今も絶大な人気を誇る’70年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はカワサキの「500SS マッハIII」をあらためて紹介する。まずはこの名車の特徴と歴史について振り返ろう。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●取材協力:トリプルフィールド
- 1 世界最速を目指したカワサキ車の原点【500SS マッハIII】
- 2 カワサキ 500SS マッハIII 絶版中古車の現状
- 3 カワサキ 500SS マッハIIIの変遷
- 4 中古相場は200~500万円:前期型だけではなく、後期型も上昇中
- 5 [連載] プロに学ぶ’80s国産名車メンテナンスに関連する記事
- 6 ‘70s国産名車 ホンダ CB750フォア 完調メンテナンス【古さの割に決して扱いは難しくない】
- 7 ‘70s国産名車 ホンダ CB750フォア 完調メンテナンス【補修部品に関する心配はほとんど不要】
- 8 ‘70s国産名車 ホンダ CB750フォア 再見【世界を席巻した量産初の並列4気筒車】
- 9 ‘70s国産名車 カワサキ 900スーパー4 Z1 完調メンテナンス【識者インタビュー:お客さんの夢を実現したい】
- 10 ‘70s国産名車 カワサキ 900スーパー4 Z1 完調メンテナンス【補修部品は潤沢だが、品質には要注意】
- 11 ‘70s国産名車 カワサキ 900スーパー4 Z1 再見【驚異の動力性能と流麗なスタイルで世界を席巻】
- 12 ‘70s国産名車 カワサキ 500SS マッハIII 完調メンテナンス【識者インタビュー:好調を維持するのは決して難しくない】
- 13 ‘70s国産名車 カワサキ 500SS マッハIII 完調メンテナンス【補修部品は潤沢だが、品質には要注意】
- 14 人気記事ランキング(全体)
- 15 最新の記事
世界最速を目指したカワサキ車の原点【500SS マッハIII】
カワサキが2輪事業に本腰を入れ始めたのは、他の国産3社より10年以上遅い’60年代中盤からだった。にも関わらず、同社は’70年代以降の長きに渡って“世界最速”の称号を保持してきた。その原点となったモデルが、スチール製ダブルクレードルフレームに2スト並列3気筒を搭載する、’69年型500SSマッハIIIである。
当時としては驚異的なリッター当たり120psを実現したこのモデルは、既存の大排気量車を凌駕する200km/hをマーク。カタログに記された最高速は、124mph≒198.41km/hだったものの、量産試作車は208km/hを実測していた。
ただしそういった数値は、同年にデビューした量産初の4スト並列4気筒車、ホンダCB750フォアも同等だったのである。とはいえ、2ストならではの圧倒的な加速感や車重の軽さ、価格の安さなども追い風になり(乾燥重量/初代の価格は、マッハIII:174kg/29万8000円、CB750フォア:218kg/38万5000円)、マッハIIIは絶大な人気を獲得。
’72年以降は兄弟車の750/350/250SSも加わり、カワサキが生み出した2ストトリプルシリーズは世界中のライダーを魅了していくこととなった。
カワサキ 500SS マッハIII 絶版中古車の現状
もっとも、現役を退いて40年以上が経過した現在、マッハシリーズを語るとなったら、(真っすぐ)走らない、止まらない、曲がらない…という言葉が出て来ることが少なくない。今回の取材に協力してくれたトリプルフィールドの稲村隆寛さんは、そういった世間の評価をどう考えているのだろう。
「そう感じるなら、間違いなく整備不良車でしょうね(笑)。きちんと整備されたマッハシリーズは、決して危険な乗り物ではないですから。ただし500SSの’69~’71年型に限っては、エンジン特性がちょっとシビアで、フロントフォークとブレーキが頼りないのは事実です。でもまあ、それは’72年型以降と比較しての話で、各部のコンディションが良好で、オーナーがこのバイク特有の扱い方を理解していれば、500SSの前期型でも、現代の路上で普通にツーリングを楽しめますよ」
