
他を寄せ付けない、高性能で知られるヨシムラ。Z900RS用カスタムパーツ市場でも大人気だ。そんなヨシムラが東京モーターサイクルショー2023で、Z900RSの「大元」となるオリジナルZ1(900スーパーフォア)用に開発したばかりのスペシャルシリンダーヘッドを展示。最新のレーサー開発からフィードバックした技術で、車両発売から半世紀を超えたZ1の可能性をさらに引き出してみせるッ!
●文:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ヨシムラジャパン
「空気を速く多く取り入れ、速く多く吐き出す」ために
ヨシムラが東京モーターサイクルショー2023で新発表したオリジナルZ1用パーツは、その名も「Yoshimura F-TUNING HEAD」。ずばり、スペシャルシリンダーヘッドだ。この“F”とは同社代表の吉村不二雄氏の名前が由来……というわけではなく、「Flow(=空気の流れ)」を意味するもの。
これまでマフラーや大口径キャブ、ハイカムにピストンまわりなど、数多あるチューニングがZ1に対し行われてきたが、ヨシムラとしては「これらのパーツはもっと性能を出せるはずだ」と、追い求めている理想にまだ届いていなかったと言う。
エンジンチューニングの根底理論として“空気をより速くより多く取り入れ、より速くより多く吐き出す”ことを旨とするヨシムラにとしては、端的に言うと「チューニングに対し、空気の流れのバランスが崩れて追いついていない部分があった」(開発者談)。
その部分こそが吸気と排気をつなぎ合わせる要の部品であるシリンダーヘッド。吸排気ポートの形状をチューニングに合わせて完全に見直したことで、「より速くより多く」がさらに高まるようになった。
【Yoshimura F-TUNING HEAD】
Type1・Black:71万5000円/Silve:r70万4000円
Type2・Black:99万円/Silve:r97万9000円
最新技術と職人の技を融合
商品化されたF-TUNING HEADは、カワサキが先だってリバイバル生産したシリンダーヘッドをベースに吸排気ポートを熟練工が手作業で研磨加工。
その一方でポート設計には3D CADを活用しつつ専用治具も開発されて、正確かつ人間の手によってしか再現できない滑らかな曲線でポート壁面が生まれ変わっている。
F-TUNING HEADにはType1とType2の2種類が用意されており、Type1はZ1リバイバルヘッドのSTDポート形状を活かしてST-L1カムシャフト・大口径キャブレター・高効率なエキゾーストパイプに適合するように調整を加えた吸排気ポート形状。
Type2はヨシムラがレース用エンジンのポート設計を行う際の方法を取り入れ、カムシャフトなど各チューニングパーツの性能をより引き出すことが出来るように調整を行った、オリジナル形状の吸排気ポートになっている。
気になるZ1オーナーは早めに動こう
製品の状態としては、この加工されたシリンダーヘッドのブロック本体の他に、バルブやバルブスプリング、高精度軽量リテーナー&コッターやタペットキャップ。それにST-L1カムシャフトやカムスプロケット、カムシャフトベアリングなどがすべてセットとなる。
それらを、やはり熟練スタッフが組み込んだ後に1基ずつ念入りにフローベンチで測定してから出荷。文字通り、ヨシムラチューンの究極シリンダーヘッドに仕上がっている。
ポート内部はもちろん、バルブ表面も美しい鏡面処理が印象的。これは混合気や排気を、より速くより多く通過させるために欠かせない加工。タペットキャップも鏡面加工が施されているが、やはりオイルにも“流れ”を求めるヨシムラらしいこだわりの現れだ。
ヨシムラF-TUNING HEADは、ヨシムラ公式WEBサイト上での抽選販売となり、3月22日から既に受付を開始。Type1、Type2それぞれにブラック塗装とシルバー塗装が用意されている。
生産数は未発表だが、リバイバル生産のカワサキ純正ヘッドがベースとなっているため、そう多くは無い様子。東京モーターサイクルショー開催初日の時点でさっそく問い合わせが舞い込んでいるというので、気になるZ1オーナーは早めに動くのをオススメしたい。
究極のトータルチューニングを目指しているなら、こんなチャンスはめったにないはずだ。
様々なパーツがセットに。
ブースに展示されていた解説板。さらに詳細が知りたい人は下のヨシムラ特設ページへGO!
ヨシムラブースには他にも注目の新作が!
東京モーターサイクルショー2023のヨシムラブースでは、3代目ハヤブサ用チタンフルエキの新作R-11Sq Rサイクロンなど、注目の新作が他にも展示されていた。
東京モーターサイクルショー2023のヨシムラブース。
ハヤブサ用チタンフルエキの新作R-11Sq Rサイクロン。
ブースの中央では、Yoshimura SERT Motulが世界耐久選手権(EWC)に参戦するためのGSX-R1000レーサー用「レーシングチタンR-11Sq Rサイクロン」を展示。
現代における最高峰レースで得られた技術は、F-TUNING HEADをはじめヨシムラ各製品に着実にフィードバックされている。
世界耐久選手権のGSX-R1000用「レーシングチタンR-11Sq Rサイクロン」。
近年4ミニにも力を入れているヨシムラではダックス125用マフラーとして、販売中のGP-MAGNUMサイクロンに加えて新作メガホンも投入予定。
デモ車にはメーターバイザーやアルミエンジンカバーなどでドレスアップも行われていた。
ダックス125もカッチョイイね!
