“ハンバーグ師匠”は周囲が作ったキャラ。最初は嫌々やってた
――ところで、そもそも“ハンバーグ師匠”って、どうやって生まれたキャラなんですか?
“ハンバーグ師匠”はねえ…。ふふふ、話長くなるよ(笑)
今から20数年前、テレビ朝日系ABC制作の『笑いの金メダル』っていうネタバトル番組があって。くりぃむさん(くりぃむしちゅー)がMCで、当時まだ俺等は若手で、ひな壇にいてね。で、新たな企画として、それぞれいつもやってるスタイルじゃないネタをやりましょうと。
で、スピードワゴンは一発ギャグをやりますってことに。小沢さんがファッションショーのMCになって、俺が一発ギャグをやる。ランウェイを歩いていって、先頭で「この春夏におすすめのギャグです」って、ギャグをやる。それを繰り返したんだけどね。そのやった一発ギャグが、ものの見事に全部スベった。マジかと思って…。
ここで話はちょっと前に遡るんだけど。我々がスピードワゴンでデビューした頃、ライブハウス・渋谷La.mamaで「ラ・ママ新人コント大会」っていう月イチのコントライブがあって。そのエンディングで、当時、X-GUNさんと古坂大魔王さんがMCをやってた。
で、俺らは井戸田と小沢、名前も覚えてもらってないぐらいの状況。先輩達から「キミ、名前は?」って聞かれて、「井戸田です」「え? …からの?」「…だけど?」みたいな。東京の芸人ならではの、けっこう荒めのイジり。これがなかなか終わらない。もうあんまりにもしつこいから、「俺だよ俺、ハンバーグだよ」って言ったんだよ。その時、それがなんとなくウケた印象が頭の中に残っててね。
で、『笑いの金メダル』の話に戻るんだけど。一発ギャグやって、スベった俺が袖にいる。俺は取り返したくって、あの時の記憶でハンバーグがあったことを思い出した。で、ディレクターさんに「もうひとつだけやらせてください」って頼んだの。「何やるんですか?」「ハンバーグやります」
で、 ハンバーグを手に持ってランウェイを前まで行って。「俺だよ俺、ハンバーグだよ」って言ったんだ。そしたら、もっとスベって…。
そりゃそうだよね。以前のライブの時は、「からの」「だけど」みたいなフリがあってやってるからまぁウケた。そのフリがないのに急に「ハンバーグだよ」って言って。さんざんスベリ散らかしたヤツがアタマどうかしちゃった、みたいな。もうゲボ出そうになっちゃって…。
うわぁ…と思って、うなだれたままひな壇に戻ったら、裸で獅子舞持ったたむけんさん(たむらけんじ)が、俺が散々スベリ散らかして帰ってきたのを見て、「お前よくあの状況で帰って来れたな」「お前メンタルすごいな。オマエ師匠クラスだよな、ハート」「ハンバーグ師匠やな」って徐々にイジってくれた。で、スタジオがドーンってウケて、その回の収録は終わったんだよ。
だけど、俺はもう失意のどん底よ。スベり散らかして帰ったんだから。
すると、次の週の制作会議に我々スピードワゴンの2人が呼ばれて。出席したら「来週も同じ企画をやります。スピードワゴンさんには“ハンバーグ師匠”でお願いします」と。
だけどね。“ハンバーグ師匠”なんて、実際には存在しないじゃない? たむけんさんのガヤの一言でしかないわけだから。俺はまたスベリ散らかすのか?って、ホントにイヤだった。
すると、小沢さんが、「ハンバーグ師匠かぁ。面白いですねぇ」って言い出して。その場で練り出し始めたんだよ。
ハンバーグ師匠のスタイルは、「この街も変わらねえなあ。忘れちまったのかよ俺だよ俺、ハンバーグだよ」って登場する。で、「“熱々の鉄板ジョーク”言いましょか。じゃまずは100グラムから」「ハンバーグのワイフが浮気してねぇ。いくらハンバーグだからって、認めないよ“あいびき”は」 んで、最後にアタック音を出して「ハンバーーグ!!」って大声で叫びましょう、って。
