兄弟モデルこそがライバルだった!!

シン・CRF250L対CRF250L[s]徹底比較試乗:標準モデルと足長モデル〈後編〉

ホンダ新型CRF250Lとサスペンションストロークを伸ばしたCRF250L[s]を、オフロードマシン総合誌『ゴーライド』の編集長&副編長が徹底的に乗り比べ、さまざまなシーンを駆け抜けつつその違いを述べた前編。後編となる本記事では、標準モデルとsのポイントごとの細かな違いを紹介するとともに、比較試乗を通して2人がリアルに感じた各モデルのイイ点/イマイチな点まで紹介するゾ!


●写真:長谷川徹 ●まとめ:小川浩康(ゴーライド編集長)

【オガP編集長】’05年型XR250に乗り続けているが、新型CRF250L[s]の完成度の高さに技術の進歩を大いに感じているこのごろ。sと標準モデルの乗り比べは、個人的な次期モデル決定戦という話も…。身長172cm。【副編コイ】旧CRF250Lで各地に赴き、その乗りやすさと信頼性の高さから、CRFのことを”アニキ”と呼ぶほど慕っている。そして”シン・アニキ”こと新型CRF250Lの仕上がりに興味深々だ。身長155.9cm。

【’21 HONDA CRF250L/CRF250L[s]】■全長2210(2230) 全幅820 全高1160(1200) 軸距1440(1455) シート高830(880)(各mm) 車重140kg ■水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒 249cc 24ps/9000rpm 2.3kg-m/6500rpm 変速機6段 燃料タンク容量7.8L ■タイヤサイズF=80/100-21M/C 51P R=120/80-18M/C 62P ●色:エクストリームレッド ●価格:59万9500円 ※( )はs 

サスストローク:スタンダードもsも旧タイプよりアップ!!

シン・CRFのスタンダードとsのストローク量は下記のとおり。スタンダードの前後サスはインナーロッドを短くした専用設計で、サスのユニット全長を短くすることで車高を下げている。並べてみるとその違いがよく分かる。

フロント

スタンダードのフロントサスストロークは、旧タイプLDから+35mm。sは旧CRFから+10mm伸ばされている。●ストローク量:[STD]235mm/[s]260m

リヤ

スタンダードのリヤサスストロークは、旧タイプLDから+50mm。sは+20mm伸ばされている。●ストローク量:[STD]230mm/[s]260mm

最低地上高:空車と1G(乗車状態)でチェック!!

分かりやすく違いを確認できるように高さ210mmのペットボトルを設置し、空車状態と1G(乗車状態)で最低地上高を比較してみた。

空車時

フレーム形状の変更とエンジン搭載位置を上げたことで、スタンダードは旧LDから+35mm、sは旧CRFから+30mm、最低地上高は高くなっている。

乗車時

空車状態と1G(乗車状態)で最低地上高を比較すると、sのほうが沈み込み量が多く見える。サスのこの初期の動きの違いが、低速域での乗り心地の違いとして感じられたのだろう。

フープス通過時のストローク量をチェック!!

スタンダードとsで、同じスピードでフープス(オフロードコースにあるような小さなコブが連続したセクション)を通過して、ストローク量の違いをチェックしてみた。

同じフープスを同じスピードで通過してみると、ストローク量の違いがハッキリと出た。sにはまだ余裕が残っているが、スタンダードはかなり奥まで入っている。コイ曰く「スタンダードはストロークを止められる感じで谷間で衝撃が来ました。sはスムーズに入ってくるのが分かり、衝撃も柔らかくなっています。とくにリヤが違う感じでした」

足着き性による傾き:傾き限界をチェック!!

マシンを傾けた時にどこまで片足で支えられるのかを、身長172cmのオガPが限界まで傾けてみてチェックしてみた。

スタンダードの足着き性のよさが、支えられる範囲を広くしてくれている。傾けていくほどにsはスタンダードより車体上部に重さを感じた。sは相対的に重量マスが高い位置にあることが、その理由だろう。このように、スタンダードの低速域での取りまわしの軽さはトレッキングで武器になる。

足着きチェック:ライポジは身長差関係なくsに軍配!!

身長172cmのオガPと身長155.9cmのコイ、体格差のある2人で足着きをチェックしてみた。

オガP[身長172cm]

「スタンダードは上半身に少し窮屈さを感じてしまう」

「ヒジも上がって、自然とリラックスできるsはベストポジション。トレッキング以外では足着き性も不安なし」

コイ[身長155.9cm]

「片足つま先立ちになりますが、指の付け根辺りまで着けるので、トレッキングモデルに乗ったような安心感があります。ちなみにスタンダードのシート高でも、両足とも地面に着こうとすると、ギリギリ届きません。なので、スタンダードでも腰をズラして片足を着くのはマストです」

「sも点で支える片足つま先立ちですが、1Gの沈み込みが多く、そんなに不安は感じません。車重が軽くなり、シュラウド辺りがスリムになって、好みのライディングポジションをとれるのが好印象ですね」

