登場前から話題沸騰なカワサキの新型400cc4気筒「ニンジャZX-4R」。今年度最大の注目車といえるこの車両を、そのベース車と目される250cc4気筒エンジンの「ニンジャZX-25R」と比較してしまおう…というのが当企画の主旨。まだ4Rは正式発表もされていないが、ヤングマシンが掴んでいる情報を駆使し、世界最速でこの2台を比較してしまうぞ!
●文:ヤングマシン編集部 ●CG製作:SRD
官能スクリーミングサウンド! 復活の250cc直4が放ったインパクト
いつだ、いつ出るんだ!? とファンが絶賛ヤキモキ中の新型400cc4気筒車、カワサキ・ニンジャZX-4R。ヤングマシンではそう遠くない未来に公開されると睨んでいるのだが、いざ発表されたら誰もが気になりそうなのが「ZX-25Rとどう違うの?」だろう。ならば我々が現時点で得ているZX-4Rの情報をフルに活用して、この2台を世界最速で比較してしまおう……というのが当記事の主旨である。
そもそも、2020年9月に国内発売されたニンジャZX-25Rは、ここ数年でも最上級のインパクトを放ったニューモデルだった。世の誰もが「んなもん復活するわけねぇべ~」と考えていた250ccの4気筒。それをわざわざ完全新設計し、ワークスZX-10RRの思想を投入した本気の車体に搭載。上下方向のクイックシフターやトラコン、パワーモードなど、250ccとしては超オーバースペックな装備を与えた上でおねだん82万5000円から!(当時)。その英断、カワサキの男気に二輪業界は狂喜した。
そして、その走りも凄まじかった。最高出力は現行250cc最強の45psとは言え、特筆するほどの速さはない。しかし“速く走っている気分”は最高だった。レブリミットの17000rpmを目掛けて吹け上がるエンジンが放つ、泣き叫ぶかのような絶頂スクリーミングサウンド。その官能的な音を手の内で味わえる痛快さは、長らく忘れられていた250cc4気筒の魅力そのもの。現行250ccの多数派である並列2気筒には絶対に真似できないフィーリングに皆が撃ち抜かれ、かくして25Rは人気モデルへと駆け上がった。
そんな25Rの衝撃を単発で終わらせてはもったいない……とはメーカーだって考えていたはずで、現に登場直後から派生機種の存在はまことしやかに囁かれていた。それが3年半の月日を経て、400cc4気筒へと進化した「ニンジャZX-4R」としてストーリー第二章が始まるとなれば…。その発火点となった25Rは改めて偉大な1台だと痛感する。やっぱりカワサキは最高だッ!!
70psオーバー説アリ! 速さは4Rの圧勝だ
さて、ここからは大人気機種として定着したZX-25Rと、その派生機種であり、登場が待ち望まれているZX-4Rを具体的に比較していこう。まずは誰もが気になるエンジンスペック。排気量で150ccの差があり、出力にも大きな開きがあるのは間違いないところだが、4Rの最高出力はなんと70psに達し、またはそれを超えてくるかも…という驚きの情報がある(ヤングマシンでは既に記事化済み)。
対する25Rの最高出力は45ps(国内仕様。インドネシア仕様では50psを公称)。これも登場当時には「‘90年代の250cc4気筒・ZXR250と全くの同値だ!」と話題になった超ハイスペックではあるのだが、このクラスで25psもの差は圧倒的と言えるほど大きい。4Rのスピードに25Rが立ち向かうことはかなり難しいだろうし、数値はもちろん、体感でも25Rとはケタ違いの速さを4Rは見せつけるはずだ。
参考までに挙げておくと、25Rのノーマル車は最高速が約180km/h、0-400m加速で14秒台前半(ともにヤングマシンの過去の実測値)。4Rが70psオーバーだとしたら、最高速は200km/hを大きく超えるのはもちろんのこと、ゼロヨンも13秒台前半~12秒台は確実。+150ccの威力は低中速トルクの違いにも現れるはずで、4Rは街乗りや高速道路での扱いやすさも一枚上手かもしれない。
超ハイスペックには代償もある?!
