イギリス/スペインメディアによるダブルインプレッション!

2019 ホンダ新型CB650R/CBR650Rの試乗インプレッション[前編]

南スペインのアルメリアで行われたCB650R & CBR650Rの試乗会に、英国WEBメディアのMoreBikesとスペインのSOLOMOTOが参加。2つの異なる価値観を持つメディアによるダブルインプレッションをお届けしよう。本稿はその前編として、イギリスMoreBikesのインプレッションを掲載する。

TEXT:MoreBikes(UK)/SOLOMOTO(ESP) PHOTO:Honda

MoreBikes(UK):予期していなかった快適さとスポーティさ

なんと驚くべき多様性だろう! CB650RとCBR650Rは、そのコンポーネントの大部分を共有していながら、全く異なるライディングフィールをもたらしてくれるのだ。

ホンダは長年にわたって数々の素晴らしいバイクを製造してきたが、一部の象徴的なモデル、たとえばファイアーブレード(CBR1000RR)やアフリカツインといったもの以外では、一言で表現しにくいものも多い。私は未だにX-ADVをなんと言い表していいものかわかっていないのだ。

とはいうものの、非常にワイドレンジなラインナップで成功を収めているホンダにとって、ライダーの背筋に電撃を走らせるような刺激をもたらすことは、それほど重要ではない。私たちが暮らすリアルワールドにおいて実用的で扱いやすいホンダのマシンは、滅多に私たちを驚かせることはない。

ところが、今回テストしたブランニューのCB650RとCBR650Rの2車は、予想外のサプライズをもたらしてくれたのだ。それもダブルで。

ホンダがまず私たちに伝えたのは、高回転域でのパワーの増加と軽量化にフォーカスしたモデルチェンジである、ということだった。ライディングポジションも変わっていて、よりスポーティになった全体的なパッケージによくマッチしている。

そう聞くと、このニューマシンの面白さを感じ取るには限界まで攻めないといけないような気がしてしまうものだ。そして正直なところを言うと、そうすることでこそワクワクできるマシンなのかと思っていた。なぜなら、従来の“F”モデルはリアルワールドにおいて、けっして悪いバイクではなかったからだ。そう、真実を知るには実際に走るしかない……。

最初の驚きの瞬間はすぐにやってきた

まず借り受けたCB650Rを目の前にすると、写真からイメージされるよりも、はるかにリアルワールドでいい印象だ。4in1のマフラーは1970年代のCB400フォアにインスパイアされたもので、サイドに流れるようにまとめられたエキゾーストパイプはとても趣味がよい。

フロントサスペンションの新しい倒立フォークと、ラジアルマウント化された4ピストンブレーキキャリパーによって、バイクの正面はよりスポーティな印象だ。短く高くなったサブフレーム(シートレール)はテールまわりをコンパクトにし、全体的にも高級感のあるたたずまいになった。丸型のヘッドライトと最小限のサイドパネルは、CB1000Rと同じように“ネオスポーツカフェ”のコンセプトを体現している。CB650RとCBR650R、どちらのニューマシンも、従来型より大人びて見える。

【HONDA CB650R 2019】●日本仕様価格:96万1200円 ●色:黒、赤、銀

CB650Rを走らせると、まだ残っていた私の先入観は簡単に粉砕されてしまった。まず、とても短時間で自然に馴染むことができたのだ。このバイクがどのような性質を持っているのか理解するのにわずかな時間が必要だったが、それは少し後ろに、そして少し高くなったステップ位置と、低く遠くなったテーパードハンドルバーが作り出すライディングポジションに懐疑的だったからだ。

紙の資料で眺めているぶんには快適性を犠牲にしてスポーティさを採ったようにも思えたが、実際には居心地のいいものだった。街中でハンドルバーに寄り掛からないようにだけ注意が必要ではあるものの、郊外に出て速度が出てくると、風圧によってその問題も取り払われてしまう。

エンジンは高回転化でむしろ全体的になめらかに

アップデートされた直列4気筒エンジンは従来型よりも5%の出力向上を果たしている。95psのピークパワーは1万2000rpmで生み出され、最大トルクは8500rpmで得ることができる。これらの数値からは、バイクを思い通りに前に進めようと思ったらエンジン回転をかなり高める必要があるように思われるが、実際はローエンドでも十分なトルクがある。

さらに、ホンダのエンジニアは従来型のエンジンで悩ましい点だった7000rpm前後におけるパワーの落ち込み(いわゆるトルクの谷)をなくすことに成功し、むしろ加速は全体のレンジを通してなめらかになった。

回転を低く保つためにギヤを高くすると、スムーズで落ち着いた走行が可能になるが、パワーユニットが提供する全てのものを受け取りたいと思うなら回転を上げる必要があるだろう。

7000rpm前後からのピックアップは目覚ましく、バイクは楽しげに走り回るようになる。かといって、けっして過剰になることはなく、あなたは常にバイクの上で自分がバイクのボスであるという感覚を楽しむことができるだろう。これがパワフルなリッターバイクだったら、こうはいかない。

高回転域でのパワーアップは一目瞭然だが、低回転のトルクデリバリーがフラットになって中間域の谷が消えていることにも注目。これがむしろスムーズさを生んでいる。

また、エンジンが提供するサウンドも、もうひとつのサプライズだった。ミドルクラスの直列4気筒は、スロットルを開ければ乗り手を満足させるだけの咆哮を発する。新しい2チャンネルの吸気ダクトとテールの短いマフラーによる複合的なエンジンサウンドは、けっして偶然の産物ではない。マフラーエンドの出口は上向きに持ち上げられ、そのサウンドをよりダイレクトにライダーに送り届ける設計だ。

