隠れたロングセラー60年選手

ホンダ新型CT125への道 “ハンター”の系譜を辿る【’60年代を駆け抜けた5モデル】

60年に迫る歴史を重ねてきたホンダCTシリーズ。歴代スーパーカブと共に歩みつつ、ハードな走りに応えるため独自の進化を遂げた、隠れロングセラー”ハンター”の系譜をひも解く。本稿では初代北米仕様CA100T(’61〜)から日本専用の原付一種CT50(’68〜)までを紹介する。


●まとめ:沼尾宏明 ●写真:真弓悟史、鶴身健 ●取材協力:ホンダモーターサイクルジャパン ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

1959年からアメリカで初代スーパーカブC100の輸入が始まった。間もなく、西部のディーラーをを中心にダート仕様への改造が流行。そこで’61年3月、アメリカホンダ自らが発売したモデルがCA100Tである(当初の呼称はC100T)。同社初のトレールバルバイクで、山道や泥地を走るためにフロントフェンダーやレッグシールドを撤去し、アンダーガードを追加。森林火災の防止用に側方排気マフラーを与えた。

【HONDA CA100T TRAIL50】■全長1803 全幅559 全高940 軸距1181 最低地上高140(各mm) 車重55kg(乾)■空冷4スト単気筒OHV2バルブ49cc 5ps/9500rpm 0.34kg-m/8000rpm 燃料タンク容量3L ■タイヤF=2.25-17 R=2.25-17 ※写真、諸元は’61北米仕様

登坂力を高めるため、巨大なスプロケットを採用。アリゲータータイプの新型マフラーも特徴だ。広告ではライバルより軽く、狩り場への移動に適したマシンとアピール。車体色は赤だ。

CA105T TRAIL55[海外 ’63〜]シンボルのアップマフラーを投入

CA100Tは好評を博し、’62年にはC105系の54ccユニットを積むC105Tにモデルチェンジ。さらに翌年、CA105Tが生まれた。従来はダウンタイプだったマフラーをヒートガード付きの新開発アップマフラーに変更。さらに、特徴的な大小2枚のドリブンスプロケットを採用した。チェーンを外して掛け替えることで、普段使いと山道に対応した機構だ。

【HONDA CA105T TRAIL55】■全長1725 全幅575 全高945 軸距– 最低地上高–(各mm) 車重73kg(乾)■空冷4スト単気筒OHV2バルブ54cc 5ps/9500rpm 0.38kg-m/8000rpm 燃料タンク容量3L ■タイヤF=2.25-17 R=2.50-17 ※写真、諸元は’63北米仕様

グッとCTらしいスタイルに。右写真は、アメリカの優良ディーラーに贈呈された非売品のメッキ仕様。ダウンマフラーのため、’62C105Tと思われる。

ハンターカブC105H[国内 ’62〜]有名な愛称は日本が発祥

海外の人気にあやかり、国内でも’62年型としてハンターカブ55(C105H)が発売。初めて「ハンターカブ」と名乗ったのが本作で、以後シリーズの愛称として定着した。だが、正式に車名として採用したのは、この105Hと翌年のC100Hのみ。海外では全く通じない。

なお、実際に販売されたC105Hは右写真と異なり、ノーマルカブとほぼ同じスタイルだった模様だ。翌年、49ccのC100Hに変更するが、やはりSTD然とした仕様が不評。ほどなく海外のCA105Tと同様のスタイルで再登場したようだ。

C105H発売当時の広告では、まさにハンターが登場し、「走る+射つ」などのキャッチが。写真は大型スプロケとサイドキャリア、アリゲーターマフラーなどを備えるも、実車の仕様はほぼノーマルだったようだ。

CT200 TRAIL90[海外 ’64〜]完成度を高めたファーストCT

ライバルに対抗すべく、’63年に登場したスーパーカブC200のパワフルなOHV87ccユニットを搭載。4段変速に自動遠心クラッチを追加し、CM90ベースのアンダーボーンフレームに搭載した。アップマフラーやWリヤスプロケを踏襲しながら、エンジンガードを兼ねたサブフレームをはじめ、アップフロントフェンダー、可倒式ステップなども新たに投入。トレールバイクとしての適性を一段と高めた。現代まで続く「CT」の名を初めて冠したモデルとなり、’66年まで販売。

【HONDA CT200 TRAIL90】■全長1800 全幅650 全高980 軸距1186 最低地上高137(各mm) 車重81kg(乾)■空冷4スト単気筒OHV2バルブ86.7cc 6.5ps/8000rpm 0.65kg-m/6000rpm 燃料タンク容量6.4L ■タイヤF=2.50-17 R=2.75-17 ※写真、諸元は’64北米仕様

【バーハンドルなどで一段と本格的に】ハンドルは鋼板プレス→パイプ製に。右足元に加え、左レバーでもブレーキが操作可能になった。ヘッドライトも大型化され、「CT」のスタイルが確立された。

90ccの排気量に加え、ショート側のスプロケットはウイリーするほど低速が力強い。当時のカブと比べてもパワフルさは随一だ。

CT50[国内 ’68〜]日本専用の原1ハンター

販売不振に終わったC100Hから久々に復活した国内仕様。スーパーカブC50がベースで、CTとして唯一のゼロハンとなる。’67CT90譲りの副変速機を国内バイクで初採用し、3速ロータリーの減速比をハイ&ローに切り替え可能。抜群の登坂力を示したが、時代が早すぎたせいか約1年で生産終了した。

■全長1805 全幅720 全高965 軸距1190 最低地上高155(各mm) 車重71.5kg(乾)■空冷4スト単気筒SOHC2バルブ49cc 4.8ps/10000rpm 0.37kg-m/8200rpm 燃料タンク容量6L ■タイヤF=2.25-17 R=2.75-17 ※写真、諸元は’68年型

’68年のカタログ。ごく一部の広告以外、ハンターカブの名は使われていない。副変速機は国内のみ「スーパートルク」と呼称。

【超充実のオプションでゴルフから雪道まで対応】フロントのガンホルダーや、ゴルフバッグが積めるサイドキャリア、スノータイヤなど豊富なオプションを用意。様々な用途に使える万能性をアピールした。登坂力は減速比の切り替えで14→18度にアップ可能。

次稿では”ハンター”の系譜の後編として、CT90 TRAIL90(’66〜)からクロスカブ(’13〜)までを紹介する。

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