コレ、全部小沢さんが考えたのよ。俺は隣りで震えてた。なんだか変な会議が行われて、俺がやることを勝手に決め出してるんだ。ハンバーグ師匠は、テンガロンハットかぶって、ウエスタンな格好して出てくる。「俺だよ俺、ハンバーグだよ」って…。
最初はコレ、2人のコンビ芸だった。小沢さんが“ライス坊や”って役で。まずライス坊やが出て来て、「みんなー! この街にハンバーグ師匠が帰ってきたぞぉ。わーっ!!」って言って、曲流れて、俺が登場する。ハンバーグ師匠は久しぶりに帰ってきて、「この街も変わらねえなあ」って言う。その後に俺がネタやって。
でもさ、その間、ライス坊やは隣りでずっと立ってるだけなんだよ。で、2回ぐらいやった後に、小沢さんが「ライス坊や、もういらなくないか?」って。「そうだな」「もうハンバーグ師匠独り立ちしてよ」って言われて、俺は一人で旅に出ることになった(笑)
これをその次の週にやったら、めちゃくちゃウケて。だけど、番組自体はその半年後に終了。番組が終わると同時に、出すところがなくなったから、ハンバーグ師匠自体、まさに“熟成期間”に入ることになったのさ。
それから数年経って。俺がR1グランプリに出ようと思って、何やろうかなあと思った時に、あぁそういえば俺、ハンバーグ師匠やってたよなと。
当時のABCの番組スタッフさんに連絡したら、「もともと小沢くんが作ったキャラだし、番組とか関係なく使っていいよ」って。それが2010年の話。そこからずっと俺がやってる。けっこう長いのよね。
生まれたのは20年ぐらい前の話。そもそも俺が作ったわけじゃない、俺はずっと勝手にやってるだけ。それが最終的にこうやって書籍にまでなってるわけだから。なんでも繋がってる。感慨深いよね。
初めての書籍化。すべてがバイクで1本に繋がっている
――そしてこのたび、ご自身初の著書『ハンバーグ師匠のモトライフ』が、ワニブックスより刊行されました。
この本、最初はマネジャーから「井戸田さん、ハンバーグ師匠が乗ってるバイク、アレを書籍化したいんですけど」って言われて。最初は意味がわかんなくて。俺は本なんかに縁のある人間じゃないから。物書くわけでもないし、ネタ書きでもないから、どうすんのって。
すると、『アメトーーク』でのこともそうだし、バイクを乗り始めてからのエピソードトークもたっぷりあるじゃない。それをエッセイにして、あと写真も撮り下ろして、みたいな。まぁそれでまとめられるのであれば、記念にもなるし、いいなぁと思って。ワニブックスさんから声かけていただいて、それが始まり。番組とかで小出しでいろんなトークしてきたから、いざまとめてみると、あぁコレ、バイクで1本に繋がってるなあって感じはしたね。
これからのハンバーグ師匠のこと。それからWEBヤングマシン読者にもひと言
――さて、この後、ハンバーグ師匠はどこへ向かわれるんでしょうか?
バイク用にガレージ借りたんで、今はガレージ作りが楽しいかな。あと、ハーレーのマフラー変えたんで、誰かと走りに行ったりとか。それから、家族のクルマ用に、鋳物でホイールを作ってるところ。削り出してマットブラックにして嵌めようと。コレは動画のネタにはしてないんだけどね。ハーレーの時に、バイクで出てメディアにイジられたことで動きにくくなったってことを体感してる。だからクルマのことは出さないって決めてるんだよ。
バイクについては、これから出会いがあったら欲しいものが出てくるかもしれない。でも、1年前に結婚したし、ちょっとお伺いを立てないといけないところはあるかもね。
WEBヤングマシンの読者って、俺と一緒ぐらいのオジサンが多いのかな?(師匠は現在50歳) とにかく、くれぐれも安全運転で。無理せず、おケガのないようにぜひ。
どこかで俺を見かけたら、遠慮せずに気軽に声をかけてもらってOKですよ。でもね、バイクにイタズラするのだけは、くれぐれもやめてください(笑)。
新刊本『ハンバーグ師匠のモトライフ』とYouTube『ハンバーグ師匠チャンネル』、ともども今後もよろにくね!!
