2022年4月22日に結果が発表された2年に1度の「二輪車市場動向調査」では、前回の2019年度調査から目に見える変化がありました。12年ぶりに40万台を超えた年間の販売台数実績に加え、バイク購入者の平均年齢は0.5歳若返っています。ただ、コロナ禍による影響でバイクの有用性が見直されたこともありましたが、継続して乗ってもらう施策も必要ではないでしょうか。
●文: Nom(埜邑博道)
いい面、悪い面の両方にコロナ禍の影響が濃く見える「2021年度二輪車市場動向調査」
一般社団法人日本自動車工業会(以下、自工会)が2年に一度実施している、新車購入ユーザーを対象とした「二輪車市場動向調査」の結果が4月20日に発表されました(調査方法および調査結果は下記「2021年度二輪車市場動向調査について」のリンクを参照)。
今回の調査で、前回の2019年度調査から変化した点で注目したいのは、二輪車需要が2013年度以降、緩やかな漸減傾向とした2019年度の結果に対し、今回発表された二輪車需要は2019年度の35万8000台から37万1000台と微増していること。
以前、このコラムで詳しく書きましたが、自工会の発表数字は37万1000台となっていますが、国内4メーカーの原付出荷実績と全国軽自動車協会連合会公表の軽二輪+小型二輪(輸入車含む)の販売実績を合算すると、実に12年ぶりに40万台超えを記録し、巷間言われている「バイクブーム再来」を裏付ける数字になっています。
そして今回の自工会の調査で明らかになったのが、2019年度まではバイク購入者の高齢化が年々進んでいたのが、今回の調査では30代以下の構成比が3ポイント増加して32ポイントになり、全体の平均年齢も54.2歳と前回よりも0.5歳低くなったこと。
前回書いたように、ヨーロッパでもライダーの若返りが進んでいて、購入者層も10代~30代が半数を超えるそうですが、日本でもそこまで極端ではなくてもライダーの若返りが起こっているようです。
実際に街中や、郊外のツーリングスポットでも若いライダーをよく見かけるようになってきていますし、教習所も相変わらず満員御礼状態のようですから、これまでバイクに関心を抱いていなかった若い方々が今、バイクに注目し始めたことは明らかです。
また、購入形態はというと、買い替えが55%(前回は60%)、再購入が20%(同15%)、買い増し14%、新規11%で、買い替えが減少して、再購入が増加しています。
おそらくこれは、以前バイクに乗っていて、何らかの理由(子供ができたなど)でいったんバイクを降りていたけれど、再びバイクに乗ろうと思って購入した、いわゆるリターンライダーの増加を示しているのでしょう。
密を避けて移動できる、またリモートワークなどによるワークライフバランスの変化にともなって、趣味として楽しむバイクの有用性が見直されたという、コロナ禍の影響が大きく見られます。
多くの国民に不自由を強いているコロナ禍ですが、ことバイクの世界にはある意味、神風が吹いたと言えるでしょう。
60代以上のシニアライダーも大切にして欲しい!
また、今後もバイクに継続して乗り続けたいと思っている方の割合は前回より3ポイント上昇して85%と高い数字を示していて、とくに男性30代~50代でその割合が高いとのこと。
逆に気になったのは、60代男性は「あと10年以内に乗らなくなる」と「あと数年でやめるつもり」を合わせた割合が22%、同70代以上は43%と高くなっているそうです。
筆者も60代(もうすぐ64歳)ですが、できるだけ長くバイクに乗り続けたいと思っていますし、とくに二輪業界の先輩には70歳を過ぎても以前と何も変わらずにバイクに乗り続けている方がたくさんいらっしゃいます。そういう方を見習いたいと思うのと同じに、ちょっと特殊な立場にある我々業界人以外の一般の方は、さまざまな要因でバイクに乗り続けるのが困難になる可能性も多々あると感じています。
もちろん、体力の衰えや家族の反対という、なかなか抗い難い要因もありますが、「バイクの保有を中止する」理由の48%を占める「経済的に余裕がなくなったとき」という理由で60代以上のライダーがバイクに乗るのをやめるのは、人生100年時代と言われるいま、バイク業界全体の力でなんとか防げないものでしょうか。
自分が60代になったこともあって、世の中は60歳や65歳になるとさまざまなサービス・特典が受けられるようになることを知りました。たとえば、60歳以上だとファミリーレストランの飲食代が5%オフになるチェーン店がありますし、映画も大手シネマだと60歳以上はシニア割引で1800円→1100円と実に約4割引の料金で観ることができます。
また、ディズニーランドなどのアミューズメントパークにもシニア割引がありますし、航空各社やJR各社も割引を用意しています(65歳以上というところもあり)。
そんな世の中のシニア重視(厚遇かな?)の流れがあるにもかかわらず、二輪の世界ではそういうシニア割引など聞いたことがありません。
以前から、60代以上でアクティブにバイクに乗っている既存ユーザーを業界全体でもっと大切にすべきだと考えていた筆者は、車両メーカーや大型用品店等にシニア割引の導入を提言してきましたが、結果的に聞き入られることはほとんどありませんでした。
