ハンターカブで高速を走る! そんな夢物語が現実に!? 高速道路上の区分が「軽自動車」となるサイドカーなら、そんな行為も可能なのだ! オートスタッフ末広から、7月1日に販売が開始されたCT125ハンターカブのサイドカー「Uedi(ウェディ)」に緊急試乗だっ! さっそく、料金所へと向かってみると…?
●文:ヤングマシン編集部(谷田貝洋暁) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:オートスタッフ末広
【ドライバー:谷田貝洋暁】本誌ハンターカブ実験担当として渡河性能実験に続き、今回のサイドカーでの高速道路走行実験にも抜擢されたフリーライター。無理/無茶/無謀の3ない運動の旗手。
【パッセンジャー:難波祐香】ご存知、バイク声優のにゃんばちゃん。実はサイドカーレースのパッセンジャー経験者でこの企画の適任者であるが、そんな経歴を我々が把握したのはロケ当日だ。
100万円ちょっとで憧れのサイドカーの世界へ!
「それ、ナンシーシー!?」。予想通りというかなんというか、高速道路の料金所でETCカードを手渡したところでおっちゃんに待ったをかけられる。
「125ccです! が、側車付きです」と、あらかじめ用意していた回答を間髪入れず投げ返す。おっちゃんが疑問に思うのは当たり前。なんせ僕が跨っているのはCT125ハンターカブ。つまりは125ccで原付二種クラス。本来なら高速道路に入っちゃダメなバイクである。ところが不思議なものでサイドカー、正式には「側車付き二輪」となると話は別だ。このあたりは非常に複雑なので(正直、白黒ハッキリしない部分もある)、結果だけ知りたいせっかちなアナタは3段落先まですっ飛ばしてもらってもかまわない(笑)。
詳しく説明すればこのウェディ、サイドカーなので免許的にはバイク扱いで、二輪免許が必要になる(トライクは普通自動車免許)。ただハンターカブはそもそも125ccでクラッチ操作もないので、このウェディはAT小型限定普通二輪免許で運転可能とのこと。
また車両区分に関しては、「側車付き二輪」で高速道路上の区分は「軽自動車」。ウェディの場合、「軽二輪」登録でナンバーは白となる。
…というわけで高速走行は問題ないハズなのだが、よほどのレアケースなのだろう、おっちゃんは事務所のスタッフの判断を仰いでいる。「ナンバー何色?」と聞かれ、「白ですね!」と答えたところで、「だったらOK!」とゴーサインが出た(※)。
※取材後に改めてネクスコ東日本に問い合わせた結果「書類上“側車付きオートバイ”で、高速自動車国道の最低速度・50km/hを下回らなければ、排気量が125cc未満でも通行可能です」という回答を得ています
もののついでにウェディのインプレではなく、CT125ハンターカブでの高速走行の感想を書いてしまうと、“車体に関しては思った通り意外といける”というのが正直な感想だ。125ccのエンジンに由来する加速/トップスピードに関しては、70km/hという感じでいかんともし難いものの、車体に不安なところはない。側車付きという特殊な条件下であるものの、エンジンさえ大きくなれば、ハンターカブは十分に高速走行可能な車体であることが僕の中で確認できた。
さて、ここからはウェディの話である。この車両は多様なカスタムを得意とするバイクショップ・オートスタッフ末広が7月から販売を開始するサイドカーだが、同店も高速走行は推奨していない。この実験は「法律上、問題ないならハンターカブ(サイドカー付きの)で高速走ってみようぜ?」と、ちょっと悪ノリが過ぎるライターの所業だ。
走ってから言うのもなんだけど、僕もオススメはしたくない。他の車両にバンバン抜かされる中で70km/hしか出せないのはちょっと心許ないのだ。先述のとおり車体はいいのだが、いかんせん速度が足りない。
それに僕自身、サイドカーという乗り物に不慣れなこともある。急ブレーキはもちろん、“アクセルを急閉”で起こる挙動も正確に予測できておらず、雪道運転のような丁寧かつ神経質な操作を強いられている。また付け加えるならサイドカーの“船”という座席、視線が低いおかげでスピード感がものすごい。サイドカーに乗り慣れているにゃんばちゃんは笑顔で乗っているものの、僕自身が同じ立場になった時に、笑っていられるかと問われるとちょっと自信がないぜ(笑)。
…なんて感じで邪道な高速インプレからスタートしたことで悪いイメージを与えてしまっていないか不安だ(笑)。改めて仕切り直させてもらえば、サイドカーという乗り物は非常に楽しい乗り物である。僕自身、クローズド環境で一度運転したことはあるものの、公道を走らせるのは今回が初めて。にもかかわらずこのウェディの完成度の高さはよくわかる。とにかく走っていて不安がないのだ。
この手のカスタム色の強いバイクに乗ると、どうも信用ならない部分があって“手心”を加えたくなるものだ。ところがウェディ、練習がてらお店の駐車場で試走させてもらった段階からその扱いやすさに驚いた。確かにサイドカーなりの挙動は出る。一人で乗れば左旋回で容易に船が浮いて片輪走行が始まるし、フロントブレーキをガン握りすれば、船の重みで右へ曲がる。ただ、それらの挙動も非常に穏やかで掴みやすい。片輪走行に至っては、「話には聞いていたけど、意外に簡単に浮くもんだねぇ…」などと余裕をかませるほどなのだ。
オートスタッフ末広さんによれば、このウェディ、コンパクトな車体のおかげでサイドカー特有の挙動が大型のサイドカーよりも顕著に出るらしい。車検がなくお手軽な軽二輪登録とするため車幅を1300mm以下に収め、船もハンターカブの車体に合わせてコンパクト化。それにも関わらず扱いやすいと感じるのは、サイドカーレースで培ってきたノウハウがあってこそだろう。でなければ「高速道路へ…」なんて気分にならなかったハズだ。
それにこのウェディは“サイドカーという乗り物はパッセンジャーとの連携操作が楽しいのだ”ということをこれでもかと教えてくれる。パッセンジャーの体重移動ひとつで運転感覚が全く変わるのだ。もちろんドライバーだけでのコントロールも可能なのだが、二人で息の合った操作ができるとコーナリングがバッチリ決まる感覚が味わえるのだ。これがバイクとの一番の違いらしいが、病みつきになってしまう理由もよくわかる。
自分には全く関係のない世界だと思っていたサイドカー。でもウェディなら100万円ちょっとでこの楽しさが手に入る。しかも車検のない軽二輪登録で実現してしまうというのだから、なんだかドキドキしてしまう。
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