今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はヤマハのTZR250(3MA)をあらためて紹介する。まずはこの名車の特徴と歴史について振り返ろう。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 ●取材協力:モトプラン
- 1 革新的な機構を導入したヤマハならではの力作【ヤマハ TZR250(3MA)】
- 2 ヤマハ TZR250の変遷:3種のパラレルツインと、時代の流れに従ったVツイン
- 3 ヤマハ TZR250(3MA) 絶版中古車市場の現状
- 4 中古車相場は60~200万円:100万円以下で好調車は入手できない?
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革新的な機構を導入したヤマハならではの力作【ヤマハ TZR250(3MA)】
既存のRZ/RZ-Rとは方向性が異なる2ストレーサーレプリカとして、’85年から発売が始まったTZR250/Rシリーズは、’85~’87年型(1KT)/’88年型(2XT)/’89~’90年型(3MA)/’91~’99年型(3XV)の4種に大別できる。
この中で最も評価が難しいのは、ヤマハにとって最後の2ストパラレルツインとなった“サンマ”こと3MAだろう。現役時代は強敵のホンダNSR250Rを打ち負かすことができなかったものの、独創的な前方吸気/後方排気を採用するこのモデルは、昨今ではシリーズ随一…と言いたくなるほど、多くのライダーの支持を集めているのだから。
ヤマハ TZR250の変遷:3種のパラレルツインと、時代の流れに従ったVツイン
’80年に発売したRZ250/350と、その後継として’83年に市場に投入したRZ250/350Rで、2ストロードスポーツ市場を牽引してきたヤマハは、’85年になるとサーキット志向を大幅に高めたレーサーレプリカとして、TZR250=1KTを発売。このモデルは爆発的なセールスを記録し、’88年には2XTに進化を遂げることとなった。
そして’89年になると、究極の2ストパラレルツインとして、全面新設計の3MAがデビューしたものの…。当時のクラストップは、’88年型で圧倒的な人気を獲得したホンダNSR250Rが堅守。3MAは’89年の後期型で倒立フォーク化などの仕様変更を行い、SP仕様を追加したが、残念ながらNSRの牙城は崩せなかった。
そういった状況を経て、’91年から発売が始まった3XVは90度Vツインを採用。すでにレプリカブームがピークを過ぎていたため、大ヒットには至らなかったが、SPレースや鈴鹿4耐ではNSRを打ち負かす強さを発揮した。
ヤマハ TZR250(3MA) 絶版中古車市場の現状
今回の取材に協力してくれたモトプランは、3MAの現役時代をよく知るだけではなく、中古車市場での人気が高まる前から、3MAの再生に力を入れてきたショップである。同店の代表を務める川原末男さんは、このモデルの現状をどう感じているのだろうか。
「最近になって中古車価格が高騰している一方で、補修用の純正部品は欠品が目立ちますし、リプロパーツも決して多くはありません。しかも3MAは、いろいろなパーツで細かな仕様変更が行われたうえに、’89年型と’90年型、’90年型SPで、互換性のない部品が数多く存在するので、そういった事情を把握していない人が、素性が不明の中古車を入手して本来の調子を取り戻すのは、なかなか難しいと思いますよ」
初っ端から厳しい話になってしまったけれど、そのあたりは3XVにも通じる話で、補修部品の欠品が目立つことは2XTも同様である。逆に言うならTZRシリーズでレストアが比較的容易に行えるのは、生産台数が非常に多く、後にR1-Zにエンジンが転用された初代1KTくらいなのだ。
「ただし当社の場合は、補修部品をある程度ストックしていますし、レストアの手法も確立しているので、時間とお金がかかっていいなら、たいていの問題は克服できます。もっとも、一昔前のTZRシリーズの中古車価格を知っている人に修理費用を説明すると、“エッ、そんなにかかるの?”と驚かれることが少なくないですね(笑)」
川原さんの言葉に補足をするなら、修理費用の高額化は、ベース車の価格高騰、全体的なコンディションの悪化、経年変化に対応する部品の減少などが主な原因である。もちろん今後を考えると、そういった状況が好転する可能性は皆無だから、3MAを含めた2ストレプリカの購入を考えている人は、早めの決断をしたほうがいいだろう。
中古車相場は60~200万円:100万円以下で好調車は入手できない?
NSR250Rほどではないものの、近年のTZR250/Rシリーズの価格は着実に上昇中。最も高額なモデルは3MAのSPと3XVのSPRで、この2台が中古車市場に出てくることはほとんどなく、良質な車両はマニアの間で取り引きされている。なお一昔前は20〜30万円台の中古車が数多く存在した1KTも、最近は50万円以上が一般的になっているようだ。
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