予選を上回るハイペースで7台がトップ争いを繰り広げたST600クラス。モビリティリゾートもてぎで行われた2022年シーズン・全日本ロードレース開幕戦、JSB1000クラスではV10チャンピオンの中須賀克行が強さを見せましたが、ST600クラスのレベルアップぶりがおもしろい! 要注目の選手たちをお伝えします。
●文/写真: 佐藤寿宏
第2戦(鈴鹿)の前に開幕戦のもてぎをプレイバック!
毎年開幕戦はいつもドタバタですが、今年も例に漏れずドタバタでした。気がつけばソメイヨシノもゆっくり見ることができず、すっかり散り、八重桜がきれいに咲いていますね。っというより、もう今週末は、第2戦鈴鹿2&4レースですが、開幕戦を振り返らせてください。
全日本ロードレース選手権が2022年も開幕しました。ツインリンクもてぎからモビリティリゾートもてぎへ改名して迎えた第1戦。寒の戻りで気温が上がらず、転倒も少なくありませんでしたが、レースでは、選手たちがアツイ走りを見せてくれました。
JSB1000クラスは、TOHO Racingに移籍した清成龍一とSDG Honda Racingの名越哲平が、3月7日の鈴鹿テストで転倒し負傷。2人とも傷が癒えず残念ながら欠場となってしまいました。第2戦鈴鹿2&4も出られず、5月の第3戦オートポリス2&4からの復帰を期待したいところです。
やはりV10チャンピオンの中須賀克行が強かったですね。レース2は不安定なコンディションで新しくチームメイトになった岡本裕生の走りには驚いたと思いますが、そこは意地でも負けられないところ。しっかり前に出てダブルウイン達成でした。今シーズンも中須賀を中心にシーズンが進んでいくと思いますが、今回のレース2のような不安定なコンディションでは、絶対王者にもスキができることもありそうです。
JSB1000ルーキーの岡本は、絶対的に走行時間が少なく、ましてブリヂストンのウエットタイヤで走るのも初めてにも関わらずトップを快走。開幕戦から2位表彰台に上がる活躍を見せてくれただけに、2戦以降の走りにも期待がかかるところです。
打倒・中須賀の最右翼と目されているのが、YOSHIMURA SUZUKI RIDEWINの渡辺一樹でしょう。加賀山就臣がチームマネージャーに就任し、新体制となりましたが、初戦から速さを見せています。予選では終盤に一時はトップに立ち、中須賀に、もうひとアタックさせ2番手。レース1でもレース終盤まで中須賀を追う走りで2位。レース2は3位となりましたが、両レースで表彰台に上がり、シーズン最初のレースとしては、まずまずのスタートを切ったと言えるでしょう。
昨年ランキング2位を獲得した濱原颯道も安定して上位につけ、Honda勢では、一番、安定した速さを発揮していました。新型となったCBR1000RR-Rは、ECUが変わり、一からセットアップをしなければならず、時間がかかっていますが、うまく機能してくれば、さらなる速さを発揮するでしょう。
あえて後続に追いつかせて混乱を演出した羽田が作戦勝ち
そして、今年のST600クラスは、おもしろいです。何よりレベルが上がっています。優勝した羽田太河のレースタイムは、去年に比べると約16秒も速かった。コンディションの違いを考えても、これは驚異的なレベルアップだと言えるでしょう。事前テストから公式予選まで速さを見せていたのが荒川晃大でした。コンディションがよくない段階からコースレコードを更新する走りを見せ、予選では、ただ一人、1分52秒台に入れ、1分52秒643というコースレコードを樹立。決勝も逃げのレースを見せるかと思われました。
実際に荒川がまずトップに立ち、1分52秒台にペースを上げます。これが羽田はピタリとマーク。羽田は、意外に余裕があり2台で逃げることも考えましたが、後続を追いつかせてガチャガチャやることを選択。荒川をかわしてトップに立つと1分54秒台にペースを下げて後続を追いつかせ、トップグループは7台にふくれ上がります。
この中には、昨年までMoto3を走っていた國井勇輝もいて、レース終盤は2番手を走っていたところ残り2周を切った1コーナーで転倒してしまいます。ST600最初のレースで結果は残りませんでしたが、速さは見せてくれたので、次戦も期待できそうです。
かわって2番手に上がって来たのは“コヤマックス”こと小山知良・39歳でした。コヤマックスは、このオフは、とにかくトライアルに乗りまくり、成長する若手に対して自身も進化して迎え撃つ体制を整えていました。予選こそ8番手でしたが、本人は自己ベストを更新して絶好調。アベレージには自信があったので着実に順位を上げてきました。最後に勝負に出てもよかったけれど、後続も続いていたので、今回は2位でゴールすることを選んでいます。
羽田は、昨年までCEV Moto2を走っていた実力を見せつけて優勝を飾りましたが、こちらも全日本ST600は初参戦。新しいCBR600RRとブリヂストンの走り方を試行錯誤していましたが、レースで、しっかりまとめてくるのは、さすがのひと言。「早く世界に戻りたいので負けられません。次回はぶっちぎりたいですね」と強気のコメント。ARRCやCEVなど路面μの低いコースで走ってきただけにグリップの落ちたレース終盤の方が走りやすかったと言います。これは今後もレースでの強みとなるでしょう。
羽田の所属するTN45 with MotoUP Racingは長島哲太が立ち上げたチーム。長島は、2020年開幕戦カタールのMoto2で優勝を飾りランキング8位となりますが、翌年の契約を破棄されてしまいます。ライダーとしてMotoGPを目指す道は困難と判断し、2021年からはHRCの開発ライダーを務めながら、様々な事業を展開。その一環として若手にもう一度世界へ挑戦するチャンスを与えるためにチームを結成し、初戦から結果を出しました。もう一人のライダー西村硝もMoto3からの乗り換えに苦労していますが、12位でゴールし、次戦以降は、さらに上位に絡んできそうです。
荒川は、速さを生かせず悔しい3位になりましたが、まだまだ成長できるはず。泥試合でも強くなって、Moto2へと羽ばたいてもらいたいものです。
王者同士の激突はスッキリしない結果に(ST1000)
ST1000クラスは、2021年チャンピオンの渡辺一馬と2020年チャンピオンの高橋裕紀が一騎打ちのトップ争いを繰り広げました。最後に渡辺がスパートして引き離してゴールしますが、スタート手順違反のペナルティで30秒加算のペナルティ。高橋が優勝し、渡辺は6位となりましたが、両者とも複雑な思いを残すレースになりましたね。
J-GP3クラスは、チャンピオンの尾野弘樹がリードするかと思われましたが、コンディションに苦戦。好調の木内尚太が王者にプレッシャーをかけまくり、最後に前に出てうれしい全日本初優勝を飾りました。J-GP3初参戦の上原大輝が3位、予選まで苦しんだ森俊也が7位に入り、Team Plusoneが存在感を見せたレースになりました。
4月23日(土)・24日(日)には第2戦鈴鹿2&4レースが開催されます。全日本ロードレースは、JSB1000クラスのみですが、鈴鹿8耐を見据えて参戦しているライダーが多く、60台のエントリーを集めています。土曜に行われるレース1は、鈴鹿8耐のトライアウトを兼ねており5枠を17台が狙います。こちらの行方も注目したいところです。4輪のスーパーフォーミュラも見られるので、ぜひサーキットに足を運んでみてください。
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