
ホンダの125cc横型エンジンを積んだ原付二種区分のモデルは、ダックスの追加で今では5機種のラインナップ。同じエンジンとはいえ、それぞれ固有の狙いと特徴を備えている。本記事では、バイクの車両開発に携わって30年という大ベテランに全5モデルを試乗してもらい、その違いと特徴について語ってもらった。
【匠:キャリア30年のベテラン2輪開発者】顔や名前は伏せるが、某社で30年以上に渡って車両開発に携わる大ベテラン。今回はダックス125を筆頭に、他の横型125にも試乗してもらった。
●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ホンダモーターサイクルジャパン
エンジンがほぼ共通な5台。見た目と好みで選んでいい【ホンダ原付二種 匠の試乗インプレ】
今回集められた5機種、試乗するのはほぼ初めてなんです。で、あらためて感じたのは、昨今の125ccクラスは何をやるにしても必要にして十分だということ。安定性もパワーも安心感もあるから、国道や都道府県道の実勢速度に対応できる。大きなバイクに劣らない楽しみがあるんですよね。
5台ともキャラクターや味付けの違いはありますが、エンジンの基本設計は共通なので、総じて実用的ですし燃費も優秀です。あとはスタイリングの好みや使い勝手で選んでいいでしょうね。
ホンダ原付二種 匠の試乗インプレ:グロム/モンキー125/ハンターカブ
ちょっと辛口になりますが、この中で立ち位置がやや不透明に思えたのがグロムです。初代は’13年にデビューして、当時は原付二種でスポーツするぞ! っていう意気込みがあった。でも、’18年にCB125Rが登場したことで、スポーツしたり長距離を乗るならCBの方がいいってことに。グロムでレースに出る人もいますが、一般ライダーがどんな使い方をすればいいのか、いまいち分かりにくいですね。
一方、同じ12インチホイールのモンキー125は、見た目に使い勝手が悪そうなんですが、乗ってみたらけっこう気に入りました。キャラとしては街乗りに特化していて、荷物を積むには工夫が必要ですけれど、シートの座り心地が優秀。車体も割りとしっかりしているし、だからトコトコと出掛けたくなる。具体的には片道50kmぐらいかな。山間部へ走りにいって、カフェでもあれば寄って帰ってくる。レインスーツをウエストバッグに忍ばせて、なんて楽しみ方が見えてきますよね。
ハンターカブも、モンキー125と同様に使ってみたいシチュエーションがパッと思い浮かぶ。奥多摩周辺のフラットなダートに分け入って、積んできたバーナーでお湯を沸かしてコーヒーを淹れたりね。昔はそういう遊び方をよくしていたんです。エンジン特性も、トコトコと流すのに合っているので飛ばしたくならないし、デイキャンプとか似合いそうですよね。
ホンダ原付二種 匠の試乗インプレ ダックス125:フレームの費用は想像以上。芯の通ったしっかり感あり
さて、ダックス125です。この中でフレームが特殊であることは見た目にも明らかなんですけど、車体が一番しっかりしている。鋼板プレスのT字型バックボーンのおかげなのか、はたまた要件にタンデムが含まれていたからなのかは分かりませんが、直進時も旋回時も安定していて、しかもグロムと同等レベルのスポーツ性もある。
安定性で言えば、前後17インチのハンターカブより上だと感じるほどです。もちろんダートでなら逆転するでしょうけど、舗装という環境ならグリップがしっかりしているダックスの方が高いですね。フレーム内部のレイアウトを見ると、タンクがライダーの真下にあって、しかも低い位置にある。ホイールベースはグロムと同じ1200mmなんですが、小径の12インチホイールでありながら安定性に優れるのは、この重心位置も影響していそうですね。
ダックスのフレームは、プレス成型と溶接の技術が素晴らしいですね。昔のダックスは、おそらく一般的な燃料タンクと同じシーム溶接だったと思うんですが、新型は部材同士を突き合わせて溶接している。板厚が1.6mmと薄いので歪みが出やすいですし、しかもこれだけの長さを溶接するとなると時間が掛かるので、それがそのままコストに反映されます。
燃料タンクなら仮に熱で歪んでセンターが1mm程度ズレたとしても、フレームにラバーマウントで載せているので特に問題はないのですが、ダックスの場合は骨格となるフレームですからね。もしセンターがズレてしまったら前後輪の整列が出なくなるので、そこの精度も求められるわけです。果たしてどういう治具を使ったのか興味は尽きないですね。
【匠ポイント1:長い溶接ビードも歪ませない技術の妙】部材が薄いほど熱を加えると歪みやすい。「おそらく自動溶接だとは思うんですけど、それでもここまできれいにビードを揃え、なおかつ精度を出してきた技術は素晴らしい」と匠。
【匠ポイント2:ヘッドパイプへ繋がる豊かな面構成の美】ヘッドパイプの径に沿わせて絞り込みつつ、パイプの上端に向けては反り上がる。フレームのネックまわりは非常に凝った面構成を持つ。
このフレーム自体はかなりコストが掛かっていますが、ボディを形成する樹脂パーツが不要になるので、トータルではプラマイゼロに近付くのかもしれません。そうした数々のせめぎ合いの末、スーパーカブシリーズのしなやかなアンダーボーンとは対照的な、芯の通ったしっかりとしたフレームが完成したんでしょうね。
例えばグロムの場合、この速度のままコーナーに入ったらどうなるんだろうかって不安があるのに対し、ダックスはフィーリングが一定なので恐くないんです。ライダーにとって車体の反応が想像の延長線上にあるかどうかは重要で、ダックスはそれを上回っているので優秀だと感じます。
モンキーとは違いダックスは海が似合いそうなので、鎌倉あたり、もしくは三浦半島をグルッと回ってくる。なんていう使い方がいいですね。
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