新生ザッパー海外初乗り! カワサキZ650RSインプレ【フランス地中海の風を切るこの俊敏性にベタ惚れ】

新生ザッパー海外初乗り! カワサキZ650RSインプレ

日常的に扱いやすく、価格も比較的お手頃なミドルクラス帯で、兄貴分Z900RS譲りの本格ネオクラシックスタイルが楽しめると大注目のカワサキZ650RS。この新生”ザッパー”を、日本に先がけてスペインの2輪メディア『ソロモト(SOLO MOTO)』誌がフランスで試乗。気になるファーストインプレッションの模様をお伝えしよう。


●文/写真:SOLO MOTO ●翻訳:宮田健一

キビキビした走りで、街中がとにかく得意

私の記憶が正しければ、カワサキは現代につながるネオレトロブームを’90年代初頭から提供していた最初のブランドだった。日本のみで売られ現在の私たちの市場ではW250と呼ばれる’92年のエストレヤに始まり、’98年のW650は私たちの国々でも発売された。そのW650は今もW800となって続いている。このほか、それ以前から人気があり魅力的なゼファーシリーズもリリースされていた。

現時点でこのカテゴリーの顔となったZ900RSはSEの登場で強化されたばかりだが、不可解なことにカワサキにはこのタイプでもっとアクセスしやすいモデルがこれまで存在してこなかった。一方でヤマハはXSR700により実質5年間もの間、ライバル不在の状態でこのニッチな市場を牛耳っていた。カワサキはZ650RSでようやくここに楔を打ち込んでくれたというわけだ。

新しいZ650RSは人気のあるスポーツネイキッド=Z650と同様のディメンジョンを持ち、エルゴノミクスの面でも同様だが、ライディングポジションはより直立した快適志向となっている。ハンドルバーは幅広&アップライトになり、グリップは50mm高く30mm手前に移動。よりクッション性のある2人乗りのフラットシートのおかげで快適さが増している。シート高はZ650より30mmアップ(※編注:欧州仕様は820mmだが、他地域は主に800mmを予定)となっているが、引き起こす際に感じる重さはほとんど変わらず、シート高の違いはそのまま座ったときの柔らかさの違いになっている印象だ。

スタータースイッチを押すと、エンジン始動は瞬時に行われる。ほどよく心地いいアイドリングのパルス感は日本製パラツイン独特のキャラクターだ。手を伸ばすと自然な位置にあるハンドルバーには両方のレバーにアジャスト機能が付いており、好みに合わせてレバーの遠さを調整することが可能だ。これによってブレーキをかけたときのレスポンスとコントロール性を向上できるのは嬉しい。

発進して最初の数メートルも走れば、外しているところはどこにもなく、すぐに非常に快適な乗り心地を持ったマシンであると評価できるだろう。強いて挙げるなら、ギヤの入り具合はベースモデルの時代からもう何年も正確ではあるものの、他のメカニズムがズバ抜けて快適であることと比較すると、ちょっと粗く感じてしまうところだろうか。まあ、そこはレトロな味付けとも言うことができる。

そして、Z650RSの発表会が行われたフランス・マルセイユの古くて狭い通りでは、最初の曲がり角から称賛に値する敏捷性とイージーさを見せてくれた。フランスの都市の混雑した交通の中にあって、他の車両の合間を縫って走るには、流れるように走るバランス能力が必要だ。その点、このマシンは緩急のバランスに非常に長けており、高く評価できる。

走行ペースを上げると、路面にあるバンプや穴ボコが引き起こす障害に対処する必要があるが、それも快適なサスペンションが上手にいなしてくれる。ベースとなるZ650のように、この新しいZ650RSも日常使いや通勤/通学を簡単にすることを主な目的としているが、王道的なクラシックデザインとしてはもっとも魅力的でふさわしいアプローチのキャラクター設定だと感じる。いつでも身近にヴィンテージの雰囲気を楽しむことが可能だ。

【ライディングポジションは快適そのもの】ベースとなるZ650よりもぐっとアップライトなライディングポジションとなり、快適性が向上。小回りも効いて街中での使い勝手が抜群な仕上がりだ。

