林道ビギナー向けライディングテクニック〈内山裕太郎のチビテク講座|前編〉

小柄な体格ながらオフロードマシンを自在にコントロールし、数々のエンデューロレースでトップライダーとして活躍する、ユータロー先生こと内山裕太郎選手。そんなユータロー先生による、オフロードビギナーや小柄なライダー、トレールマシンユーザー/アドベンチャーマシンユーザーまで役に立つ林道ライディングテクニック講座『チビテクより、これから林道デビューする人や林道ビギナーに向けた林道ライディングテクニックを前/中/後編でお届けするゾ!!


●まとめ:ゴー・ライド編集部(小川浩康) ●写真:長谷川徹 ●講師:内山裕太郎

【講師:内山裕太郎】中学時代はマウンテンバイクで、高校で二輪免許取得後はトレールマシンで林道ツーリングを楽しんでいた。その後、各地のエンデューロに参戦し、現在もJNCCやJECで活躍中。世界最高峰の6日間エンデューロISDEに5回参戦したが、そのライディングは林道ツーリングで得たテクニックに基づいてる。生粋の林道ツーリングライダーで、身長165cmと小柄なことから、そのライディングテクニックを見た舟橋元ガルル編集長が「チビテク」と命名。ちなみにモデルバイクのテネレ700はユータロー先生の所有バイク。このバイクで林道ツーリングも楽しんでいる。

林道ビギナー必見!! チビテク林道ライディングテクニック

「チビテク」とは、林道を無転倒で安全に走破するためにユータロー先生が培ってきたライディングテクニックだ。「林道は一般公道なので、対向車も来ればハイカーもいます。現に今回の取材中にも、オフロードマシン/4WD車/マウンテンバイクが来ました。もちろん公道なのでキープレフト(左側通行)。そしてレースではないのでハイスピードで走行する必要もない。速く走るのではなく、安全に走るためのテクニックがチビテクなんです」とユータロー先生。では早速レクチャーを開始してもらおう。

ユータロー先生の愛車テネレ700。身長172cmの筆者がまたがると片足つま先立ちに。身長165cmのユータロー先生はさらに足着き性が厳しいにも関わらず、自由自在に愛車テネレ700をコントロールしている。そう、この自由自在なマシンコントロールこそがチビテクなのだ!!

転倒しにくい足の着きかた:車体を直立させて足を着く

チビテクの基本テクニック”足の着きかた”をマスターする前に、「一番転倒しにくい安定したマシンの状態=マシンが直立している状態」を知っておこう。これをふまえてマシンと向き合えば、シート高の高いマシンももう怖くない!

直立したマシンは指1本で支えられる!!

ユータロー先生「セローの車重は133kg、テネレの車重は205kg。これだけの重量物を持ち上げるのは無理だけど、車体を直立させていれば指1本で支えることができます。これは車重が前後輪にかかって安定した状態になっているから。直立していればライディング時の操作性も軽く感じるので、バランス修正もしやすくなります。つまり、転倒しにくくなるんですよ。ライディング中や停止時に、直立した状態を作ることが転倒しないコツなんです」

「テネレと比べると軽いセローですが、それでも車両重量は133kg。傾いた車体を支えるのは厳しいですよね。だからまずは車体を直立させてみてください。こうすると、車重は前後輪にかかるので、指1本で支えられるくらい軽くなるんですよ」

重量関係なく、車体を直立させていればマシンは指1本で支えることができるのだ。

直立状態はマシンを軽く感じる状態

「車体が直立していれば、足を着いた時に足にかかる負担も少なくなり、立ちゴケもしにくくなります。逆に足を着こうとして車体を傾けすぎてしまうと、車重が足にのしかかり転倒する原因になります」

軽いセローも重いテネレも、この直立状態(矢印のように真下に重さがかかっている)が車重を軽く感じられる。つまり、車重や車体の大きさを問わず、「バイクは直立状態が軽い」と覚えておこう。

車体が傾くと前後輪にかかっていた車重が減り、重力の影響もあって車体はさらに傾こうとする。すると、その分の車重は、支えている部位(写真の場合は手)にのしかかってくる(矢印の方向に重さがくる)。支えきれなくなる=転倒となるのだ。

