2スト250にも勝てる? 史上最強400が令和に爆誕か

最高出力はなんと70psオーバー!? カワサキ「ニンジャZX-4R」に驚愕の新情報!!

登場が待ち望まれるカワサキの新400cc4気筒・ニンジャZX-4Rに驚愕の噂が飛び出した。その最高出力が70psを超えてくるというのだ! 自主規制(現在は撤廃)があったとはいえ、全盛期の400レプリカですらMAX59psだったのに…。本当ならば「さすがは漢カワサキ!」だが、はたして令和に史上最強400cc爆誕の可能性はあるのか? その実現性を検証してみた。


●文:ヤングマシン編集部

本当としたら…さすがカワサキ! そこにシビれる憧れるゥ

カワサキが2023モデルとして投入予定と目される、400cc4気筒のスーパースポーツに驚きの新情報が寄せられた。情報筋によれば「ZX-4Rの最高出力は70psを超えてくる。ひょっとしたら75psに届くかもしれない」というのだ!

それが本当なら“さすがカワサキ、最高だぜーッ!”と感涙にむせぶファンが続出だろうが、75psと言えば’80年代の750cc車に匹敵するレベル。排ガス規制が非常に厳しくなった令和の世に、400ccがそんな高出力を発揮できるものなのか? その答えは実車の登場を待つしかないので、ここではその実現可能性を検証してみたい。

ヤングマシンで制作したZX-4RのイメージCG。車体はZX-25RをベースにWディスク化や前後サスの性能アップ、リヤタイヤの拡幅などで強化され、電子制御や装備類も25Rに準じるか、それを上回るものになるだろう。外観デザインは25Rを踏襲か?(●CG製作:SRD)

’80年代のTT-F3は400ccで90psを発生!

参考になるのは、4スト400cc4気筒のワークスマシンが激闘を繰り広げていた、’80年代後半〜’90年代初頭の全日本TT-F3クラスだ(2スト250も参戦できたが、ワークス車の多くは4スト400だった)。その当時、セミワークスチームでエンジン開発に携わっていた技術者によると、市販車ベースの400cc4気筒から、15000〜16000rpmで80〜90psの最高出力を発生させていたという。

その高出力のポイントは、圧縮比を13以上と非常に高く保ちつつ、いかに高回転までエンジン回転数を上げられるかだったそうで、様々なパーツを試した結果、特に大きな効果を発揮したのはケーヒンFCRなどのフラットバルブキャブレター、そしてチタン材などを用いた軽量コンロッドだったとのこと。

FCRキャブの性能は、最新のフューエルインジェクションならば上回ることは難しくないだろう。さすがにチタンコンロッドはコスト的に厳しいと思われるが、スチールで極細に作り、浸炭熱処理で硬化させた浸炭コンロッドなら大幅な軽量化が図れるうえに量産も可能。つまり、30年以上前の400cc4気筒に80ps以上の出力をもたらしたレーシングパーツの能力は、現在なら市販車にも投入可能なのだ。

ヤマハが1986年の全日本TT-F3に投入したワークスマシン・YZF400。ゼッケン35を塩森俊修選手が、写真のゼッケン2を平塚庄司選手が駆った。右に並ぶ市販車のFZR400はこのYZFのレプリカであり、ベース車両でもある。

ヤングマシンでもおなじみ鶴田竜二さん(現トリックスター代表)が、1990年の全日本TT-F3タイトルを獲得したカワサキZXR-4。FCRキャブやハイカムなどで武装したZXR400のSP仕様・ZXR400Rがベースのプロダクションレーサーだ。

ZX-4Rのエンジンは完全新設計になる?

