
2024年10月11日、イタリアのブレンボ社はスウェーデンのオーリンズレーシング社を買収したと発表した。アポログローバルマネジメントの関連会社が運営するファンドのポートフォリオ会社、テネコとの契約締結でオーリンズレーシングの株式を100%取得することに合意したというものだ。
●文:ヤングマシン編集部 ●外部リンク:オーリンズ・レーシング
プレミアムサスペンションのオーリンズが高性能ブレーキシステムのブレンボに合流
アポログローバルマネジメントの関連会社が運営するファンドのポートフォリオ会社・テネコは、プレミアムサスペンションで知られるオーリンズレーシングを、高性能ブレーキシステムで知られるブレンボに売却する契約を締結した。
テネコはこの売却により、オーリンズレーシングとその従業員は、市場でブレンボのリーダーシップのもと、継続的な成功を収めるとしている。
ブレンボ社の取締役会長、マッテオ・ティラボスキ氏は「両社の相性は抜群です。オーリンズは世界的に知られるブランドとして堅実な事業を展開し、レーストラックでも公道でも他社と一線を画す名声を得ています。今回の契約はブレンボの自動車市場向けラインナップを拡大させる有意義な機会であり、ブレンボグループにオーリンズが加わることを歓迎します。これを契機に、お客様に総合インテリジェントソリューションを提供するブレンボの戦略がまた一歩前進し、二輪・四輪車分野の重要技術全体でシナジーを活かすことができます」とコメントしている。
1976年に設立されたオーリンズレーシングは、スウェーデン、ストックホルムのウプランド・バスビーから世界に製品を提供している。スウェーデンとタイのそれぞれに生産拠点と研究開発拠点を擁し、米国、ドイツ、タイ、スウェーデンに計4か所の販売・テスト支社を置いている。総従業員数は約500人。
オーリンズのサスペンションは高性能なことで知られ、MotoGPの最高峰クラスではWPを傘下に収めるKTM系を除き、ほぼ全てのチームがオーリンズを採用するほど。その高い技術力を生かしたショックアブソーバー、フロントフォーク、ステアリングダンパー、ソフトウェアおよびアルゴリズム、各種付属品などをOEM、アフターマーケットセグメントに幅広く提供している。
YAMAHA YZR-M1[MotoGP]
もちろんMotoGPやスーパーバイクだけでなく、F1やNASCARなど4輪を含む主要モータースポーツ世界選手権のサプライヤーとして存在感を発揮している。
オーリンズレーシングの2024年の業績予想は、総売上高 1億4,400万USドル前後、調整後EBITDA 21~22%が見込まれているという。
テネコの最高経営責任者(CEO)、ジム・ヴォス氏は「オーリンズが次の段階に進化を遂げるうえで、ブレンボは間違いなく最適なパートナーです。今回の契約によって、オーリンズはブレンボのリーダーシップの下で組織と従業員が市場で成功し続けるための立ち位置を確保し、テネコは事業ポートフォリオを合理化し、バランスシートを強化する戦略が下支えされ、長期的ビジョンを実行に移すことができます」と述べている。
オーリンズ・レーシングの最高経営責任者(CEO)、トム・ヴィッテンシュレーガー氏は「ブレンボと力を合わせることによって、オーリンズは新しい成長機会を創出し、個々の強みとアセットを活かし、イノベーションを前進させ、お客様と従業員に一層大きな価値を提供できるものと期待しています」とコメントした。
今回の買収案件はブレンボ史上最大規模となり、買収金額は4億500万USドル(10月16日の為替レートで3億7000万ユーロ相当)、デットフリー・キャッシュフリーを条件とし、通例に従った価格調整条項が含まれている。支払いは手持ち資金で行うとした。
この買収案件は通例に従って規制当局の承認を必要とし、契約完了は2025年初めの見通しだ。
ブレンボは、二輪車・四輪車レーシング分野への投資を続けているが、今回の買収はその一環。2021年にはデンマークのSBSフリクション、スペインのホタ・ホアンを買収し、二輪車向けブレーキシステムソリューション群を拡充した。今年2月には、タイ市場への進出の足がかりとして二輪車メーカー向けブレーキシステムに特化した生産施設の新設を発表。ちなみにレース用、公道用二輪車向け軽合金製ホイールの設計・製造を手掛ける大手ブランド、マルケジーニもブレンボグループの傘下である。
二輪車事業は現在、ブレンボの収益のおよそ13%を占めているという。
足まわりのスペシャリストたちが組むことにより、さらなる製品・技術の充実や価格競争力が高まることに期待したい。
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