ソケット工具専門メーカー・山下工業研究所(Ko-ken)の会社設立50周年を前にした2009年、次世代向けの提案として始まった「Z-EAL」シリーズ。コンパクト化の追求に不可欠だった全社一丸の取り組みに迫る。
●文:モトメカニック編集部 ●取材協力:山下工業研究所 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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開発製造一貫体制だから実現できた、ソケットの常識を超えた背の低さ
窮屈な自動車整備での使い勝手に優れたソケット工具が欲しい。市場の要望とコーケンの提案で立ち上がった新企画は「ショートソケットプロジェクト」の名称だった。「Z-EAL」となって10年あまり、今ではフルラインナップが揃うが、始まりは「限界まで短いソケットを作る」という思い切ったものだった。この明確な目的のため、コーケンではJIS/DIN規格に制限されず、実用的で実践的なソケット開発に取り組んだ。
サイズの小さなソケットは、ラチェットハンドルを差し込む四角凹部と六角部を両側から同時に鍛造する。この時「パンチ」と呼ばれる鍛造工具が向かい合わせになるため一定の隙間が必要だが、全長を縮めるにはその隙間もなるべく少なくしたい。そのため製造工程から見直しを行い、汎用ソケットより隙間を格段に狭めることに成功した。
四角凹部の公差も見直し、駆動工具のガタを排除。自動車ではフランジ付きボルト/ナットが多いことに注目して、JIS規格より六角部の深さも浅くしたのも狭い空間での作業性向上のため。
これらは一例に過ぎないが、数々のこだわりを製品に具現化できたのは、鍛造から機械加工まで自社内で行っているから。そして各部門の力を総動員したからこそ、Z-EALソケットは支持され続けているのだ。
ハンドル差し込み部と六角開口部の関係
差込角3/8の8、10mmソケットは六角部と四角凹部の関係で、両側から同時に鍛造しなくてはならない。この際の鍛造パンチの隙間も見直して短縮化。六角部の浅さもショート化への割り切りだが、面取り角度を小さくすることでボルトナットとの接触面積を確保している。四角凹部のディンプルもラチェットハンドルのボールを強く保持できる形状としている。
3/8 6角ソケット 3400MZ-14 ●希望小売価格880円(税別)
3/8 6角ソケット 3400MZ-19 ●希望小売価格880円(税別)
円柱状の素材を連続成型でソケット状に加工
「パーツフォーマー」はコイル状に巻かれた鋼材から、短時間で大量の製品を製造できる多段鍛造設備。これは常温の素材を加工する冷間鍛造製法だ。
パーツフォーマーは素材からソケット原型まで5つの工程で鍛造する。1回プレスするごとに1段階ずつ移動して、1時間で3000個以上製造できる。
ヘックスレンチのように見える六角棒は、円柱の素材に押しつけることで六角部を成型する鍛造パンチ。四角凹部を成型する鍛造パンチとセットで使用する。
パーツフォーマーによる鍛造工程では、素材はこのように成型される。コイル状で投入され、一工程進むごとに右のようなソケット形状になっていく。
自動化された工程でも熟練した人の目は必要だ。高精度で量産された中から抜き取り、開口部や外周の肉厚チェックなど機械加工前の検査を行う。
Z-EALソケットの原型。六角部のサイズによっては、四角凹部との寸法に差がなく両面から同時に鍛造する。そのため、全長の短縮化のために壁を薄くすることが必要。
機械加工や熱処理も自社で行い高い品質を維持
鍛造で成型する六角部と四角凹部に対して、ソケット外周やボールディンプルはNC旋盤で加工され、最終製品と同じ形状に仕上げられる。
ヘックスビットの六角軸は、円柱を60°ごとに切削できる多角形旋盤で切削加工する。さまざまな加工のため、社内には100台のNC旋盤が稼働している。
差込角1/2のインダストリアル仕上げのヘックスビットは1ピース構造だが、Z-EALのヘックスビットはソケットと軸部が2ピース構造となる。
機械加工が終わったソケットは、製品番号とサイズが一個ずつ刻印される。品質確保のため、定期的に抜き取って文字の並びや傾きをチェックする。
表面処理前の最終段階である熱処理は、工具の性能を決定する重要な工程。コーケンでは自社専用熱処理設備で焼き入れと焼き戻しを行っている。
バケットが熱処理釜に入る際の炎は、内部に余計な酸素を入れないためのカーテンの役割を果たす。焼き入れで硬さ、焼き戻しで粘りを与える。
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