
スズキは、3月22日の東京モーターサイクルショーにおけるプレスカンファレンスで、2024年夏の鈴鹿8耐に40%バイオフューエルやサステナブル素材を用いたGSX-R1000Rで参戦することを発表した。2022年をもってMotoGPワークス活動を撤退して以来のレース復帰として注目されている。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●外部リンク:Team SUZUKI CN Challenge チームスズキCNチャレンジ(X)
欧州で公開されたオフィシャルショットを入手!!
おかえりスズキ!! おかえり佐原さん!! そんな声が木霊した東京モーターサイクルショー、スズキブースのプレスカンファレンスでサプライズ発表された、スズキのレース活動復活のニュースは瞬く間に日本と世界を駆け巡った。
スズキは、ユーロ5排出ガス規制の導入により多くの地域で販売終了となっている最終型GSX-R1000Rを用い、サステナブル燃料や再生可能素材パーツを組み合わせて、2024年7月開催の鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦する。
参戦チームは、スズキ社内で選抜したメンバーを中心に構成する「チームスズキCNチャレンジ」として、パートナー企業様とともに課題を克服しながらレース完走を目指す。
すでに当WEBではプロジェクトリーダー兼チームディレクターの佐原伸一さんに現地でインタビューを敢行しているので、未読の方は下記リンクよりチェックしていただきたい。
最高峰レース撤退からサステナブル領域での先駆者へ おかえりスズキ!! そんなファンの叫びが聞こえてきそうなプロジェクトの発表が、東京モーターサイクルショーのプレスカンファレンスで行われた。 ユーロ5排[…]
メーカー発表のコメントは以下の通り。
代表取締役社長 鈴木 俊宏氏のコメント
「今回サステナブル燃料で鈴鹿8耐に参戦する機会をいただいた、FIM、EWCオーガナイザー、鈴鹿サーキット各位に感謝いたします。
スズキは、サステナビリティに関わる技術の開発促進に向け、経営資源の再配分に取り組んでまいりました。世界耐久選手権は長時間の連続走行を強いられるマシン、ライダー、チームにとって非常に過酷なレースです。そこでサステナブル燃料やヨシムラジャパンをはじめとする協力各社様のサステナブルなアイテムの開発に挑戦できることは、スズキの環境性能技術向上のみならず、人材育成やモチベーション向上にもつながり、将来よりよい製品を作っていくことにもつなげられると考えています。皆様のご声援をお願い申し上げます。」
二輪事業本部長 田中 強氏のコメント
「二輪車にとって、特に中型や大型の二輪車にとって今後も必要と考えられる内燃機関でカーボンニュートラル実現を進めるために、今回の取り組みは非常に大きな意味を持つと考えています。走行性能と同時に耐久性が求められる耐久レースという開発に最適な場を使って、燃料だけではなくさまざまなサステナブルアイテムを試し開発することは、広い意味で将来の二輪業界を元気にできる活動であると胸を張って言えます。
この参戦を今回限りとせず、来年以降さらに高い目標を掲げて継続する活動にできるよう、しっかり取り組みたいと思います。応援をよろしくお願いします。」
もうひとつ見逃せないのは、公式リリースの中に「今回の参戦は、耐久レースの厳しい条件の中での実走行を通して環境性能技術の開発を加速することを目的としており、参戦で得られる貴重なデータを検証することによってより高い目標を見出し、今後の製品への技術フィードバックを推進していきます」という文言があることだ。
直接的な明言はなく、また佐原さんへのインタビューでもコメントは貰えなかったが、このプロジェクトが然るべき注目を集め、成果をなすことで有用なものであると社内外に証明できれば、新型GSX-R1000Rの開発&市販に結び付く可能性があると当WEBは信じている。少なくとも、「それはただの妄想です」と片付けられることではないはずだ。
東京モーターサイクルショー現地での写真はすでにお届けしたが、欧州で公開されたオフィシャルショットを入手できたので、以下に改めて紹介したい。なお、同マシンは4月5日~7日開催の名古屋モーターサイクルショー・スズキブースで展示される予定だ。
参戦車両 GSX-R1000R ヨシムラ SERT EWC CN 仕様