シン・CRFたち|オガPとコイの○と×

オフロードとオンロードを走破して、トレールマシンとして感じたシン・CRFの気に入ったところ=○/イマイチに感じたところ=×を、2人の結論としてあげる。皆さんのCRF250Lご購入の参考になれば幸いです。

CRF250L[STD]

ホンダCRF250L[STD]

オガPの○:シン・抜群の足着き性

身長172cmでも両足をベッタリと着くことができ、しかもヒザは軽く曲がるくらいの余裕もあるので、不意にバランスを崩してもすぐに足を着ける。この抜群の足着き性は、まさにセロー250と同じ830mmに抑えられたシート高のおかげ。低速トルクも太くなっているので、シン・Lならトレッキングも楽しめる。

コイの○:足着きとエンジン特性のバランス

両足を着くことはできないが、コイ的に必要十分な足着き性。どんな路面や斜面でも、ヒョイッと”無造作”に乗り降りができる。このポイントが高い。しかもそれでいてパワーはまさにCRF!! アクセルを開けるとブリッと底から持ち上げてくるあの感じ。トルクがどうこうってより、純粋にパワーを感じる素早い立ち上がりと、それが高回転まで持続するのがいい。

オガPの×:窮屈さを感じるポジション

着座位置とハンドルの距離はLとsで変わらない。しかし、Lは着座位置が低くなることで、ヒジの位置も下がってしまう。すると、手首の位置もハンドルに対して低くなってしまい、上半身が窮屈になる。シッティングでは尻下がりなポジションに感じてしまい、尻をシートに押し付けているようで尻に痛みを感じた。

コイの×:ストローク感のないリヤサス

気持ちのいいところでヌン!! と身体とマシンの連動を止められる感じがボコボコ道で少しあった。いい意味でも悪い意味でも路面状況がダイレクトに伝わってきて、でも意外にそれが面白くもある。スタンダードは、スピードを楽しむというより、ダートそのものを楽しむ作り込みになっていると思った。これだけのローシート仕様(スタンダードであるが)で、これはまさにシン・トレールの登場!!

CRF250L[s]

ホンダCRF250L[s]

オガPの○:まさにベストなポジション

シッティングでヒジの位置が上がり、ハンドルを上から抑えるように持つことができ、上半身が自然とリラックスできるポジションが決まる。ヒザの角度もきつくなく、スタンディングもしやすい。シュラウド部分がスリムになり、前後方向へのボディアクションもしやすくなった。マシンコントロールしやすいベストポジションが決まる。

オガPの○:クラッチ操作の超絶な軽さ

アシストスリッパークラッチを装備したことで、クラッチレバー操作時の荷重が20%軽減。旧CRFもクラッチは重くなかったが、シン・CRFは明らかに軽さを感じられる。指1本でも疲れにくいから、繊細なクラッチ操作を継続でき、マシンコントロールを楽しめる。減速時にバックトルクの衝撃を感じるが、それほど大きくない。

オガPの×:ナシ

足着きが厳しい時もあるが、それが嫌ならLを選べばいい。ABSはダートでもすぐに介入せず、ライトは明るい。エンジン特性はダートで扱いやすく、大きな振動も出さずに高速巡航もこなし、燃費もいい。トレールマシンとしての完成度はかなり高く、現状で大きな不満は感じなかった。よって×はナシ!

コイの○:ふわふわが最高な前後サス

フープスをうねうねした時に大感動。自分の身体のバネとマシンのサスが完全に連動し、思うがままに縮み、気持ちよく伸びてくれた。コイ如きがそう思うのだから、上手い人はもっと感動するハズ。つねにふわふわと軽快な走りで、大きめのゴロ石が転がる路面では、スピードを上げれば上げるほど安定した走りだった。なのに高速巡航も快適。神。

コイの×:重さを感じるフロントまわり

身長が高くない(降りてマシン取り回し時はタンクに上体が被さる)ゆえか、より重心を高く感じ、取りまわし時にフロントあたりに重さを感じて、マシンを動かす時に少し扱いにくいなと思った。逆にオフ走行時はその重さは何も感じなかった。ただsもSTDも、この重さで舗装路のコーナリングはスッと倒れ込むオンロードモデルのような挙動を見せ、ワインディングでの走りも楽しめた。

個人的にどちらを選ぶ?

オガPの結論

個人的に選ぶならs。ライディングポジション/エンジン特性/サスペンションに不満がなく、オンでもオフでもマシンコントロールを楽しめるからだ。法規制をクリアしつつ、走りを楽しめるトレールマシンを発売できるホンダの底力を感じた。’12年に登場したCRF250Lの完成形が、シン・sだと思う。

コイの結論

最初は足長のsとそれを少し下げただけのスタンダードが登場した…という印象だったが、試乗していい意味でゾワっとした。これは完全に性格とスキルが違う一卵性の双子。これまで以上に足まわりや車体バランスがレーシー寄りに仕上がった”ザ・オフ車”のs、”新たな二輪二足なトレール”としての未来を醸すスタンダード。コイは推しのsで遊び、スタンダードで冒険したい。


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