モトグッツィは、9月7日から10日の4日間で行ったイベント『オープンハウス2023』で、ニューモデル『V7 STONE CORSA』を世界初公開した。発売時期は明らかになっていないが、近日中にラインナップに加わることは間違いなさそうだ。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●外部リンク:モトグッツィ
モトグッツィの黄金時代の歴史を世界のバイクファンに伝える記念碑
このたびモトグッツィがサプライズでアンヴェールしたV7ストーンコルサは、その名が示すとおりレーシングイメージを強調した派生モデルだ。追加される装備は、往年の名車『ル・マン』を彷彿とさせるビキニカウルをはじめ、バーエンドミラー、ブラックアルマイト加工したフューエルキャップ、ハンドルバークランプ上に設置されたネームプレートだ。また、オプション装備としてシングルシートカバーが用意され、レーサームードをいっそう高めることもできる。
車体色はモトグッツィのレース黄金時代をオマージュしたという、メタリックグレーとレッドのツートーンで、オプションのシングルシートカバーも同色でペイントされる。
このたびモトグッツィがV7ストーンコルサを発表した背景には、同社が2019年より主催している耐久レース『モトグッツィ ファストエンデュランストロフィー』がある。これは現行V7シリーズで競うレースで、2022年にはヴァレルンガ、クレモナ、ムジェロ、ミサノで行われた。イタリア・グアレスキモト社からは、このレースに適したフェアリングやマフラー、ステップキットなどのパーツも販売されている。
今でこそ高性能スーパースポーツをラインナップしていないモトグッツィだが、1920年に創業した翌年からレース活動を開始し、国内はもとよりヨーロッパ選手権やWGPにも参戦し、マン島TTでも勝利した実績がある。とくに350ccクラスでその強さを発揮し、WGPでは24勝を挙げたほか、宿敵MVアグスタに対抗するため、500ccV型8気筒『オットーチリンドリ』(イタリア語で8気筒の意味)という驚異的なエンジンの開発も行った。残念ながらオットーチリンドリはWGPで勝利をつかめないまま、モトグッツィは経営難を理由として1957年にレース事業から完全撤退する。そしてそれ以降は一般公道向けバイクの開発に注力してきた。
初代V7はモトグッツィが栄光のレースから撤退した後に誕生したモデルではあるものの、このたび登場するV7ストーンコルサは、モトグッツィの黄金時代を人々の記憶にとどめる記念碑的モデルといえる。
V7シリーズは、現在のモトグッツィの核を成すモデル。そのルーツは1960年代、フィアットのスポーツカー用エンジンとして開発され、その後は軍用3輪駆動車で重用されたクランク縦置きV型2気筒エンジンにある。これを改良してダブルクレードルフレームに搭載、1967年に発売したスポーツバイクが初代V7だ。’69年には排気量を757ccとして走行性能を高めたV7スペシャルを、’73年にはスポーツ性を向上させつつレースのレギュレーションにも合致させるべくボアダウンすることで排気量を748ccとしたV7スポルトを発売した。この成功により、モトグッツィは縦置きVツインエンジンのスペシャリストとして世界中で認知された。
大排気量化という時代の波にもまれるうち、排気量由来のV7という車名は消えてしまったが、2007年にブレヴァ750をベースに改良した『V7クラシック』を発表。往年のスポーツ性能こそないものの、落ち着いた走行特性はイタリアンスタンダードとして注目を集めた。さらにいえば、現代に続くネオクラシックの先駆けとしての役割も果たし、モトグッツィという歴史と伝統あるブランドを世界に再認識させた。
’23年9月現在のV7シリーズは、エンジンの改良によって排気量は853ccまで拡大されたが、伝統であるV7を名乗り続けている。
MOTO GUZZI V7 STONE CORSA
主要諸元■全長2165 全幅― 全高1100 軸距1450 シート高780(各mm) 車重218kg■空冷4ストロークV型2気筒OHV2バルブ 853cc 65ps/6800rpm 7.44kg-m/5000rpm 変速機6段 燃料タンク容量21L■タイヤサイズF=100/90-18 R=150/70-17 ●価格:未定 ●色:灰×赤 ●発売日:未定 ※スペックはV7 STONE(参考値)
シングルシートカウルをオプション設定
V7ストーン コルサのディテール
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
振動、路面を蹴飛ばす感じ、エンジンで走らせる気持ちよさ バイクはエンジンを懐に抱えて走るような乗り物だ。単純にライダーとエンジンの距離が近いことがエンジンの存在感を大きく感じさせるだけではなく、エンジ[…]
専用パーツを多数装備したスペシャルエディションがV7とV9に登場 V7シリーズは現代モトグッツィの祖を築いたクランク縦置き空冷V型2気筒エンジンを搭載するスポーツバイクで、1960年代後半から続く伝統[…]
モトグッツィ V7スペシャル 試乗ショートインプレッション '21モデルで850cc、65psエンジンとなったV7シリーズ。乗ってみると相変わらずの味わい深いキャラに思わずニンマリ。縦置きクランクシャ[…]
