デザインとなるマルケジーニ製Y字5本スポークとし、ピレリ製ディアブロロッソ4スポーツロードタイヤを装着する。
EU諸国では2024年10月から販売が開始されたが、日本国内への導入時期は未定だ。
カラーバリエーション
車体色は、スタンダードのV4がドゥカティレッド(赤)のみで、V4Sにはそのほかにスリリングブラック(黒)とアークティックホワイト(白)の3色展開となる。また、V4Sではワイヤースポークホイールかアルミ鍛造ホイール(標準のアルミ鋳造よりも2kg軽量)を選択することが可能だ。
ドゥカティ ムルティストラーダ V4
ドゥカティレッド
ドゥカティ ムルティストラーダ V4S
左からドゥカティレッド、アークティックホワイト、スリリングブラック
ドゥカティ ムルティストラーダ V4パイクスピーク
ドゥカティコルセ専用カラー
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ドゥカティ)
コンパクトな新エンジンの効用をより強く感じられる新作ストリートファイター ストリートファイターV2シリーズのハイライトは、やはり新設計のV2エンジンにある。旧型比-9.4kgのシェイプアップを行うと共[…]
ミリ波レーダーと各種電制の賜物! 本当に”使えるクルコン” ロングツーリングや高速道路の巡航に便利なクルーズコントロール機能。…と思いきや、従来型のクルコンだと前方のクルマに追いついたり他車に割り込ま[…]
【ハイパーモタードV2/SP】史上最高のパワーと速さを身につけた新型ハイパーモタード 新型ハイパーモタードは、先代950からフルモデルチェンジがなされ、最新スペックのV2エンジン、そして新設計のモノコ[…]
10/1発売:カワサキ「Ninja ZX-25R SE/RR」 250ccクラスで孤高の存在感を放つ4気筒モデル、「Ninja ZX-25R」の2026年モデルが早くも登場する。今回のモデルチェンジで[…]
伝家の宝刀「V4」搭載のキング・オブ・クルーザー エックス ディアベルといえば、マッシブなクルーザーとして「素の」ディアベルとはひと味違った走り、満足感が得られると評判のモデルでした。 新型は、今やド[…]
最新の関連記事(新型アドベンチャー/クロスオーバー/オフロード)
粘り強い100mmボアビッグシングルと23Lタンク KLR650の心臓部は、水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒エンジンだ。排気量は652ccで、ボア径はなんと100mmにも達する超ビッグシングルと[…]
パンアメリカのオフロード性能をユーザーに体験してもらう 2021年夏に販売開始されたパンアメリカ。ストローク量の多い前後サスペンションのおかげで、ハーレーの中で唯一ダート走行が可能なアドベンチャーカテ[…]
カスタムバイクのような仕上がりを誇るBRIXTON オーストリアのバイクメーカー・BRIXTON(ブリクストン)は、個性的なスタイルのモーターサイクルを数多く販売していることで知られている。ブランドの[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
DRZ4シリーズが24年ぶりのフルモデルチェンジ ʼ00年に登場したDR-Z400シリーズ。オフ車の“S”が24年ぶり、モタードの“SM”が19年ぶりとなるフルチェンでDR-Z4シリーズへと進化! 早[…]
人気記事ランキング(全体)
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
寒暖差が大きくても着替えずに対応できる! ワークマンのヒーターウエア『WindCore(ウインドコア)』シリーズは、電熱ヒーターを内蔵する防寒アイテム。別売りのバッテリー(4900円)は必要だが、もの[…]
お待たせしました経過報告です 前回のラバゲイン記事、おかげさまで大反響をいただきました。ありがとうございます! そして同時に、「続編が知りたい!」「その後どうなったの?」「どれぐらい持つの?」「いつま[…]
昔ながらの構成で爆発的な人気を獲得 ゼファーはレーサーレプリカ時代に終止符を打ち、以後のネイキッドの基盤を構築したモデルで、近年のネオクラシックブームの原点と言えなくもない存在。改めて振り返ると、’8[…]
BLESS CREATIONのカーボン外装をまとう カーボン外装メーカー・ブレスクリエイションの高い質感と造形の美しさのX350専用外装に惚れ、編集部号にも装着することにした。フロントフェンダー/ラジ[…]
最新の投稿記事(全体)
Nプロジェクトを彷彿とさせる魅力的なデザイン スクエアX125最大の魅力は、その名の通り「スクエア(四角)」を体現した、垂直の箱型ボディだ。空気抵抗を減らすカウルを持つことが主流の現代のスクーターデザ[…]
知識ゼロから飛び込んだ継承への挑戦 このデニム、ただの復刻ではない。SFG前オーナーの強い想いに突き動かされ、全てを見直して完成させた「ライダー向け」の工夫が詰まっているのだ。 G RIDEが起業して[…]
250cc水冷90°V型2気筒でDOHC8バルブが、たった2年でいとも容易くパワーアップ! ホンダが1982年5月、V型エンジン・レボリューションのVF750Fに次ぐ第2弾としてVT250Fをリリース[…]
バニャイアにとって「新しいモノはいいモノ」じゃなかった MotoGPマシンがあまりにも速くなりすぎたこともあって、再来年にはレギュレーションが大きく改定されることになった。 エンジンは850ccに、空[…]
戦闘力を高めるヘッドギア「ダインギア ヘッドアーマー」 クロスカブ110の個性をさらに際立たせ、カスタムの方向性を決定づけるほどの高いデザイン性を持つパーツが登場した。それがダイバディプロダクションが[…]
- 1
- 2


















