稲村さんの言葉に対して、読者の中には違和感や疑問を持つ人がいるかもしれない。事実、同店を訪れるマッハシリーズオーナーも、初来店時は世間の噂を真に受けているケースが多いのだが、稲村さんがレストアした空冷2スト並列3気筒に乗ると、あまりの乗りやすさに目からウロコ…という状況になることが珍しくないそうだ。
カワサキ 500SS マッハIIIの変遷
500SSの変遷は非常にややこしく、何年型までを前期、何年型からを後期と呼ぶかは、人によって異なる。まずフロントまわりに注目すると、φ34mmフォーク+ドラムブレーキのH1/H1Aが前期、φ36mmフォーク+ディスクブレーキのH1B以降が後期なのだが、外装の雰囲はH1~H1Cが前期(ただしエグリタンクはH1のみ)、H1D以降が後期。
そして点火に注目すると、H1/H1A/H1CがバッテリーCDI(欧州仕様はポイント)、H1Bはポイント、H1D以降はマグネトーCDIを採用。また、500SSの後継として’76年に登場したKH500(A8)は、エンジンのラバーマウント化に加えて、1down4up式シフトや3系統ヒューズなどを導入した。
なお500SSの販売台数に明確な手応えを感じたカワサキは、’72年になると3種の2ストトリプルをイッキに追加。750SSは’75年、350SSは’73年(後継車の400SSは’79年)、250SSは’80年まで生産が続いた。
中古相場は200~500万円:前期型だけではなく、後期型も上昇中
500SSの価格はここ数年で急騰。一昔前ならフタケタ万円台がゴロゴロしていた後期型も、最近はコンディションが良好なら200万円以上が普通になりつつある。ただしシリーズ全体で見るとタマ数はかなり豊富で、中古車検索サイトでは約30台、ネットオークションでは40台以上が確認できた。なお750SSの相場もほとんど同じ。
[連載] プロに学ぶ’80s国産名車メンテナンスに関連する記事
※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
人気記事ランキング(全体)
日本で登場したときの想定価格は60万円台か カワサキはタイに続き北米でも「W230}を発表。空冷233cc単気筒エンジンはKLX230のものをベースとしているが、レトロモデルにふさわしいパワー特性と外[…]
ヤマハの3気筒スーパースポーツがついに登場! ヤマハは欧州でR9、北米でYZF-R9を発表した。車名は仕向け地によって『YZF』を省略しているようだが、基本的には(細かな違いはあるとしても)同じマシン[…]
ライダーを魅了してやまない「ハイパーVTEC」 CB400SF(スーパーフォア)に採用されていることでも有名な、バルブ制御システム「ハイパーVTEC(HYPER VTEC)」。この口コミを検索してみる[…]
燃料タンクも新作! サスペンションカバーやディープフェンダーも特徴 ホンダは、昨年11月に車両の姿を公開し、後日国内で発売予定としていた新型モデル「GB350C」をついに正式発表、2024年10月10[…]
1441cc、自然吸気のモンスターは北米で健在! かつてZZ-R1100とCBR1100XXの対決を軸に発展し、ハヤブサやニンジャZX-12Rの登場からのちにメガスポーツと呼ばれたカテゴリーがある。現[…]
最新の記事
- ヤマハの新型モデル「YZF-R9」日本発売は2025年春以降! ウイングレット装備の3気筒スーパースポーツ
- 【正式発表間近】カワサキが「W230/メグロS1」「KLX230/S/SM」の発売時期を明らかに!
- 【SCOOP特別編】ホンダ新型CB400は…こうなる!! プロがその姿を大胆予想〈③装備&デザイン編〉
- ホンダ新型「CT125ハンターカブ」登場! 一部仕様変更とニューカラーを設定して12/12発売
- ホンダ新型「GB350C」は66万8800円で10月10日発売!! クラシカルな意匠でマフラーやシートの造りも異なる
- 1
- 2