
日本自動車工業会による「自治体の二輪車駐車場施策に関する調査」報告書(2023年1月)から、アンケートに回答した50の自治体の2輪駐車場のすう勢について紹介したい。
●文:ヤングマシン編集部(田中淳磨)
下のグラフは「貴自治体において、2輪車の駐車場政策はどのようなすう勢にありますか?」という質問への回答だ。多数派は2極化しており、「対策は必要」が14自治体ある一方で「2輪駐車場が必要と思っていない」も14自治体だった。
【自動二輪車駐車場の整備に関するすう勢(地域構成)】東京23区のほか、東京7市(立川市/武蔵野市/府中市/調布市/町田市/福生市/多摩市)に、政令指定都市の20市(札幌市/仙台市/さいたま市/千葉市/横浜市/川崎市/相模原市/新潟市/静岡市/浜松市/名古屋市/京都市/大阪市/堺市/神戸市/岡山市/広島市/北九州市/福岡市/熊本市)を加えた50の自治体にアンケートを実施。※「自治体の二輪車駐車場政策に関する調査」20ページより引用(2023年1月/日本自動車工業会)
50cc超の2輪車に関する質問なので、原付スクーターなどは含まれていない。ゆえに「必要と思っていない」イコール「足りている」と考えるのは早計で、東京都心のように、取締りが長く続いたことで2輪車で都心に行くことを“あきらめている”地域も多いだろう。
こうした地域では、ユーザーが声を挙げることもなくなり、行政や駐車場事業者などの施設管理者に“駐めたい”というニーズが届くこともなく、ライダーはすっかりサイレントマジョリティになってしまっている。
下表は、同質問に設定された回答「8.その他」を選んだ自治体からの記述で、7つの自治体の回答を抜粋した。まさに日本各地の2輪駐車の現状が垣間見える回答で、放置自転車対策に追われる東京23区、郊外でもバイク置き場が少ないことを示す(利用をあきらめた)多摩市、市の条例で推進し関内にも駐車場が多い横浜市、駐車場法に基づいた附置義務制度で推進する川崎市、整備が必要と思っていない地方都市の新潟市、バイクの数は多いのに行政に声が届いていない京都市。
自治体とバイクの駐車問題はパターン化できる。改善のヒントも見えており、モデルケース作りなどの施策を具体化できるだろう。
自治体 | 回答 |
---|---|
東京都新宿区 | 当区としては、まずは自転車対策が課題。2輪車については、周辺の駐車需要をふまえながら整備台数を検討している。 |
東京都北区 | 自転車駐場(50cc以下の原動機付自転車を含む)整備を優先しているため、2輪車用の駐車場の整備まで手が回らない状況。 |
東京都多摩市 | 市営駐車場内にある2輪車の利用状況を見るかぎり、その利用台数は増えている状況とは言えない。 |
横浜市 | 市による駐車場整備については、2輪車を含め、横浜市駐車場条例などによる整備を推進している。 |
川崎市 | 本市では、2輪車を含む駐車場の整備については、附置義務条例等に基づき、建築物の新築等に併せて整備を推進している。 |
新潟市 | 2輪車の放置車両数等は把握していないが、2輪車の駐車場が必要との考えには至っていない。 |
京都市 | 一部のエリアで2輪車の駐車場整備を求める声は上がっており、対策は必要だと認識している。※ただし、届けられる声はそれほど多くない。 |
報告書でも指摘されているが、三宮など神戸市繁華街における2輪駐車スペースの設置は素晴らしい。ロードサイドが様々に活用されていてお手本となるだろう。
報告書でも指摘されているが、三宮など神戸市繁華街における2輪駐車スペースの設置は素晴らしい。ロードサイドが様々に活用されていてお手本となるだろう。
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