「だから、足着き性の厳しいマシンに乗っているライダーは、マシンを直立させたまま、お尻をズラして足を着く方法をマスターしましょう。林道で停止する時だけでなく、街中の信号待ち/右折待ちでも安定感が増すので、ちょっとでも足着きに不安を感じるライダーはこの方法を積極的に使ってください」

チビテク01:お尻をズラして足を着く

車体を傾けないで足を着くには、車体を直立させた状態でお尻をズラして足を着く。

「車体を直立させた状態でお尻をズラし、まずはつま先を地面に着けます。直立しているから、つま先立ちでも車重はそんなに感じないはずです。それでも不安な場合は、車体の直立を維持したまま、さらにお尻をズラして、足裏を地面に着けましょう[下写真右]。地面に着かない足(この場合は右足)は、ステップから離れてもOKです。むしろ無理にステップに載せたままにしようとすると、お尻をズラしにくくなってしまいます。この時に右足の太ももはシート上に載せておきます。太ももで車体がフラフラするのを抑えるイメージです[下写真左]。走行から停止する際や、林道で車体が振られてバランス修正する際は、車体が大きく傾く前に、お尻をズラして足を着くアクションをしてください。早めにアクション開始することがポイントですよ」

お尻をズラさず車体が傾くと転倒の危険が…

[右]ステップから足を離して足を着こうとしているが、この時、車体を傾けて足を着こうとしている。[左]足を着いたものの、車体は傾いている。しかも車重のあるテネレの場合、これ以上傾いたらもう支えられない危険な状態。頭では分かっていても、自分で危険な状態を作っていることがあるので注意。車重が重くなるほど、支えられる傾きは少なくなることを覚えておこう。

チビテク02:シッティングポジションを作る

林道走行中は「基本的にシッティングポジションでOK」とユータロー先生。では、正しいシッティングポジションの作りかたを教えてもらおう。

足を着きやすい位置に座る

「林道では、レースのようにハイスピードで走る必要はないし、ずっとスタンディングしていると疲労の原因にもなるので、基本的にシッティングで走行します。ガレ場や掘れたギャップなど、荒れた路面を走行する際はスタンディングしますが(その方法は中編で紹介)、まずはチビテク流シッティングポジションをマスターしましょう」

「座る位置はセローでもテネレでも同じ。お尻をあまりズラさなくても、足を着きやすい位置に座ることです[下写真左]。車体を直立させたまま発進すれば、シッティングポジションの完成です[下写真中]。ハンドルは真っすぐをキープ。この状態で走行している時、車体は一番安定しているんですよ[下写真右]。そしてアクセルを開けることで加速状態になり、後輪が路面をしっかりグリップして車体が左右に振られなくなるんです。つまり、アクセルを開けて直進している時は、車体が直立するんです。これはバイクの基本的な特性なんですよ」

ヤマハ セロー250

ヤマハ テネレ700

覚えておくと使えるチビテク秘技!!

〈秘技1〉逆ハンを切る

「車体の大きいマシンで足を着いて停止した時は、着いた足の反対側にハンドルを切ってみる(=逆ハン)のもアリです。ハンドルを切った反対側(足を着いた側)に車体が少し傾きますが、ハンドルを切ったことで右ヒジに余裕が生まれるからです」

車体のフラつきを抑えられるので、疲れて体力の余裕がなくなってきた時や、停止時に強風で車体があおられる時は、この方法を試してください。ただし、発進する前にハンドルを真っすぐに戻すのを忘れずに!

<秘技2>尻ズラしUターン

「お尻をズラして車体を直立させたままでもUターンができるんです。足を着きながらUターンできるので安心感があります。その反面、写真のように車体を少ししか傾けられないので、ターン弧が大きくなります。広い場所でのUターンに使えるので覚えておきましょう」

1速に入れた状態でお尻をズラして足を着く。車体をなるべく直立させたまま、ハンドルをフルロックまで切る。

フルロックのままクラッチをつなぎ、ゆっくり発進。

直立&フルロック状態をキープしながら、車体が進むのに合わせて、足をチョンチョンと着いていく。エンストしないように半クラッチも使って、トコトコ進みながら方向転換する。

Uターン成功!! ハンドルをフルロックしつつ、エンストしないように半クラッチを使うのがポイント。

シート高のあるオフロードマシンやアドベンチャーマシンへの安定した乗り降りのコツやポジショニングを伝授した前編。中編ではダート路面でのボディアクションやスタンディング走行のコツなどを伝授する!!


※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

最新の記事