ハンバーグ師匠、独占インタビューありがとうございました! ますますのご活躍を期待しています。
最新の関連記事(タレント)
モデル/タレントのダレノガレ明美さんが、ホンダを代表するビッグネイキッドとして長らく愛され続けたCB1300のラストモデル「CB1300スーパーフォアSPファイナルエディション」のオーナーになったこと[…]
富山県で靴を磨いていたときのこと。「君、面白いことしてるねー」と声をかけてくれたのはロードバイクに乗ったとあるおじいさんでした。 「こんにちは! 今このバイクで日本一周しながら靴磨きしているんです。良[…]
故郷・北海道から1週間をかける“大人の同窓会” テレビ/映画/舞台への出演のほか、音楽シーンなどマルチに活躍する俳優/ミュージシャン・武田真治さん。芸能界きってのバイク好きとして知られ、これまで『ウィ[…]
大ブームだった50ccスクーターのCMを振り返る 今から30〜40年も昔、1980年代中盤から1990年代前半のいわゆるバブル経済期には、バイクの売り上げも絶好調でした。 中でも50ccスクーターは、[…]
バイクブームを彩ったCMとアイドルたち 昭和から平成にかけて巻き起こった一大バイクブーム。ブームには1970年代の第一次、1980年代から1990年代前半の第二次ブームがありますが、これらの時期に顕著[…]
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
【特集】バイク界の近未来を斬る! 時代を変えるべく、さまざまなテクノロジーや新モデルが発表されています。 しかし市販化をただじっと待っていられないっ! そこで国内4メーカーの最新潮流、さらに近未来につ[…]
スズキは、昨年のEICMAで世界初公開、大阪・東京・名古屋モーターサイクルショーで日本でも公開した新型モデル「DR-Z4S」および「DR-Z4SM」を見て、触って、跨ることができるイベント「スズキ モ[…]
MotoGPライダー使用率No.1は大谷翔平ともコラボしたあのメーカー 新緑が眩しい5月から6月にかけては1年でもっとも過ごしやすい季節だといわれますが、実はこの時期、晴天時の紫外線の強さは真夏とほと[…]
1948年の本田技研工業設立から77年で達成 1948年に創業したホンダは、「技術で多くの人々の生活をより便利にしたい」というブレないコンセプトで多くの国や地域のユーザーニーズに合った製品やサービスを[…]
二輪事業では、世界6000万台の時代に世界シェア5割を狙う! ホンダが発表した2025年3月期における二輪販売台数は、世界シェア約40%の2057万台。37の国と地域において過去最高を達成したという。[…]
人気記事ランキング(全体)
ネットで注文できる1サイズ&1プライスガレージ。完成状態で運搬されてクレーンで据え置きされる サンデーメカニックなら誰もが知る工具ショップ・アストロプロダクツのホームページ上に「BIKE小屋」という商[…]
バイクライフを変えるスマートナビ「AIO-6シリーズ」 「AIO-6シリーズ」は、従来のバイク用ナビゲーションシステムが「道案内」や「車載モニター」に限定されていたのに対し、4G通信技術を搭載している[…]
昔の日本で大型輸入車に乗れるのは非常に限られた人だけ 現在の日本では様々な輸入車が当たり前のように走っているけど、昔は世界で1番厳しいとされた認証型式の取得や車検制度という高い壁があり、日本を走る外車[…]
完全に消える? それとも復活する? ホンダの名車CB400スーパーフォアが生産終了になって今年ではや3年目。入れ替わるようにカワサキから直列4気筒を搭載する「Ninja ZX-4R」が登場し、唯一無二[…]
バイクは性能だけじゃない。大胆に温故知新を貫いた 1馬力でも高く、0.1秒でも速く…。1980年代後半、そんな熱狂にライダーは身を焦がしていた。レースでの勝利を至上命題にしたレーサーレプリカが世に溢れ[…]
最新の投稿記事(全体)
「バイクのスプロケットの交換タイミングはいつなんだろう?」 これは、バイク仲間や先輩、バイク屋さんやバイク雑誌などでも昔からとずっと語られてきたことで、今ではインターネット検索すればいくらでも情報が出[…]
ビモータの工房があるイタリアの都市「リミニ」をその名に冠する Ninja ZX-10RRのエンジンを搭載したビモータ製スーパーバイクが、ついに正式発表された。すでにスーパーバイク世界選手権を走っている[…]
【特集】バイク界の近未来を斬る! 時代を変えるべく、さまざまなテクノロジーや新モデルが発表されています。 しかし市販化をただじっと待っていられないっ! そこで国内4メーカーの最新潮流、さらに近未来につ[…]
スズキは、昨年のEICMAで世界初公開、大阪・東京・名古屋モーターサイクルショーで日本でも公開した新型モデル「DR-Z4S」および「DR-Z4SM」を見て、触って、跨ることができるイベント「スズキ モ[…]
LCDメーターがTFTにグレードアップ、外観も一新! リーニングマルチホイール=LMW採用の原付二種スクーターとして独自の地位を築いているヤマハの「トリシティ125」が欧州でマイナーチェンジ。最新YZ[…]