今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は「ヤマハ TZR250(3MA)」について、このマシンに詳しいバイクショップ・モトプランの川原末男氏に話を伺った。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 ●取材協力:モトプラン
- 1 ヤマハ TZR250(3MA):登場時の衝撃は今でも明確に記憶しています
- 2 ヤマハ TZR250(3MA):オーナーになったら、どんなことに気を遣えばいいのだろう。
- 3 ヤマハ TZR250(3MA):オススメの年式は’90年型のスタンダード
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ヤマハ TZR250(3MA):登場時の衝撃は今でも明確に記憶しています
モトプランにはTZRシリーズ全車を新車で販売した実績があり、現在も全車の整備を日常的に行っている。ただし、川原さんが強い思い入れを抱いているのは3MAで、中古車市場で人気が上昇する以前から、このモデルの再生に積極的な姿勢を示していた。
「やっぱり3MAは、登場時のインパクトが強烈でしたからね(笑)。当社ではそれ以前からTZRを数多く販売していて、1KTではレースにも参戦しましたが、3MAが手元に来て各部を分解してみると、そこまでやるのか! と驚くことだらけで、市販レーサーTZ以上と思える要素も多々ありました。そして実際に試乗してみると、後方排気ならではの音は最高に気持ちがよかったし、車体の信頼性は抜群でした。だからこそ、きちんとした姿で後世に残さなくては、と私は思ったんです」
もっとも3MAには、乗りづらい、調子を崩しやすい、という説が存在し、最大のライバルであるホンダNSR250Rの牙城を崩せなかったため、世の中には失敗作と呼ぶ人もいる。
「NSRに及ばなかったのは事実ですが、少なくとも’89年の前期型はかなりの台数が売れたので、失敗作ではないでしょう。乗りづらさに関しては、確かに1KTや2XTほどフレンドリーではないですが、始動やスロットル操作のコツを習得すれば、日常的な使用で不満は感じないはずです。逆にちょっとした乗りづらさは、コントロールする楽しさにつながる…という見方もできますからね。調子の崩しやすさは、現役時代はオーナーの知識や経験不足、近年は経年変化が原因で、各部の整備で本来の調子を取り戻せば、以後の維持は難しくないと思いますよ」
ヤマハ TZR250(3MA):オーナーになったら、どんなことに気を遣えばいいのだろう。
「2ストオイル(同店の推奨品はヤマハ純正のオートルーブスーパーRS)の補充とマメに乗ること、異音が聞こえたら無理に走らないことくらいです。旧車好きの中には耐久性を考慮して、なるべくエンジンを回さない姿勢の人がいますが、2ストの場合はそれが調子を崩す一因になります。燃焼室や排気バルブ周辺にカーボンを溜めないこと、排気管に残った未燃焼ガスを除去することを意識して、月に1度くらいのペースでいいので、高速道路できっちり高回転域を使ってほしいですね」
当記事を読んで3MAに興味を抱いたライダーがいたら、川原さんはどんなアドバイスをするのだろうか。
「まずは、私に相談してください…でしょうか(笑)。と言うのも最近の当社では、購入したばかりと言う3MAの入庫が増えているのですが、それらの多くはコンディションが非常に悪く、車両代金と同等以上の修理費用がかかることが珍しくないんです。だったら、当社が仕上げた整備済みで100万円前後の中古車を買ったほうが、出費は確実に抑えられるんじゃないかと。ちなみに、実際に調子が悪い3MAを持ち込んだオーナーさんと話をしてみると、“乗りづらくて調子が悪くても、旧車だからこんなものかと思った”という言葉が出てくることが多いのですが、こんなものかどうかの判断は、新車時、あるいは好調車の性能を熟知している人に、任せるべきだと思いますよ」
ヤマハ TZR250(3MA):オススメの年式は’90年型のスタンダード
素人目線では上級仕様の’90年型SPに惹かれてしまうものだけれど、川原さんがオススメする3MAは、’90年型のスタンダードだという。
「既存の1KTや2XTと比較すると、’89年に登場した3MAの前期型はかなりスパルタンなキャラクターでした。でも’90年の後期型では、SPとの差別化を図ろうという意図があったようで、スタンダードはずいぶん乗りやすくなっているんです。
と言っても、牙を抜かれたような気配は微塵も無くて、十分にスポーツライディングは楽しめるんですけどね。なお生産台数が1000台のSPは、まともな個体がほとんど残っていませんし、専用設計パーツが多くて整備に手間がかかるので、私自身は大好きですが(笑)、普通のお客さんにオススメはしていません」
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