これが後のGL500につながったかは不明 これはいろいろなエンジン型式の可能性を探るために開発された1台で、クランク軸縦置きの200㏄空冷Vツインを搭載したもの。製造コストが高く、商品化できなかったと[…]
BMW R 12 nineT 初代と同様の自由なカスタマイズが可能なR12ナインT BMWがRナインTの新型「R12ナインT」を発表した。ネオクラシック・ロードスターのRナインTは、2013年にBMW[…]
最新の関連記事(モトグッツィ)
ツーリング装備をプラスした長距離走仕様 2019年に初登場したモトグッツィ「V85TT」は、最新V7系853ccの縦置きV型2気筒エンジンを搭載したアドベンチャーツアラー。ロングツーリング仕様の「V8[…]
公式コミュニティ10周年記念のグラフィックをまとった特別仕様車 Moto Guzzi The Clan(モトグッツィ・ザ・クラン)は、モトグッツィの公式コミュニティで、入会するとモトグッツィに関する情[…]
水冷Vツインを搭載したアドベンチャーツアラー、ステルビオがいよいよ日本に上陸 このたび新発売となる『ステルビオ』は、モトグッツィの最新鋭エンジンとなる1042cc水冷V型2気筒を搭載するアドベンチャー[…]
バッテリーコンディションがいまひとつ…。Kナナゴー用バッテリーを載せたら、これがイイ!! 還暦をすぎた筆者は、大型バイクで気楽に走り回ることができない情けない体調…。リハビリのつもりでバイクいじりは積[…]
イタリア最古のメーカーは、クラシカルな佇まいでも新しい モトグッツィはイタリア最古のメーカーで、第一次大戦でエンジニアのカルロ・グッツィとレースライダーと富豪の3人が空軍で出会い、戦後1921年に創立[…]
最新の関連記事(新型ヘリテイジ/ネオクラシック)
グローバル展開では『500cc』のほうが有利になる地域も ホンダ「GB350」シリーズといえば、直近ではクラシカル要素を強化したGB350Cも新登場し、走りのフィーリングまで変えてくるこだわりっぷりが[…]
コンパクトな車体に味わいのエンジンを搭載 カワサキの新型モデル「W230」と「メグロS1」がついに正式発表! ジャパンモビリティショー2023に参考出品されてから約1年、W230は白と青の2色、メグロ[…]
CL500って、とても魅力的なバイクだと思います。250cc並のコンパクトな車体サイズなのでビッグバイクビギナーでも取り回しが簡単。排気量が250ccの2倍もあるから、どんなシチュエーションでも余裕の[…]
伝説のロゴが語る歴史 2024年現在でこそ、三角形にブロック体のアルファベットといった趣の、トライアンフロゴ。しかし100年以上続く、歴史あるブランドだけあって、1902年の盾型デザインに始まり、いく[…]
スクランブラー誕生10周年。スタンダードモデルと特別仕様車を発表 ドゥカティ スクランブラーは、2014年に登場したネオクラシックシリーズで、1960~1970年代に人気を博したモデルをモチーフとした[…]
人気記事ランキング(全体)
4気筒CBRシリーズの末弟として登場か EICMA 2024が盛況のうちに終了し、各メーカーの2025年モデルが出そろったのち、ホンダが「CBR500R FOUR」なる商標を出願していたことがわかった[…]
125ccスクーターは16歳から取得可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限[…]
電熱インナートップス ジャージタイプで使いやすいインナージャケット EK-106 ポリエステルのジャージ生地を採用した、ふだん使いをしても違和感のないインナージャケット。38度/44度/54度と、3段[…]
第1位:X-Fifteen[SHOEI] 2024年10月時点での1位は、SHOEIのスポーツモデル「X-Fifteen」。東雲店ではスポーツモデルが人気とのことで「とにかく一番いいモデルが欲しい」と[…]
コンパクトな車体に味わいのエンジンを搭載 カワサキの新型モデル「W230」と「メグロS1」がついに正式発表! ジャパンモビリティショー2023に参考出品されてから約1年、W230は白と青の2色、メグロ[…]
最新の投稿記事(全体)
126~250ccスクーターは16歳から取得可能な“AT限定普通二輪免許”で運転できる 250ccクラス(軽二輪)のスクーターを運転できるのは「AT限定普通二輪免許」もしくは「普通二輪免許」以上だ。 […]
一般人でも許される現行犯逮捕とは? 「逮捕」とは、犯罪の容疑がある人の身柄を強制的に拘束する手続きです。 原則として、事前に裁判官の審査を受けて許可を取り、令状の発付を得てからでなければ、たとえ警察で[…]
バイクのスピード感をイメージさせる象徴的なグラフィックモデル登場 ネオテック3のグラフィックモデル第3弾となるアンセムは、バイクを走らせているときに感じる風を思わせる、スピード感ある模様が特徴だ。ブラ[…]
バイクのパーツと“夜行”をポップアートに描いたホットでクールなグラフィックモデル Z-8 ヤギョウは、ネオンカラーなどの極彩色で彩られた現代ポップアートなグラフィックが特徴だ。グラフィックにはタイヤと[…]
グローバル展開では『500cc』のほうが有利になる地域も ホンダ「GB350」シリーズといえば、直近ではクラシカル要素を強化したGB350Cも新登場し、走りのフィーリングまで変えてくるこだわりっぷりが[…]
- 1
- 2