ミドルクラスへのステップアップに最適

Z650RSのパラツインエンジンは68psを発揮。低速域では十分な性能を持ってはいるが、高いギヤのままだとガタガタとストールする兆候が出るので、2000rpm未満ではしっかりギヤを落としてから再加速するようにしたい。

一方、中速域から高速域にかけてはこのエンジンのもっとも快適な部分が光り、その潜在能力を引き出すことは非常に簡単だ。タコメーターのレッドゾーンは1万rpmから。そこに至るまでの間にギヤチェンジの荒さは認められず、気になる振動もわずか。とてもきれいに吹け上がってくれる。

キビキビとした足まわりは、さすがにサーキットなど要求の厳しい場所だとハードブレーキングでフロントサスにたわみが出るなどいくつかの限界が現れ始めるが、それでもABSは正確に機能し、アシストスリッパークラッチのホッピング防止機能もしっかりと働いてみせる。激しい走りを交えても平均燃費は18.5km/Lを記録。これならメイン舞台となる日常域で大きな味方となってくれるはずだ。

メーターボックスも美しい。中央の反転液晶部は数字サイズが小さいにも関わらず、直感的に読み取ることができる。さらに左グリップ横のスイッチで欲しい情報へと簡単にアクセスできる。

Z650RSは、非常に快適かつ魅力的で、ミドルクラスにステップアップしたい初心者には最適。このマシンが今シーズンでもっとも美しいマシンであるのは間違いないだろう。

【中高回転域がキレイ】Z650RSは、中高回転域にかけてがもっともキレイに回り、気持ちよく走ることができる。ツーリング用途に使うのにも最適だ。

【動力部はベースの強みをそのまま継承】水冷DOHC4バルブの並列2気筒エンジンは、ベースモデルのZ650と同じ68ps&6.5kg-mを発揮。同様にミッドシップマフラーがマスの集中化をもたらし、機敏なハンドリングに貢献している。

【全域で爽快な出力特性】エンジンは6000rpmまでの低中速回転域におけるパフォーマンスを主眼とするが、それを越えても淀みなく吹けあがり、高回転域では優れたオーバーレブ特性を持たせた。

【中身はほぼ共通】Z650RS[写真左]の基本構成は、Z650[写真右]のコンポーネントをほぼそのまま流用。大きく変わっているのは、シートレールの低床化と前後ホイールぐらいだ。Z900RSではマフラーも差別化されていたが、Z650RSではそれもほぼ同じ。しかし、見事なまでに別イメージを実現している。

【フレームはさらに軽量】カワサキ独自の解析技術でフレームを構成するパイプ径/長さ/厚さを最適化。Z650でフレーム単体15kgだった軽さは、Z650RSでは13.5kgにシェイプアップしている。

【ABSは正確】フロントブレーキにはφ300mmダブルディスク+デュアルピストンキャリパー、リヤにはφ220mmディスク+シングルピストンキャリパーを使う。標準装備のABSは2チャンネルだ。

【メーターデザインは兄貴分譲り】アナログ指針の2眼メーターとその間に反転液晶部を持つZ900RSと同様の構成。液晶部の情報は左手元のスイッチで切り替えられる。

エルゴノミクスを追求したZ650RSのフォルム。燃料タンクは容量12Lでニーグリップ時のフィッティングも重視する。

【国内仕様はローシートか?】シートは欧州向けに820mmのハイシート[写真左]、アジアなどには800mmのローシート[写真右]を標準に設定。

足着き性や快適性のバランスを仕向け地によって調整している。欧州ではローシートがオプション設定。日本仕様でもハイシートがオプション発売されるはずだ。

【カラーバリエーション】欧州仕様は、往年のZ650“ザッパー”風なキャンディグリーンのほかに、レトロスポーティなブラック、ライトリングも黒いモダンなグレー×エボニーの3色だ。

今シーズンでもっとも美しいマシンだ!


※Z650RSの写真はすべて欧州仕様。 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

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