400ccで70ps超の達成には高圧縮比も必要とは先述したとおりだが、ZX-4Rのベースと噂される250cc4気筒のZX-25Rは、レギュラーガソリン対応もあってか11.5と圧縮比は高くない。これをどこまで高められるかもカギになりそうだが、現行の国産リッターSSはみな13以上の圧縮比を実現しているから、最新の制御を駆使すれば達成は可能だろう(ハイオク指定にはなるだろうが)。

また、当然ながら高回転化にはボア✕ストローク値の設定も重要。’90年代のカワサキ400レプリカ・ZXR400は57✕39mmだったから、このくらいの数値は必要になるはずだ。ちなみにZX-25Rのボア✕ストロークは50✕31.8mm。70psオーバーが本当だと仮定した場合、ZX-4Rのエンジンは圧縮比もボア✕ストロークもZX-25Rとはかなり設計が異なるはず…という予測も成り立つ。

50✕31.8mmのボア✕ストローク、11.5の圧縮比から45ps(ラムエア過給時は46ps)を発揮するZX-25Rのエンジン。400cc化となればボアは5mm以上、ストロークも10mm前後の拡大が求められるが、果たして25Rのエンジンにその余裕はあるのか?

250の車体に70ps超、これなら2スト250にも勝てる!?

もうひとつ重要なのは排ガス規制だ。これは触媒での処理がメインとなるから、単純な排気量換算で考えてみると、ユーロ4規制をクリアする現行型ZX-25Rが250ccで45ps。となれば、1.6倍の400ccでは72psは可能という計算にはなる。

もちろん、今後発売される車両はより厳しいユーロ5規制のクリアが必須で、現状では未対応のZX-25Rもユーロ5仕様が登場するはずだが、2022年にモデルチェンジしたZ900RSやニンジャ400では最高出力を落とすことなくユーロ5に対応したカワサキだけに、ここはZX-25Rでも同様の処置を期待したいところ(ニンジャ250はユーロ5対応で37→35psに下がってしまったが…)。

250ccよりボアの大きくなる400ccでは、火炎伝播距離が長くなるので燃焼効率は厳しくなるし、先述のように高圧縮化によるノッキング対策も必要。ZX-25RよりECUを高度化するなど、エンジン制御能力のアップは必要かもしれないが、高出力化も規制クリアも、超えるべきハードルが異常に高いという感じではなさそうに思える。「ZX-4R・70psオーバー説」は決して夢物語ではなさそうだ。

これで噂どおり車体がZX-25Rと共用なら、250のボディに70ps超のエンジンを積むZX-4Rは、恐るべき身体能力を持つ1台になるだろう。かつての2スト250より間違いなく速いだろうし、よほどの高速コースでもないかぎり、平均的なスキルのライダーなら1000や600より速く走れるのではないだろうか。カワサキが2023年に放つ1台は、史上最強のヨンヒャクとなる可能性が高い。

登場は大阪/東京モーターサイクルショー? “RR”もあるか

最後に登場時期について。ヤングマシンでは2022年11月の伊ミラノショー(EICMA)と睨んでいたが、ご承知のとおり同ショーでのカワサキは、電動や水素エンジンなどカーボンニュートラル系の出展が中心。ZX-4Rは影も形もなかった(申し訳ありません)。となれば次に可能性が高いのは、2023年3月に開催される大阪&東京モーターサイクルショーだろう。

北米では既に車両識別番号を申請済みという話もあり、海外でも販売されそうなZX-4Rだが、400ccという排気量はやはり日本独特のもので、販売の中心も日本市場となるはず。WEBなどで先行発表される可能性もあるが、ZX-25Rが2019年10月の東京モーターショーでアンベールされたように、ZX-4Rも日本でのワールドプレミアに期待したい。

また、先にインドネシア&タイで新型が発表されたZX-25Rには、前後サスペンションを高性能化した上級バージョン「ZX-25RR」が登場しているから、ZX-4Rも“RR”が同時発表される可能性は高い。ホンダがCB400SF/SBの生産を終了したことで、400ccの4気筒車としても世界唯一の存在となるZX-4R。その登場を期待して待ちたい!

2022年10月にインドネシアで発表された新型ZX-25R。外観上の大きな違いは大型化され、リヤエンドまで延長されたマフラーとLED化された前後ウインカーなど。写真は上級仕様のZX-25RR。

メーターは現行のアナログ回転計+液晶画面からフルカラーTFT液晶へと進化し、スマホ接続機能も追加。拡大されリヤエンドまで伸びたマフラーはZX-4Rとの関連性も予感させる!?


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