一般販売化熱望!

ホンダ PCXエレクトリック試乗レポート【優しい乗り味の電動コミューター】

1994年の「CUV-ES」、2010年の「EV-neo」に継ぐ、ホンダが販売する3世代目の電動バイク「PCXエレクトリック」。原付二種区分、バッテリー2個で最高時速60km/h、一充電走行距離41kmと実用性が向上した。残念なことに、2020年4月現在では公官庁や企業、個人事業主向けのリース販売車となっており、一般での購入はできない。今回その実力を確かめる機会を得た電動バイク追っかけタレント・近藤スパ太郎が試乗レポートする。


●文:近藤スパ太郎 ●写真/デザイン:輪 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

近藤スパ太郎[タレント/プロデューサー]

近藤スパ太郎[タレント/プロデューサー] 環境番組のパーソナリティを担当したことを機に、電動バイクの強烈なパワーにひと目ぼれ。俳優・MCの他、企画プロデューサー、芸能プロダクションSPANCHOOSの代表を務める。[URL]近藤スパ太郎SPANCHOOSTwitter

スロットル操作にクイックに反応して「シュイィーン!」と静かに気持ちよく走り出す。でも…、「EV特有の強烈なトルク感はないなぁ」という印象。0〜18km/hぐらいまでの初速はとても良いのだけど、そこから先の加速性能はあえて抑えているようだ。最大トルクの18N/mも、モーター回転数が500rpmの低い時に発生する。最高速度は公表されておらず、筆者の体重では65km/hほどがMAXだ。最高速度や加速感を求めると航続距離が減るので、どっちを優先するか…なのだろう。とは言ってもクルマの流れにはすぐに乗って走れるし、急坂だってスムーズに登るから走行中のストレスはない。音も振動も小さく回生ブレーキもないので、スロットルを戻しての惰性走行も楽しいバイクと言える。

【HONDA PCX ELECTRIC】■全長1960×全幅740×全高1095 シート高760(各mm) 車重144kg ■原動機EF01M(交流同期電動機) 定格出力0.98kW(1.3ps) 最高速度:60km/h強 最高出力4.2kW/5,500rpm 最大トルク18Nm/500rpm 空冷リチウムイオン電池 20.8Ah×2個 専用充電器による充電(1個約4時間)/AC100V外部電源によるプラグイン充電(車載状態で2個同時6時間) バッテリー電圧:50.4V 一充電走行距離:41km(60km/h定地走行テスト値 1名乗車時) ■タイヤサイズ:フロント100/80-14M/C48P、リヤ120/70-14M/C55P ●車両区分:原付二種 ●運転免許:AT小型限定~ ●乗車定員:2名 ●車体色:パールグレアホワイト ●参考車両本体価格:72万9,500円(※法人企業、個人事業主、官公庁限定のリース専用車。参考価格は次世代自動車振興センターCEV補助金対象資料より)

股下73cmの筆者でも足着きベッタリ。車格はエンジン版PCXシリーズとほぼ同等。車重は144kgとコチラの方が約14kg重いが、重いという印象はあまりなく、取り回しも走行中の不安もまったくなかった。[身長173cm、体重77kg]

そして技術的に注目すべきは、ホンダ二輪としては初の「バッテリー2個直列」という点だ。2個直列にすることで96V系のEVシステムにし、最大で4.2kWを発生するモーターを積んでスムーズな走行と登坂に必要なパワーを確保しているのだ。そしてこの技術はフィリピンなどで実証実験車両としても実績を積み、4世代目として登場したビジネス用電動二輪車「BENLYe:」(ベンリィイー)の技術に引き継がれているのだ。

だが残念なことに、PCXエレクトリックは公官庁や企業、個人事業主向けのリース販売車で、一般販売されていない。でも現在、宮古島でレンタルバイクとして活用されているので、気になる人は観光のアシとしても楽しめるだろう。そして企業や個人事業主がリース購入する場合は、契約するリース会社や購入期間、プランなどによって多少価格が変動するそうだ。今(’20年2月13日時点)であれば、クリーンエネルギービークル補助金の対象車両であるため、国の助成金11万1000円と、地方自治体によっては自治体からの助成も活用できてしまう。ちなみに東京都の場合、助成額は33万3000円。合計44万4000円が助成されるのは大きいと言える。

【急坂でも速度は落ちない】急な坂道でも、スピードが落ちるコトなくスムーズに登る。でもEV特有の太いトルク感は、あまり感じない。

ホイールベースを延長し、1チャンネルABSも装備

(左)PCXのフレームがベースだが、エンジンからモーターになったことによる重量増化や重量バランスの変化に合わせて、リヤサスペンション下の懸架に専用設計のパワーユニットハンガーを搭載。リヤサスペンションも全長を長くし、最適なディメンションになっている。(右)フロントのみ作動するホンダ独自の1チャンネルABSを装備。専用設計の前後サスペンションはショーワ製。

「モバイルパワーパック」はシート下に2個収納

(左)1個が48V、容量20.8Ah、重さ約10kgの脱着可能なバッテリーが2個搭載されている。CPUの働きで、走行時は2個のバッテリーを直列で繋ぎ、充電時には並列になるのが特徴。ラゲッジBOXには500mlのペットボトルと350mlのステンボトルを入れることができた。(右)レバーを倒すとバッテリーがロックされ、同時にコネクターが上昇してバッテリーに接続される。

EVシステムの情報が見やすいインストゥルメントパネル

(左)電動バイクは電源がONでも音がなく、ON状態の認識がしにくいため、スロットルのうっかり操作で車両が暴走してしまうことがある。起動中はメーターパネルに丸マークが表示され、電源がONであることがひと目でわかる。バッテリー残量もグラフと%の表示で見やすい。(右)プラグイン充電中はパネルに通電表示とバッテリーの充電具合が%表示されるので分かりやすい。

Honda SMART Keyシステムを採用し使い勝手を向上

(左)他のPCXシリーズと同じく、ポケットからキーを取り出さなくても、スマートキー自体のON/OFFや、ハンドルロック、アンサーバック(ボタンを押すと車体から音やウインカーが作動して場所を知らせる)などの機能を持つHonda SMART Keyシステムを採用。(右)車体が大きな揺れを感知すると車体のアラームが鳴る盗難抑止機能も、リモコンでセットできる。

充電方法は2通り。プラグイン充電は2本を同時に速く充電できる

ホンダの二輪としては初となる2個のバッテリーを搭載し、直列接続で96V系のEVシステムにしている。容量は1個あたり20.8Ah。

(左)車両に内蔵された電源コードで、100Vコンセントですぐに充電ができる。家庭用の100VコンセントでOK! (右)ガソリン車PCXの給油口と同じ箇所のスペースが、約2mの電源コードの収納BOXになっている。

(左)2個のバッテリーは走行時は直列接続だが、プラグイン充電時は並列接続に切り換わり、同時に充電できる。ゼロからフル充電までは約6時間だ。(左)バッテリーを外して専用充電器で充電も可能。1個の充電時間はゼロからフル充電まで約4時間。

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