若年層のユーザーをどう増やすかが各社のマーケティングの本流になっているのが現状ですから、それが当たり前なのかもしれませんが、興味のない人に興味を抱かせるより、いまアクティブにバイクを楽しんでいる人に手厚いサポートをして1年でも長くバイクを楽しんでもらうほうが、ビジネス面でもいい結果をもたらすように思うのです。
そしてなにより、シニアライダーが元気に、楽しそうにバイクに乗っている姿は、とても大きな影響を若い人たちに与えることを筆者はいままでの取材の経験からよく知っています。自分もああやって長くバイクを楽しみたい、バイクは歳をとっても楽しめる素晴らしい趣味なのだということを、シニアライダーのみなさんは体現してくださっているのです。
ライダーを増やすことも大切ですが、その一方で減らさないこともとても重要。業界の関係者のみなさんはこういうデータを参照して、シニアにやさしいバイク業界にしていってもらいたいとあらためて思いました。
多くのライダーの悩みは駐車場不足と高速料金の高さ
ライダーが気にしている点で多数を占めた答えが、「雨、暑さ、寒さ」、そして「外出先の駐車場が少ない、料金が高い」と「高速道路料金」(とくに軽二輪以上のユーザーが回答)でした。
駐車場と高速道路料金という、なかなか解決しないふたつの大きな問題が高い障壁になっていて、このふたつが改善、または解決したらバイクに乗る機会が増えそうです。
駐車場に関しては、これもWEBヤングマシンに書きましたが、3月24日、警察庁交通局交通規制課長名で「地域の実情に応じた自動二輪等に係る駐車環境の整備に向けた継続的な取組の推進について」という通達が出ました。
平成30年4月にも同様の通達が出ているのですが、今年、自民党と公明党のオートバイ議連の強い要望を受けて再びほぼ同じ内容の通達が警視庁交通部長と各道府県交通本部長宛に出たわけで、注目したいのは「現在、自動二輪等も駐車禁止になっている場所でも、二輪の駐車場需要が多いところで周囲に駐車場が十分に整備されていない場合は、二輪は四輪よりも車体が小さいことを踏まえて、駐車禁止の対象から外すことが可能かどうか検討せよ」という部分。
つまり、二輪が駐車していても交通の妨げにならない場所は駐車禁止から除外すべきだという意見や、歩道の切込みなどの遊休スペースに枠線を引いてそこにバイク駐車スペースを設けるなど、交通環境に配慮しながらバイクの駐車場(スペース)を設けるようにせよという交通規制課長の意思が盛り込まれているように読み取れるのです。
この通達を受けて、バイクを駐車禁止から除外した場所ができたという事実はまだ聞いていませんが、関係各位からの話を聞くと、今後、バイクの駐車禁止除外場所が増えることは大いに期待できそうです。
もし読者諸兄が駐車禁止除外になったところを見つけたらぜひ編集部までご一報ください。
そしてもうひとつの障壁の「高速道路料金」ですが、これもこのサイトでたびたび取り上げてきましたが、今年の4月から始まった休日の「ETC二輪車定率割引」でついに普通車の半額料金が実現しました。
事前の手続きや申し込み、また走行距離の規定などがあって、いつでもどこでも手軽に半額というには程遠いものではありますが、既成事実として「普通車の半額」というインパクトは非常に大きいものです。
業界各団体とオートバイ議連が長年主張してきた普通車の半額化を、システムの改修に多額の費用が掛かるなど、できない理由をこねくりまわして拒絶していたNEXCO各社が、物理的には可能であることをついに認めてしまったわけですから。
さらに、国土交通省からの依頼を受けて、激しい渋滞を避けるために今年からGW、お盆、年末年始の休日割引の適用除外を決めたNEXCO各社ですが、「ETC二輪車定率割引」はその除外期間も適用されるという、これまでとは打って変わったバイク優遇の態度も見せています。
これまでの対応と行動を考えると、そうは簡単に「バイクはいつでも半額」に舵を切るとは思えませんが、まずはみんなでこの定率割引を積極的に利用して、料金が適正だとバイクも高速道路を大いに活用するのだということを、NEXCO各社に示したいと思います。それが、将来の半額化に絶対に結び付きますから。
そのほか、このレポートを詳細に見ていくと、実際の市場がよく反映されていると思えることが多いのですが、ちょっと意外だったのが次期購入希望のバイクが「オフロードタイプ」と「スクーター」という結果。
キャンプブームであることや、密を避けるための通勤・通学手段にしたいということなのか理由までは不明ですが、ここにもコロナの影響があるように感じました。
そして、バイク専門誌にとってうれしかったデータは、「購入車の情報源はWebと販売店の実物が中心だが、若年層では口コミやSNSも活用される。加えて、オンロードとオフロードは二輪車専門雑誌や販売店での試乗など、多様な手段で情報を得ている」というもの。
趣味としてバイクを楽しむライダーが多く乗るオンロード車とオフロード車の購入時には、バイク専門誌を頼りにしてくださっているようです。
その期待に応えられるよう、情報の速さだけでなく、しっかりした広がりと深さを持つ内容を掲載する二輪専門誌として、本誌もますます精進していきたいと思いますので、みなさんの応援をよろしくお願い申し上げますと、編集長に代わってお伝えしたいと思います。
※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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