使用予定のサステナブルアイテム
アイテム | サプライヤー | 詳細 |
燃料 | エルフ | Moto R 40 FIM 40%バイオ由来の燃料 |
マフラー | ヨシムラジャパン | 触媒内蔵サイレンサー |
タイヤ | ブリヂストン | 再生資源・再生可能資源の比率を向上したタイヤ |
オイル | MOTUL | バイオ由来ベースオイルを使用したエンジンオイル |
カウル | JHI | 再生カーボン材(仕様期限切れプリプレグ材を処理) |
前後フェンダー | トラス | スイス Bcomp(天然亜麻素材を使用した複合材) |
前ブレーキ | サンスター技研 | 熱処理廃止鉄製ブレーキディスク、ローダストパッド |
バッテリー | エリーパワー | 車載LFPバッテリー、ピット電源供給用の蓄電池 |
チーム体制
チーム名 | チームスズキCNチャレンジ |
ライダー | (3名)未定 |
プロジェクトリーダー 兼チームディレクター | 佐原 伸一 |
現在の所属は二輪事業本部の電動パワートレイン設計グループだが、4月より本プロジェクトにかかわるための部署に異動予定だという佐原伸一さん。MotoGPで長らくプロジェクトリーダーを務めたことでお馴染みの読者も多いことだろう。ちなみにケビン・シュワンツと同い年。
GSX-R1000R ヨシムラ SERT EWC CN 仕様のスタイリング
ベース車両は2023年にヨシムラSERTが世界耐久選手権(EWC)を戦ったマシンだ。「エルフMoto R40 FIM 40%バイオ由来原料」に合わせたセッティングや再生素材を用い、新たなチャレンジへと向かう。
カラーリングはヨシムラSERTのグラフィックラインをベースとしながら、スズキらしいブルー(佐原さんのこだわりでもある)を基調に、ジャパンモビリティショー2023でスズキブースのイメージカラーとなっていたホワイト&イエローを配してサステナビリティを表現している。
スズキはこの分野で先駆者となる覚悟を決め、協力会社とともにプロジェクトを遂行していく。これこそ『レースは走る実験室』の最新世代なのだ。
GSX-R1000R ヨシムラ SERT EWC CN 仕様
GSX-R1000R ヨシムラ SERT EWC CN 仕様
GSX-R1000R ヨシムラ SERT EWC CN 仕様
GSX-R1000R ヨシムラ SERT EWC CN 仕様
GSX-R1000R ヨシムラ SERT EWC CN 仕様
GSX-R1000R ヨシムラ SERT EWC CN 仕様
GSX-R1000R ヨシムラ SERT EWC CN 仕様
GSX-R1000R ヨシムラ SERT EWC CN 仕様
GSX-R1000R ヨシムラ SERT EWC CN 仕様
GSX-R1000R ヨシムラ SERT EWC CN 仕様のディテール
前後フェンダーはトラス社製で、スイスのBcompという天然亜麻繊維を使用した革新複合材料を用いる。
サンスター技研による熱処理廃止鉄製ディスクとローダストパッドを採用。鋳鉄ディスクに近い良好なフィーリングで、制動力も十分に期待できそうだという。
ヨシムラジャパンによる触媒内蔵サイレンサー。
レーシングマシンでは見たことのない触媒内蔵サイレンサー。市販車でも通常はエキゾーストパイプに内蔵されるので、どのようなサウンドになるのか楽しみだ。
JHIによる再生カーボン材(プリプレグ材)を用いたカウル。
こちらのリヤフェンダーもフロント同様にBconpを用いている。
ブリヂストンによる再生資源・再生可能資源比率を向上したタイヤ。新品並みのパフォーマンスを得るのは難しそうに思えてしまうが、MotoGPでもEWCでもトップに昇りつめたブリヂストンの新たなチャレンジとなる。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(スズキ [SUZUKI])
高評価の2気筒エンジンや電子制御はそのままにスタイリングを大胆チェンジ! スズキは、新世代ネオクラシックモデル「GSX-8T」および「GSX-8TT」を発表。2025年夏頃より、欧州、北米を中心に世界[…]
おそらくあと数時間で答えは出るが、ヤングマシンは休んでいられない 6月30日に一報をお届けしたように、スズキ「GSX-8」系のニューモデルが登場することになりそうだ。同日にグローバルサイトで公開された[…]
