小柄な体格ながらオフロードマシンを自在にコントロールし、数々のエンデューロレースでトップライダーとして活躍する、ユータロー先生こと内山裕太郎選手。そんなユータロー先生による、オフロードビギナーや小柄なライダー、トレールマシンユーザー/アドベンチャーマシンユーザーまで役に立つ林道ライディングテクニック講座『チビテク』より、これから林道デビューする人や林道ビギナーに向けた林道ライディングテクニックを前/中/後編でお届けするゾ!!
●まとめ:ゴー・ライド編集部(小川浩康) ●写真:長谷川徹 ●講師:内山裕太郎
林道ビギナー必見!! チビテク林道ライディングテクニック
「チビテク」とは、林道を無転倒で安全に走破するためにユータロー先生が培ってきたライディングテクニックだ。「林道は一般公道なので、対向車も来ればハイカーもいます。現に今回の取材中にも、オフロードマシン/4WD車/マウンテンバイクが来ました。もちろん公道なのでキープレフト(左側通行)。そしてレースではないのでハイスピードで走行する必要もない。速く走るのではなく、安全に走るためのテクニックがチビテクなんです」とユータロー先生。では早速レクチャーを開始してもらおう。
転倒しにくい足の着きかた:車体を直立させて足を着く
チビテクの基本テクニック”足の着きかた”をマスターする前に、「一番転倒しにくい安定したマシンの状態=マシンが直立している状態」を知っておこう。これをふまえてマシンと向き合えば、シート高の高いマシンももう怖くない!
直立したマシンは指1本で支えられる!!
ユータロー先生「セローの車重は133kg、テネレの車重は205kg。これだけの重量物を持ち上げるのは無理だけど、車体を直立させていれば指1本で支えることができます。これは車重が前後輪にかかって安定した状態になっているから。直立していればライディング時の操作性も軽く感じるので、バランス修正もしやすくなります。つまり、転倒しにくくなるんですよ。ライディング中や停止時に、直立した状態を作ることが転倒しないコツなんです」
「テネレと比べると軽いセローですが、それでも車両重量は133kg。傾いた車体を支えるのは厳しいですよね。だからまずは車体を直立させてみてください。こうすると、車重は前後輪にかかるので、指1本で支えられるくらい軽くなるんですよ」
直立状態はマシンを軽く感じる状態
「車体が直立していれば、足を着いた時に足にかかる負担も少なくなり、立ちゴケもしにくくなります。逆に足を着こうとして車体を傾けすぎてしまうと、車重が足にのしかかり転倒する原因になります」
「だから、足着き性の厳しいマシンに乗っているライダーは、マシンを直立させたまま、お尻をズラして足を着く方法をマスターしましょう。林道で停止する時だけでなく、街中の信号待ち/右折待ちでも安定感が増すので、ちょっとでも足着きに不安を感じるライダーはこの方法を積極的に使ってください」
チビテク01:お尻をズラして足を着く
車体を傾けないで足を着くには、車体を直立させた状態でお尻をズラして足を着く。
「車体を直立させた状態でお尻をズラし、まずはつま先を地面に着けます。直立しているから、つま先立ちでも車重はそんなに感じないはずです。それでも不安な場合は、車体の直立を維持したまま、さらにお尻をズラして、足裏を地面に着けましょう[下写真右]。地面に着かない足(この場合は右足)は、ステップから離れてもOKです。むしろ無理にステップに載せたままにしようとすると、お尻をズラしにくくなってしまいます。この時に右足の太ももはシート上に載せておきます。太ももで車体がフラフラするのを抑えるイメージです[下写真左]。走行から停止する際や、林道で車体が振られてバランス修正する際は、車体が大きく傾く前に、お尻をズラして足を着くアクションをしてください。早めにアクション開始することがポイントですよ」
お尻をズラさず車体が傾くと転倒の危険が…
チビテク02:シッティングポジションを作る
林道走行中は「基本的にシッティングポジションでOK」とユータロー先生。では、正しいシッティングポジションの作りかたを教えてもらおう。
足を着きやすい位置に座る
「林道では、レースのようにハイスピードで走る必要はないし、ずっとスタンディングしていると疲労の原因にもなるので、基本的にシッティングで走行します。ガレ場や掘れたギャップなど、荒れた路面を走行する際はスタンディングしますが(その方法は中編で紹介)、まずはチビテク流シッティングポジションをマスターしましょう」
「座る位置はセローでもテネレでも同じ。お尻をあまりズラさなくても、足を着きやすい位置に座ることです[下写真左]。車体を直立させたまま発進すれば、シッティングポジションの完成です[下写真中]。ハンドルは真っすぐをキープ。この状態で走行している時、車体は一番安定しているんですよ[下写真右]。そしてアクセルを開けることで加速状態になり、後輪が路面をしっかりグリップして車体が左右に振られなくなるんです。つまり、アクセルを開けて直進している時は、車体が直立するんです。これはバイクの基本的な特性なんですよ」
覚えておくと使えるチビテク秘技!!
〈秘技1〉逆ハンを切る
「車体の大きいマシンで足を着いて停止した時は、着いた足の反対側にハンドルを切ってみる(=逆ハン)のもアリです。ハンドルを切った反対側(足を着いた側)に車体が少し傾きますが、ハンドルを切ったことで右ヒジに余裕が生まれるからです」
<秘技2>尻ズラしUターン
「お尻をズラして車体を直立させたままでもUターンができるんです。足を着きながらUターンできるので安心感があります。その反面、写真のように車体を少ししか傾けられないので、ターン弧が大きくなります。広い場所でのUターンに使えるので覚えておきましょう」
シート高のあるオフロードマシンやアドベンチャーマシンへの安定した乗り降りのコツやポジショニングを伝授した前編。中編ではダート路面でのボディアクションやスタンディング走行のコツなどを伝授する!!
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