ホンダ「GB350」が2022年の販売台数ランキングで1位に。さらに、生産終了したヤマハ「SR400」やロイヤルエンフィールド「クラシック350」も上位に食い込んだ。やっぱり“バイクらしいバイク”が愛されている! というわけで、普通二輪免許で乗れるネオクラシックモデルの歴史を掘り起こし、復活登場してほしい’80~’90年代のネオクラバイクを選んでみた。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
GB350は受注一時停止中だが、ロイヤルエンフィールドは供給順調
中型クラス……というか普通二輪免許で乗れる空冷ネオクラシックバイクが大人気だ。ホンダはインドで「ハイネスCB350」として発表したモデルを日本仕様に最適化して「GB350」として発売。さらにロイヤルエンフィールドは「メテオ350」という空冷単気筒のカジュアルクルーザーに続き、「クラシック350」「ハンター350(日本では2023年に発売予定)」と矢継ぎ早にニューモデルを投入している。
2022年の販売台数ランキングではGB350が堂々の1位に輝き、Z900RSやレブル250といった他クラスの強豪をしのぐ人気となっている。これは、シンプルで“バイクらしいバイク”のスタイリングを実現したことと、シンプルゆえのリーズナブルな価格が功を奏しているのだろう。
この人気ぶりを見ると、他にもっとライバルが登場してもいいのでは、と思わずにいられない。
そんなわけで、国産でかつて存在したネオクラシックスタイルのバイク、特に250~400ccの中型クラスのモデルに注目して、現代に登場を熱望したい名車(珍車?)を5車ほど選んでみた。読者諸兄には異論もあることだろうが、やはり空冷エンジン搭載モデルを中心としたチョイスになる。中には4気筒も……?
1.カワサキ「エストレヤ」
W800のプレミアム仕様として登場したメグロK3が人気となっている今、かつて単気筒メグロとして知られたメグロジュニアシリーズ、その後継でカワサキにメグロが吸収されたのちに生まれた「カワサキ250メグロSG」をデザインベースとして1992年に登場したエストレヤは、もっとも話題にしたくなるバイクといえよう。
ほぼ垂直に立ったシリンダーとロングストローク設定(66×73mm)の250cc単気筒エンジンはエストレヤのデザインの中核となっており、特にキャブレター車時代のモデルはサドルシートを採用してメグロジュニアシリーズっぽい雰囲気を強く宿していた。途中からダブルシートのエストレヤRSや、フロントにドラムブレーキを採用したカスタムなどもラインナップに加わり、2007年のFI車からはダブルシート版のみのラインナップに。
そして2017年に発売されたファイナルエディションをもって生産終了。単気筒メグロの系譜は再び途絶えることになる。
とはいえ、海外ではW250の名で生き残っていたり、W175というスモール版が存在したりすることから、カワサキがエストレヤの存在を捨て去ってしまったわけではないのは明らか。となれば、メグロK3の誕生に倣って「メグロS3」とでも名付けたくなるようなモデルの登場にも期待がかかる。お待ちしてますよ、カワサキさん!