スズキGSX-R400R:ダブルクレードルにフルモデルチェンジ GSX-Rは、1990年に3度目のフルチェンジを敢行。新設計エンジンに加え、φ33mmダウンドラフトキャブや倒立フォークまで備えた。 フ[…]
この外見でツーリングもOK 本気系が多様な進化を果たし、レプリカ系のフルカウルに身を包みながら街乗りからツーリングまでこなすモデルが誕生した。本気系にレッドゾーンは一歩譲るものの、後にFZR250やG[…]
スズキGSX-R:斬新かつ孤高のネーム、走りもケタ違い 1983年は、世界耐久や鈴鹿8耐でスズキの耐久レーサーGS1000Rが旋風を巻き起こした。 その年の暮れ、晴海で開催された東京モーターショーに、[…]
最新の関連記事(ヨシムラ)
当時を思わせながらも高次元のチューニング ◆TESTER/丸山 浩:ご存知ヤングマシンのメインテスター。ヨシムラの技術力がフルに注がれた空冷4発の完成度にホレボレ。「この味、若い子にも経験してほしい![…]
【ヨシムラジャパン代表取締役・加藤陽平氏】1975年、POPの右腕だった加藤昇平氏と、POPの次女・加藤由美子氏の間に生まれる。4輪業界でエンジンチューンやECUセッティングなどを学び、2002年にヨ[…]
真夏の激闘を前に意気込みを聞く! ヨシムラの『ツーリングブレイクタイム』はその名のとおり、ツーリング中の立ち寄りスポットとしてヨシムラジャパンが主催しているイベント。2009年の初開催以来、すでに60[…]
18時間耐久の優勝で「ヨシムラ」は全国区に 加えて、ホンダから市販車ベースのレース車両の開発依頼もあったものですから、ヨシムラは1965年に東京の福生に移転しました。私は高校1年生でしたので、卒業まで[…]
懐かしのスタイルに最新技術をフル投入! 2025年3月の東京モーターサイクルショーで詳細が発表されたヨシムラヘリテージパーツプロジェクト。対象機種は油冷GSX-R750とカワサキZ1となっており、GS[…]
人気記事ランキング(全体)
1位:ワークマン「ペルチェベストPRO2」使用レビュー ワークマンの「ペルチェベストPRO2」を猛暑日で徹底検証。最新モデルはペルチェデバイスの数が昨年モデルの3個から合計5個に増加し、バッテリーもコ[…]
当時を思わせながらも高次元のチューニング ◆TESTER/丸山 浩:ご存知ヤングマシンのメインテスター。ヨシムラの技術力がフルに注がれた空冷4発の完成度にホレボレ。「この味、若い子にも経験してほしい![…]
カバーじゃない! 鉄製12Lタンクを搭載 おぉっ! モンキー125をベースにした「ゴリラ125」って多くのユーザーが欲しがってたヤツじゃん! タイの特派員より送られてきた画像には、まごうことなきゴリラ[…]
森脇護氏が考案した画期的なアルミフィン構造 画期的なアイデアマンとしても有名なモリワキエンジニアリングの創始者・森脇護氏。そんな氏が数多く考案した製品群の中でも代表作のひとつに挙げられるのが、1980[…]
エンジン積み替えで規制対応!? なら水冷縦型しかないっ! 2023年末にタイで、続く年明け以降にはベトナムやフィリピンでも発表された、ヤマハの新型モデル「PG-1」。日本にも一部で並行輸入されたりした[…]
最新の投稿記事(全体)
MotoGP黎明期のレプリカマフラーだ このマフラーは4スト990ccが導入されて、世界GPがMotoGPに代わった翌年の2003年に、ホンダRC211VエンジンのモリワキMotoGPレーサー・MD2[…]
ホンダのスポーツバイク原点、CB72とマン島T.T.イメージを詰め込んだクラブマンだった! ご存じGB250クラブマンは1983年の12月にリリース。同じ年の4月にデビューしたベースモデルのCBX25[…]
高性能よりも高感度 現在のロング&ベストセラーモデルの筆頭として君臨しているホンダのレブルシリーズ。そのルーツは1985年デビューした250ccの「レブル」に遡ります。 1985年といえばハイテク満載[…]
カブト最高峰フルフェイスに新しいグラフィックモデルが登場 このたびF-17に加わるグラフィックモデル『ZESTAL』は、モノトーンのベースカラーに直線的なアクセントラインを組み合わせることで躍動感を表[…]
美しい孔雀の羽根の色味が変わる特殊ペイントで仕上げた新グラフィック 『エクシード-2』は、カブトがラインナップするオープンフェイスの上級モデルで、赤外線(IR)と紫外線(UV)を大幅にカットしつつ、空[…]
- 1
- 2