隠れたロングセラー60年選手

ホンダ新型CT125への道 “ハンター”の系譜を辿る【’70年代〜現代のクロスカブへ】

60年に迫る歴史を重ねてきたホンダCTシリーズ。歴代スーパーカブと共に歩みつつ、ハードな走りに応えるため独自の進化を遂げた、隠れロングセラー”ハンター”の系譜をひも解く。前稿の’60年代ラインナップ紹介に引き続き、本稿ではロングセラーとなったCT90(’66〜)から後継モデル・クロスカブ(’13〜)までを紹介する。


●まとめ:沼尾宏明 ●写真:真弓悟史、鶴身健 ●取材協力:ホンダモーターサイクルジャパン ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

CT200のユニットをOHV→SOHC化したCT90(K0)が’66年にデビュー。同時に排気量を86.7→89.5ccへ高めた。他はほぼ同じ仕様だったが、翌年Wスプロケットの代わりにレバー操作ひとつで2次減速比を切り変えられる副変速機を追加。4速ミッションの実質8速化を実現した。さらに飛躍したのは’69年型のK1。フロントフォークをボトムリンク式→テレスコピック式とし、同時にサイドエアクリーナー+ハイマウント吸気ダクトを投入。高い評価を受け、’79年まで続くロングセラーとなった。

【HONDA CT90 TRAIL90】■全長1870 全幅695 全高1050 軸距1220 最低地上高165(各mm) 車重91kg(乾)■空冷4スト単気筒SOHC2バルブ89.5cc 7ps/8500rpm 0.67kg-m/5000rpm 燃料タンク容量6.5L ■タイヤF=2.75-17 R=2.75-17※写真・諸元は’73年型

【スポーティな心臓に後方吸気を融合】心臓部はスポーツバイクのCS90がベース。’66〜’68は前向きのサイドドラフトキャブだったが、’69以降で後方吸気+アップタイプの導入口を採用。大柄な米国人には邪魔だったハンドル下エアクリーナーはシート左側に移設した。

【サブタンクを標準で採用】’72年型からトリップメーターに加え、リヤ左後部にサブ燃料タンクを標準装備。山奥でのガス欠に備えたアイテムで容量は1.7L。CT110では人気&定番カスタムとなった。

キャンピングカーへの搭載を考慮し、’70年型からハンドルの回転機構を搭載。中央のレバー操作でハンドルの向きを90度に変更できる。

大刷新した’69年型C’T90(K1)。’67以降、レバーで2次減速比が切り替え可能となり、登坂力はHIで18度、LOで25度を実現した。

北米で発行された’71年型K3のカタログ。(左上)大柄なライダーが山中を軽快に走る姿が印象的。(左下)K1からフレームカバーやフォークブーツを採用し、スタイルも洗練されている。(右)。「6000フィート(約1800m)以上の高山でもパワーが落ちないキャブレターを装備する」と説明されている。

デュアルレンジによる8速化を強調した’72年型K4のカタログ。この年式から鋲付きシートを新採用した。

CT110 TRAIL110[海外|国内 ’80〜]排気量を拡大、強心臓を積む決定版

’80年にCT90が110に進化し、北米と豪州で販売開始された。エンジンはほぼ専用設計で、ボアを2mm、ストロークを3.9mm拡大しカブ系最大の105ccに到達。初期型は副変速機を備えないが、不評のため翌’81年型から採用する。特に成功したのは豪州とニュージーランドで、農業や郵政用として’12年まで日本から供給され続けた。

’82米国モデルのカタログ。北米仕様の呼称はTRAIL110だが、カタログではCT110と記載。

北米仕様は、豪州仕様にはないハンドル回転機構やサブタンクを標準で備え、’86年まで生産された。

2年間のみ日本仕様もラインナップ

’81年10月から国内でも市販されたが、惜しくも2年で販売終了した。コストダウンのため、副変速機がなく、ポイント点火の初期型がベースだった。

【HONDA CT110】■全長1905 全幅755 全高1050 軸距1220 最低地上高175(各mm) 車重87kg(乾)■空冷4スト単気筒SOHC2バルブ105cc 7.6ps/7500rpm 0.85kg-m/6000rpm 燃料タンク容量5.5L ■タイヤF=2.75-17 R=2.75-17 ※諸元は’82国内仕様

【日本ではアウトドアイメージを強調】「ワークブーツ」に例えた国内のカタログ。時代の影響か、狩りの写真やハンターカブの名称はなく、アウトドア指向を強調している。当時は不人気車だったが、’90年代にブームとなり、多くの車両が逆輸入された。

CT110 POST OFFICE CUB[海外 ’81〜]信頼性を高めた豪州向け郵政仕様

現在、豪州には郵政仕様としてクロスカブが納入されるが、’12年までCT110を導入していた。STDとの相違点は、6→12V化した安定の電装系と、動きが滑らかなスプリング内蔵型のセリアーニ式フロントフォーク。別体式メーターも特徴だ。副変速機は非装備。

【HONDA CT110 POST OFFICE CUB】■全長1905 全幅755 全高1050 軸距1220 最低地上高175(各mm) 車重91.1kg(乾)■空冷4スト単気筒SOHC2バルブ 105cc 7ps/7500rpm ※写真、諸元は’05豪州仕様

HUNTER CUBRA[国内 ’97〜]CT風の純正パーツ群まで登場

’90年代後半になると、ハンターカブブームが一段と過熱化。そこでノーマルのカブをCT風にする純正アクセサリー「ハンターカブラ」が’97年にリリースされた。「カブラ」とは、カブ用の洒落たパーツシリーズで、CT風としてはアップマフラーやアンダーガード、前後大型キャリアなど8アイテムをリリース。

写真は’95東京モーターショーに展示されたアクセサリー装着車だ。

CROSS CUB[海外|国内 ’13〜]約30年ぶりの新作トレール

アドベンチャー人気が高まる中、’13年に初代クロスカブがデビュー。久々に登場したオフ風カブで、CTの後継的モデルと言える。ベースは、中国で生産された’12スーパーカブC110の豪州向け郵政仕様だ。外観は、ボディマウントのガード付きヘッドライトとレッグシールドが特徴。前後17インチにロングストロークサスを与え、車体はノーマルのカブより大柄だ。’18年、国内生産の2代目にバトンタッチした。

【HONDA CROSS CUB】■全長1945 全幅815 全高1150 軸距1225 シート高784 最低地上高155(各mm) 車重105kg(装備)■空冷4スト単気筒SOHC2バルブ109cc 8ps/7500rpm 0.87kg-m/5500rpm 燃料タンク容量4.3L ■タイヤF=2.75-17 R=2.75-17 ※諸元は’13国内仕様

重量物の積載を考慮したカブプロ110と同様の足回りを前後に装着。クッション性が高く幅広のシートは専用だ。タンデムステップは備えずソロ仕様となる。

2代目クロスカブをハンターカブ風に仕立てた、クロスカブ改・ルアーマガジンスペシャル。東京モーターサイクルショー2019のヤングマシンブースに展示された。

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