’01年登場のマキシスクーター、TMAXの最新型に試乗。排ガス規制対応で排気量を31cc拡大した’20年型は7代目にあたる。上位グレード「テックマックス」の実力やいかに。
[◯] 走る・曲がる・止まる、そのバランスが絶妙だ
私が最後に試乗したヤマハTMAXは’13年モデルで、この年に排気量が499ccから530ccへと拡大されている。当時、ABSのない仕様で税込100万円をギリギリ下回っていたが、今回試乗した’20年型の上位グレードである「テックマックス」は、なんと141万9000円に。ちなみに初代は税込77万7000円だったので、こうした価格の推移からも、どんなユーザー層に支持され、20年でどのように進化してきたかが見えてくるだろう。
まずは排気量を561ccに拡大した水冷並列2気筒エンジンから。スロットルをゆっくり開けるとすぐに遠心クラッチがつながり、スムーズに加速態勢に移行。最大トルクの発生回転数である5000rpm付近をキープしながら淀みなく速度が伸びていき、あっという間にスピードメーターは3ケタの世界へ。トランスミッションは一般的なスクーターと同じCVTだが、スロットルを戻したときのエンブレが強めに発生するので、右手の動きに対するキビキビとしたレスポンスはMTのモーターサイクルに近い。そして、独自のピストンバランサーで不快な振動を排除しつつも、まるで泡が弾けているようなかすかな鼓動感は変わらず残っており、これが歴代TMAXに共通する味わいだと思っている。
ハンドリングもいい。タイトコーナーでこそ1575mmという軸距の長さを痛感するものの、スロットルのオンオフで発生する自然なピッチングや、フロントブレーキを残しながらコーナーに進入したときの車体の剛性感は、まさにスポーティなモーターサイクルのそれ。前後サスペンションは乗り心地がいいだけでなく旋回中に踏ん張りが効き、ブレーキはスーパースポーツ並みに初期からコントローラブルだ。基本性能に磨きをかけたからこそ伝わる上質感があり、ゆえに欧州で支持されているのだろう。
電動スクリーン、グリップ&シートヒーター、クルーズコントロールは、ツーリングの質をワンランク高めてくれる装備であり、どれも十分以上の性能を確認。20年という熟成期間の長さが伝わってくる傑作だ。
[△]足着き性は相変わらず。許容できるなら買いだ
エンジンを車体中央に置き、その上にメットインスペースをレイアウトしているので、ボディはどうしてもワイドに。このシート高も走りに貢献していると思うので、無闇に下げるのは野暮だろう。この足着き性を許容できるなら強くお勧めだ。
[こんな人におすすめ]唯一無二の世界。やはり買うならテックマックス
スポーツモデル顔負けの走りは初代から不変だが、最新モデルの神髄はラグジュアリーな世界の構築にある。パワフルだが必要以上に主張しないエンジン、完璧とも言える防風性、動きのいい足回りなど、このパッケージは絶妙だ。
●まとめ:大屋雄一 ●写真:真弓悟史 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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