このネイキッドスポーツバイクに乗り終えた私の身体に残ったのは、その驚くべき多様性への称賛だった。このマシンは街中とバックロード(郊外の道)の両方をうまくこなす。それは優しく、しかし活き活きとしたパワーデリバリーによるものだ。そして快適なライディングポジション、幅広で軽快なハンドルバーもその助けになっている。CB650Rはクルージングとブルーシング(激しい走り)、そのどちらのゲームも楽しめるバイクだった。

CB650Rとは明らかに異なるスポーティさ

CB650Rに試乗し、昼食を終えたあと、我々にはCBR650Rが手渡された。そこで私はまたしても先入観にとらわれてしまっていた。

それは、CBR650RがCBほどに私を感動させはしないだろう、ということだ。なぜなら、ちょっと前に新型の500cc版CBRとCB(CBR500RとCB500F)を比較試乗したとき、私はそのスポーティな兄弟(CBR)よりもCBのほうがはるかに楽しめていたからだ。

そう、読者諸兄のご推察のとおり、私はまたしても間違っていた……。

【HONDA CBR650R 2019】●日本仕様価格&色:103万6800円(黒)/106万9200円(赤)

わずか数マイルを走ったところで、私の誤った考えはすでに遠い過去の記憶のようになってしまっていた。私は、予期しなかった快適な乗り心地で走りを楽しんだ。エンジンは、これも予期していなかったスリルをもたらしてくれた。そして最大の衝撃は、CBRとCBは多数の部品を共有しているにもかかわらず、明らかに異なるライディングフィールを感じさせてくれたという事実だったのだ。

サスペンションは両方のバイクで同じであるにもかかわらず、CBRのフロントは少しソフトに感じる。これはネガティブな意味ではなく、バイクは変わらず安定していて、激しいブレーキングを試してみても厄介なノーズダイブはない。CBとは感触が少し異なっているものの、それは上半身がより前傾したライディングポジションによって、自分の体重をより強くフロントに載せることができるからだろう。

フットペグ(ステップ)とシートはCBと同じ位置にあるにもかかわらず、クリップオンされたハンドルバーは、乗り手によりスポーティなフィーリングを与えてくれる。しかし(またしても!)驚くべきことに、それでもとても快適だったのだ。もしも南スペインのアルメリアから地元のイギリス、ホーンキャッスルまでの2500kmをCBRに乗って帰れと言われたなら、私は喜んでそれを引き受けただろう。

ネイキッドバイクのCBに乗ったあと、CBRのようにフェアリングとスクリーンを備えたバイクに乗るのはいい気分だ。それはとても大きな違いをもたらし、あなたが風にもたれかかることなくリラックスしてライディングに集中することを可能にしている。これなら、あなたはこの先、腹筋運動の回数を増やす必要などなさそうだ。

良いことがあったし、そうでもないことも

私がCBとCBRの両方について複雑な気持ちを持っていたことのひとつは、新しいLCDメーターパネルだった。見た目はよく、読みやすいが、太陽が上に来ると、明るさをいっぱいに調整しても数字がはっきりとは見えない。

ポジティブなことに、ブレーキは非常に優れている。新しいラジアルマウントの4ピストンキャリパーと2枚のφ310mmディスクは素晴らしいフィーリングだ。バイクはクイックかつコントローラブルに、止まりたい場所に止まることができる。

リヤブレーキはシングルピストンキャリパーだが、ブレーキングパワーがもっと必要なときや少しだけスピードを削り落としたいときに助けになる。どちらもABSを標準装備しており、ブレーキを強くかけると少しの間ハザードライトを作動させるという緊急機能もついている。

私たちの試乗中にも、いくつかの鋭いコーナーで何人かのライダー激しくブレーキをかけたとき、ハザードライトが数回点滅するのを見ることができた。これは実によくできている。

ホンダのモノ造りの品質がどれほど優れているのかについてはよく知っているので、そのことで驚く点は本当になかった。しかし、ギヤボックスとクラッチがどれほどなめらかに動いたかについては言及しておきたい。

テストバイクはオプションのクイックシフター(アップシフトに対応)を装備していて、これは私が今までに使用したなかで最高のものだった。とはいえ、この295ポンド(約4万2000円)のオプションを付けなかった場合であっても、ギヤシフトはきわめてスムーズであり、新しいアシストスリッパークラッチによってレバーの操作力が12%軽減されていることにも言及しておくべきだろう。

では、CBとCBRのどちらが勝者なのか?

私は2台のバイクの上で、予想していたよりも良い時間を過ごすことができた。2車がどれほど多用途で使い勝手がよく、笑顔をもたらすものかを知ることは悦びだった。試乗しながらずっと、私が選ぶならば……と考えていたが、実はCBのほうがめいっぱい楽しめると予想していた。なぜなら、私はそれほどスポーツ志向のライダーではないからだ。しかし、CBRはその快適性やハンドリング、スポーティさで私を打ち負かしたのだ。

もはや私にはどちらかを選ぶことはできない。まあ、おそらくCBのほうが700ポンド(10万円弱)ほど安いことが決め手になるだろうとは思う。いやいや、しかしPCP(いわゆるロ ーン)を利用すれば、また話は違ってくるだろう。……ああもう知らない! あなたが決めてくれ!

後編に続く

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