通常はヨシムラオンラインショップ限定品となっているステンガード&ステンマジックのセットの特別販売も行われていた。
ステンガードは推奨わずか1μmの極薄塗膜が、熱によるステンレスエキパイの変色を防いでくれる魔法のようなコーティング剤。その効果や使い方はYoutube上のヨシムラTVで詳しく紹介。
ステンガード&ステンマジックも特別に販売された。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。※画像の一部を加工しています。
最新の関連記事(ヨシムラ)
デイトナ辻本車の雄姿が現代に完全復活! 2024年の第51回東京モーターサイクルショーでヨシムラが発表した「復刻パーツ企画」がついに本格始動! このプロジェクトは「純正互換パーツ」「ヨシムラパーツ」「[…]
歴史遺産・油冷GSX-Rを完調状態で後世に バイクブーム全盛期だった1980年代から、はや40年以上。とっくに純正パーツの供給も途絶え、そのまま埋もれ去っていく当時の車両は数知れず。その一方で「愛車と[…]
HAYABUSA X-1[2000]:世界最速マシンをレーサーレプリカ化 全日本ロードレース選手権で1999年に設立されたS-NK(Xフォーミュラ)に、ヨシムラは発売されたばかりのスズキGSX1300[…]
完成車メーカー「ヨシムラ」への布石 油冷エンジンを搭載するGSX-R750の開発に深く関わり、デビューイヤーの1985年から3年連続で全日本TT-F1クラスでチャンピオンを獲得したヨシムラ。すでにレー[…]
当時を思わせながらも高次元のチューニング ◆TESTER/丸山 浩:ご存知ヤングマシンのメインテスター。ヨシムラの技術力がフルに注がれた空冷4発の完成度にホレボレ。「この味、若い子にも経験してほしい![…]
最新の関連記事(モーターサイクルショー/モーターショー)
大型バイクのカスタムはクルーザーからアドベンチャーまで 台湾から世界的なカスタムビルダーも登場したこともあって、カスタムエリアでは車種を問わずさまざまな仕様が展開されていた。「SPEED&CRAFTS[…]
四輪のBMWと同様、モーターサイクルも高性能エンジン車とEVの二本立てで未来へ駆ける!! 10月30日(木)から11月9日の11日間、東京ビッグサイトに101万人にも及ぶ来場者が集り大盛況のうちに閉幕[…]
【ハイパーモタードV2/SP】史上最高のパワーと速さを身につけた新型ハイパーモタード 新型ハイパーモタードは、先代950からフルモデルチェンジがなされ、最新スペックのV2エンジン、そして新設計のモノコ[…]
「伝統と革新」をテーマに、カワサキの原点たるモデルと水素エンジンバイクを展示 10月30日(木)から11月9日の会期中に、101万にも及ぶ来場者を記録して閉幕した「ジャパンモビリティショー2025」。[…]
世界のバイクメーカーをビビらせた初のアドベンチャーモデル オールドファンならご存じのBSAはかつてイギリスで旋風を巻き起こしたバイクメーカー。ですが、1973年には一旦その幕を下ろし、2016年にイン[…]
人気記事ランキング(全体)
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
ナンバー登録して公道を走れる2スト! 日本では20年以上前に絶滅してしまった公道用2ストローク車。それが令和の今でも新車で買える…と聞けば、ゾワゾワするマニアの方も多いのではないか。その名は「ランゲン[…]
止められても切符処理されないことも。そこにはどんな弁明があったのか? 交通取り締まりをしている警察官に停止を求められて「違反ですよ」と告げられ、アレコレと説明をしたところ…、「まぁ今回は切符を切らない[…]
ライバル勢を圧倒する抜群のコーナリング性能 ’80年代初頭のヤングマシン紙面には何度もRZが登場しているが、デビュー当初のRZ250の実情を知る素材としてここで選択したのは、’80年11月号に掲載した[…]
寒暖差が大きくても着替えずに対応できる! ワークマンのヒーターウエア『WindCore(ウインドコア)』シリーズは、電熱ヒーターを内蔵する防寒アイテム。別売りのバッテリー(4900円)は必要だが、もの[…]
最新の投稿記事(全体)
瞬時に色が変化! 防曇シートに調光機能を加えた「e:DRYLENS」 SHOEIが、ライディング中のクリアな視界を実現するための新たなアイテムをリリースする。その名も「e:DRYLENS」は、ベースと[…]
ハイエンドユーザーに向けたスーパーフラッグシップは何と乗りやすく調教済み! 1980年代に入ると、ホンダが切り札としていたV型4気筒は世界のレースで圧倒的な強みを発揮、それまでの主流だった並列(インラ[…]
バイク乗りが作ったからこそ、痒い所に手が届く インカムの代名詞「B+COM(ビーコム)」でおなじみのサイン・ハウスが送り出した、SPICERR(スパイサー)ブランドの「ポケッタブル高圧洗浄機」。 20[…]
ひと目でわかる「コイツはタフだ」という機能美 アドベンチャーバイク(ADV)ブームが定着して久しいが、オーナーの悩みどころといえばやはり「タイヤ選び」だろう。オンロードの快適性は捨てがたいが、せっかく[…]
昔ながらの構成で爆発的な人気を獲得 ゼファーはレーサーレプリカ時代に終止符を打ち、以後のネイキッドの基盤を構築したモデルで、近年のネオクラシックブームの原点と言えなくもない存在。改めて振り返ると、’8[…]
- 1
- 2



















































