全日本選手権を始め、ワールドスーパーバイクや鈴鹿8耐などで活躍した名ライダー・加賀山就臣氏が代表を務めるチーム加賀山(Team KAGAYAMA)。近年はGSX-R1000エンジン搭載のスズキ カタナでテイストオブツクバ(T.O.T)に参戦しファンを楽しませてきたが、なんと! 今度は鉄フレームのハヤブサを製作し、T.O.Tに参戦するというのだ!
●文:ヤングマシン編集部 ●写真:Team KAGAYAMA/編集部 ●外部リンク:Team KAGAYAMA
ハヤブサでレースに出るには…これしかなかった!?
2013年にはケビン・シュワンツを招聘して鈴鹿8耐で3位入賞し、ここ数年は冒頭で述べたGSX-Rエンジンの「KATANA 1000R」でT.O.Tを沸かせるなど、常に何かを仕掛けてモータースポーツファンを沸かせてきたチーム加賀山。そんな彼らが新たなチャレンジをぶち上げた。鉄フレームのハヤブサを製作し、T.O.Tの最速クラス・ハーキュリーズで勝ちに行くのだという!
「KATANA 1000Rで3年間、T.O.Tに参戦してきましたが、’21年秋のレースではキャブレター&リヤ2本サスという仕様でハーキュリーズに参戦し、コースレコードも出して優勝できました。すごくいいストーリーを作れたと思うし、自分の中でカタナはこれで完結したと感じています。なので、改めて次のステージに行こうと考えたんです」(加賀山氏)
鉄フレーム車しか参戦できないというユニークな規定で人気を集めるT.O.Tのハーキュリーズだが、参戦するライダーのレベルは非常に高く、世界で戦ってきた加賀山氏でもそう簡単には勝てない。ちなみに’21年秋のT.O.T予選で加賀山氏+KATANA 1000Rがマークしたコースレコード=57秒786という筑波サーキットのタイムは、最新のCBR1000RR-RやYZF-R1のSTD車で競われるST1000クラスでもポイント圏内に食い込めるほどなのだ。
そんなハーキュリーズを戦ったKATANA 1000Rは、当初はFIだった燃料供給を途中でキャブレター化し、さらにはリンク式モノショックをわざわざ2本サスに改めるなど、あえて旧態然とした構成へと作り変えていった。これは旧車レースであるT.O.Tの主旨を踏まえたものだが、もちろん性能的には退化でしかない。しかし、そんなマシンで激戦のハーキュリーズを戦い、タイムを更新していく加賀山氏の姿を見て、レースに興味のなかったカタナ乗りたちがチーム加賀山を目当てにT.O.Tに集うようになった。
壮大な”悪ふざけ”を皆で楽しみたい
「それを今度はスズキのフラッグシップ=ハヤブサでやりたいんです。僕もハヤブサオーナーですし、モータースポーツに飢えているハヤブサ乗りをサーキットに連れて行きたい。ハヤブサってフルカウルなのに、出られるレースが何もないんですよ。それが逆に面白いと思って。筑波サーキットに確認したら『ハーキュリーズはフレームが鉄なら何でも出られますよ』と。じゃあやるしかない!」
もともとサーキット向けではないハヤブサだから、エンジン性能はともかく、最初のうちは苦労するだろうと語る加賀山氏。’22年はヨシムラとタッグを組み、渡辺一樹選手を全日本JSB1000で走らせるチーム監督としての顔も持つが「全日本をガッチリやるのはもちろん大切。でも、僕自身がそうなんですが、少し変わったバイク乗りが熱くなれるような、そんな話題を提供していくことだって面白い」 すでにハヤブサのオーナーズクラブでは、このネタで大いに盛り上がっているのだという。
「鉄フレームのハヤブサ、名付けて”鐵隼(テツブサ)”です。鋼をイメージして、あえて画数の多い字を当てています。そもそもアルミフレームをわざわざ鉄にしちゃうなんて、壮大な悪ふざけですよ(笑)。でも、チーム加賀山のメカニックも含めてそれを楽しんでいるし、同じように感じるバイク乗りがサーキットに足を運んで、我々を応援してくれたら嬉しい。応援するバイクやライダーがいれば、レース観戦って本当に楽しいですから」
世界の4大メーカーが集う日本で、レースが昔のように盛り上がっていないことが許せないと語る加賀山氏。だからこそ、日本のレース界に育ててもらった自分がひと肌脱ぎ、モータースポーツに興味のないライダーをサーキットに引き寄せたいと考えている。そのための新たな”仕掛け”である鐵隼。その勇姿を目撃しに、ぜひ5月15日は筑波サーキットに足を運んでほしい。
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