鉄フレーム+ハヤブサエンジンのオリジナルマシン「鐵隼(テツブサ)」でテイストオブツクバに参戦したチーム加賀山。と、同じ日に筑波サーキットで開催された、ハヤブサのミーティングにも加賀山さんは密接に関係していた。レース後もひとりツナギ姿で動き回っていた、その行動の裏にあるものとは?
●文:編集部 ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:Team KAGAYAMA
レース後もファンサービスを続ける、その姿
ホームストレート上で集合写真を撮影し終えた加賀山就臣さんは、集まったハヤブサオーナーたちにお礼とミーティングの散会を告げると、ツナギ姿のまま、おもむろに駆け出して行った。どうしたんだろうと見ていると、コースの出口に陣取って帰途につく参加者たちに手を振り、さらにはグータッチを始めた。
こうしたファンサービスを自然に、ごく当然のごとく実行できるプロライダーって今の日本に何人いるんだろう……などと考えていたら、隣にいた真弓カメラマンのニコンからシャッターの連射音が聞こえてきた。彼も同じことを感じていたようだ。「ここまでされたら、加賀山ファンになっちゃうよね!」
「鐵隼」がテイストオブツクバに参戦したその当日、筑波サーキットのパドックではハヤブサのミーティングが開催されていた。これは加賀山さんとハヤブサのオーナーネットワーク「Busa-Tomo.Net」の声掛けによるもので、集まったハヤブサは130台以上にもなった。
加賀山さんはレースの合間にミーティングにも顔を出し、さらには事前に筑波サーキットと交渉し、レース後にパレードランを行う了承も取り付けていた。オレンジ色の初代ハヤブサでパレードを先導した加賀山さんは、直前に鐵隼の決勝レースを終えたばかり。ツナギを脱ぐ時間すらなくファンサービスを続けるその姿には、少なからぬハヤブサ乗りが心を掴まれたはずだ。
日本のレース界を盛り上げたい。そのためになすべきことは
加賀山さんがこれほどにファンサービスに力を注ぐのは、何としてでもレース界を盛り上げたいという強い意思があるから。1990年にレースを始め、ブームと共にステップアップしていった加賀山さんは、日本で2輪レースが盛り上がっていない現状を「許せないよね!」と語るのだ。
「そのためには、今までサーキットに行ったことのないライダーを振り向かせたいのですが、レースってただ見に行っても面白くない。“応援したい” “見に行きたい”と思えるライダーやマシンがいないと盛り上がれないんです(加賀山さん)」
ハヤブサミーティングも鐵隼も目的はそこにある。ハヤブサ乗りでバリバリのサーキット指向という人はそう多くはないだろうが「鉄フレームのハヤブサが筑波を走る!」と聞けば、少なからず興味はそそられるハズ。そうやって話題を作って興味を喚起し、サーキットに足を運んでくれたら精一杯にもてなす。そして「また鐵隼を見に来よう」「加賀山を応援しよう」と、レースに興味を持つキッカケにして欲しいのだ。
加賀山さんほどのスキルとノウハウのあるライダーなら、速いマシンさえ持ってくればテイストオブツクバを圧倒することもできるだろう。でも、それは彼らのやりたいことではない。ファンに共感や高揚感を提供し、共にストーリーを紡ぎながら勝利に近づくことで、レースやサーキットの面白さを知ってもらいたい。だから、不利を承知のうえで鐵隼なのだ。
日本のレース界を盛り上げたいという気持ちは多くの人が持っているはずだが、どうしたらそれが出来るかを考え、実際に行動に移し、お金も時間も費やしている筆頭はチーム加賀山といって間違いないだろう。ヤングマシンも彼らの動きには今後も注目していきたい。あれだけの行動を見せられたら…やっぱ惚れちゃいますって!
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