逆に、少しだけ気になるのは車重だ。アメリカ・カリフォルニア州の大気資源委員会(=CARB)には、ほぼ4Rで間違いない「ZX400SP」という車両の排気ガス試験のデータが提出されている。このデータを計測する際、車重相当の負荷として掛けるEIM(Equivalent Inertia Mass=等価慣性重量)という数値があるのだが、これがZX400SPでは「300kg」と記載されているのだ。
ちなみに他カワサキ車のEIMは、公称車重が166kgのニンジャ400が260kg、同じく195kgのZX-6Rで310kg、215kgのZ900RSは330kgといったところ(数値はすべて北米仕様のABS車)。ニンジャ400で車重+94kg、6Rや900RSでは+115kgの負荷が掛けられており、排気量などの条件で調整されるようだが(詳細は調査中)、EIMをニンジャ400相当と仮定した場合、ZX400SPの車重は206kgとなり、400ccとしてはそれなりに重量級とも予想できるのだ。
とはいえ25R(日本仕様SE)の車重は184kgだから、さすがに20kgもプラスになるとは考えにくいし、そもそもZX-6Rより重かったら存在価値自体が霞んでしまう。さすがに200kg超えはないだろうが、排気量相応に車重も増える(後述する装備面の追加もある)のは間違いないだろう。
高出力に対応し、車体能力の強化もマストだ
お次は車体だ。4Rのベースとなるのは25Rでほぼ間違いないから、鋼管トレリスフレームや37mm径の倒立フロントフォーク、ホリゾンタルバックリンク式のリヤサスペンションといった、25Rの車体構成の多くは4Rにも踏襲されるはずだ。
とはいえ高出力化に対応して能力アップは行われるはずで、25Rではシングルのフロントブレーキがダブルディスク化されるのは間違いのないところ。そもそも25Rのフロントホイールには、ブレーキディスクがもう一枚追加できそうなボスが存在するのだ。
タイヤも25RのF:110/70R17・R:150/60R17からはサイズアップされるかもしれない。これも根拠があって、25Rのフロントホイールのリム幅は3.5インチと、本来なら120mm幅のタイヤに最適なサイズが採用されているのだ。先述のディスクのボスも含めて、25Rの開発時に発展性も見据えていたのだろう。
ちなみにリヤホイールのリム幅は4.5インチで、これは150mm幅のタイヤにベストマッチながら、160mm幅程度なら十分許容するサイズ。また、25Rのスイングアームは寸法に余裕があり、カスタムパーツメーカーのアクティブでは自社製ホイールのゲイルスピードに25R用の5.5インチ幅を設定し、180mm幅のタイヤを履かせたカスタム車も製作している。リヤタイヤも拡幅の余地は十分ありそうだ。
フレームは鋼管トレリスのため、ピンポイントで補強を加えることも難しくないだろうし、さらに400ccで70psという高出力は、25Rよりも緻密なエンジン制御=ECUの高精度化が要求される可能性がある。その場合、トラクションコントロールなどの電子制御もより高度なものになるかもしれない。
速さか楽しさか。似たようで異なる2台!?
何度も述べてきたとおり、4Rはかなりシリアスなミドルスーパースポーツとなる可能性が高い。そのスピードは25Rとは比較にならず、45psを公称しつつも実質60ps弱を発揮していた、全盛期の2スト250レプリカをも上回るかもしれない。装備や制御面でもかなりの充実ぶりを見せると思われるし、令和の世に史上最強のヨンヒャクが誕生することは間違いないだろう。
とはいえその反面、25Rの最大にして唯一無二の個性である“手の内で4気筒をブン回せる快感”は失われそうだ。レブリミット付近の絶叫フォーミュラサウンドを4Rで味わおうとすれば、公道では法外な速度域に突入してしまうだろうし、そういう意味では600や1000のキャラクターに大きく近づくと言える。“速くないけど面白い”という、大人のオモチャ的な魅力を備えた25Rとは正反対だ。
つまりは「本気のバイクと洒落の利いたバイク、どっちが欲しい?」が、4Rと25Rを選ぶ際の判断基準になるだろう。4Rは400クラスが久しく失っていた“速さ”を前面に打ち出してくるだろうし、そこに興味のない人なら、あえて25Rを選んだ方が楽しい場面は数多く訪れるはず。日本では車検がないことやカスタムパーツの豊富さも魅力だし、コロナ禍で新車の納期が見えない昨今だが、25Rは検索すると即納車もポツポツ発見できる。
…と、好き勝手に述べてきたものの、現段階ではただの都合の良い妄想に過ぎません(笑)。しかし、かつて国産4社が覇を競った400cc4気筒、それを最新技術で復刻すると果たしてどうなるのか…という興味は多くのライダーに共通するところのハズ。その正式発表は、我々は2月1日のアメリカが有力と見ているが…実際に全てが明かされたところで改めて詳細なレポートをお届けしたい。
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