2.スズキ「SW-1」
エストレヤと同じく1992年に登場したスズキのフルカバード・レトロバイク。1989年に東京モーターショーで参考出品されたモデルがデザインベースとなっており、通常の燃料タンク位置やボディ左右に収納スペースを備えるなど、車体も独特な作り込みだった。エンジンはDR250系のSOHC単気筒で、メンテナンスフリーのベルトドライブや、靴の甲を傷めないシーソー式チェンジペダルも採用している。
専用設計部品だらけのチャレンジングなモデルだったこともあり、価格は68万8000円と、当時のスズキ製レーサーレプリカ「RGV250Γ」のスタンダードモデル(62万5000円)よりも高かった。これが災いしたこともあって、初年度生産からモデルチェンジもなく2年間でカタログ落ちの憂き目に遭っている。
このモデルが現代に復活することはまずないと思われるが、今でも街で見かけると思わず見入ってしまう独特のデザインは、スズキのデザインの中でも東京タワーフレームのGSX400Xインパルスと並ぶ(?)金字塔と言えなくもない……かもしれない。
3.ヤマハ「SRV250」
エストレヤやSW-1と同時期に発売されたモデルで、SR400/500のようなクラシカルなスタイリングに空冷Vツインエンジンを搭載したことからこのようなネーミングに。ヤマハらしい流麗なボディが魅力だが、当時のメディアで「ベストハンドリングマシン」に選んだ雑誌もあったように、実は優れた操縦性も併せ持っていた。
ツインキャブ化でパワーアップしたビラーゴ250ベースの空冷Vツインエンジンは、ボア×ストロークが49×66mmというロングストローク設定。当時のドゥカティ916(94×66mm)と同じストローク量ということで注目していたライダーもいたとかいなかったとか。27psと必要十分なパワーとテイスティなエンジン特性が支持され、のちにイタリアンテイストのデザインとされた「ルネッサ」も登場している。
車体はオリジナルのダブルクレードルフレームに前後18インチホイールを組み合わせる。SR400/500よりもリヤタイヤがワンサイズ太く、前後とも90%扁平(SRは扁平無し)だった。
優れたデザインは現在でも評価が高く、軽二輪クラスにSRV250のようなモデルが復活してほしいというヤマハファンも少なくないはず。もしくはXSRシリーズの兄弟車として「XSR250」なんていかがでしょう、ヤマハさん?
4.ホンダ「CB400FOUR」
2022年秋に生産終了となったホンダのベストセラーネイキッド「CB400スーパーフォア」をベースに、空冷エンジン風のフィンを刻み、4本出しマフラーを与えたネオクラシックモデル。当時は乾燥重量192kgと重くなった車重(CB400SFは174kg)などからあまり高い評価は受けなかったように記憶しているが、4本出しならではのサウンドや、アルミリムのスポークホイール+太めのタイヤというスタイリングなど、現代に蘇ったとしたら人気が出そうな要素が満載だ。
登場したのは1997年と比較的新しく、翌1998年にはカラーチェンジも受けている。水冷4気筒エンジンということで性能は53ps/10000rpmと申し分なく、現代のCB1100よりも気軽に乗れるサイズ感と本格的なデザインという組み合わせは、「登場する時期が早すぎたか……」と思わずにはいられない。
この1997年の4月には消費税が5%へと引き上げられ、CB400FOURの発売日は4月21日。その後、2001年にXR400ベースの単気筒エンジンを搭載したCB400SSなどが発売されたが、結局のところヤマハSR400の牙城を崩すには至らなかった。やはりホンダならではのオリジナリティを備えた4気筒のCB400FOURが、今こそ待ち望まれている?! スーパーフォアの後継機にも期待!
5.ホンダ「GB400ツーリストトロフィーMkII」
1985年に登場したGB400/500シリーズは、上記のモデル群よりもやや古く、消費税法が成立する以前のモデルとなっている。ホンダの当時のリリースには「伝統的なスタイルを継承しながら、単気筒エンジン独特の力強い走りの味が楽しめる」といった文言が並び、ネイキッドの「GB400/GB500ツーリストトロフィー」と、カウルを装着した限定仕様の「GB400ツーリストトロフィーMkII」がラインナップされた。
そのスタイリングや400/500という排気量から、SR400/500をライバルと想定してリリースされたことは明らかだったが、発売後には1987年6月にGB400TT特別仕様車がラインナップされただけで市場から姿を消している。
とはいえ、SR400/500も常に販売が好調だったわけではなく、GB400/500も粘り強く生産を続けていればしっかりとブランドを築くところまでいっていた可能性もある……ような気がしないでもない。
GB400/500についてそのまま現代への復活を望むのは難しいかもしれないが、GB350にそのDNAを受け渡すことを期待したい。カウリング付きの「MkII」を手本としたカフェレーサースタイルは、モデルバリエーションに加わってもいいのでは?
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