2月8日にフィリピンで初お披露目された新型ハイエース。新型のプラットフォームやセミボンネットの採用など、1BOX型である現行型とは大きく変わることとなった。ボディサイズもグローバル向けに巨大化し、新型ショート・標準ルーフで全長が現行型に対し+570mmの5265mm、全幅が+255mmの1950mm、全高が+10mmの1990mmと日本の4ナンバーサイズ(全長4700mm以下、全幅1700mm以下、全高2000mm以下)を大きく上回るサイズとなった。ホイールベースはなんと+640mmの3210mmに達している。これには既存のハイエースオーナーや次期型を望む1BOXファンは驚いただろう。トヨタ自動車もそれを分かってかニュースリリースには「市場環境が異なる日本においては、従来モデルのハイエースを継続していきます」とわざわざ一文を追加したほどであった。
しかし、本当にそうなのだろうか!? 現行型ハイエースはフルモデルチェンジから約15年が経過。使い勝手のいい1BOX型ボディであるものの、ボンネットがなく、クラッシャブルゾーンも万全とは言えない。プリクラッシュセーフティを中心とする先進安全装備・トヨタセーフティセンスを最新改良で装備したものの、今後の安全基準や装備の進化に15年を経過したプラットフォームで追従できるのか、大きな不安が残るのも事実。トヨタ自動車がアナウンスしたとおり、本当に日本向けハイエースのフルモデルチェンジはないのだろうか!?
ここで1台のコンセプトカーを取り上げてみたい。ハイエースファンや1BOXファンならご存じであろう、2017年東京モーターショーに出品されたトヨタ車体株式会社の「LCV CONCEPT(ライト・コマーシャル・ビークル コンセプト)」だ。ミニバンでも既存の1BOXでもない、どうみても次期ハイエース!? というイメージのコンセプトカーである。
ここでトヨタ車体について説明しよう。1945年にトヨタ自動車工業から分離独立、トラックボディメーカーとして発足したのが始まりで、2012年に完全子会社となっているが、トヨタブランドのアルファード/ヴェルファイアやヴォクシー/ノアなどのミニバン、ランドクルーザーなどのSUV、福祉車両などを開発・生産している完成車メーカーなのだ。もちろんバンモデルのハイエースも初代から生産しており、今回発表された海外向け新型ハイエースもトヨタ車体が手がけている。
さて、話をコンセプトカーのLCV CONCEPTに戻そう。このコンセプトカーは当時、ベースモデルとなる「LCV D-CARGO CONCEPT (エル・シー・ブイ ディー・カーゴ コンセプト)」と内装モデルのみの展示となったが、広い室内を活かした、ビジネスマンがゆったりくつろいで移動できる空間を提案し、テレビ会議もできるディスプレイも装備。ハイヤーとしての使用を想定している「LCV BUSINESS LOUNGE CONCEPT (エル・シー・ブイ ビジネス・ラウンジ コンセプト)」、そして車椅子アスリートがひとりで競技用具を積み込み、自身で快適に移動することを想定した内装モデルである「LCV ATHLETIC TOURER CONCEPT (エル・シー・ブイ アスレチック・ツアラー コンセプト)」の3タイプが披露された。
中でもLCV CONCEPTの基本形となるLCV D-CARGO CONCEPTは、セミボンネット付きのスタイリッシュな1.5BOXボディに前後スライドドア(助手席側)と低床のフラットフロアを採用し、荷物の積み下ろしがしやすい大開口間口を実現、助手席スペースまで積載スペースとしているため、かなりの長尺物も積み込めるとアピールされていた。
このコンセプトカー、外観デザインは少し非現実的だったが、ボディサイズはとても現実的。全長4700mm、全幅1735mm、全高1885mmとコンセプトカーとして多少盛られてはいるが、ほぼ4ナンバーサイズとなっている。セミボンネットのプレスラインや張り出し具合も既存1BOXオーナーでも納得してもらえそうなミニマムなものとなっており、当時は次期ハイエースとしてのアナウンスはなかったが、十分に可能性ありと話題になったものだった。
そして今回、海外向け新型ハイエースの登場である。前々回のハイエース記事でも触れたが、新型ハイエースは現時点で海外専用車種ではあるものの、トヨタ自動車が売りもしない車種のプレスリリースを出すことはあまりなく、日本市場と何かしらの関連がある可能性が高い。さらに新型ハイエースが採用している新開発プラットフォーム。ボディサイズは現行型を大きく上回るが、最近のプラットフォーム(シャシー)は多少縮めたり、伸ばしたりを想定して開発されており、4ナンバーサイズに合わせて日本専用新型ハイエースを開発することは容易とも言える。今回紹介したトヨタ車体のLCV CONCEPTを元に日本向け新型ハイエースが開発されている可能性も十分に考えられるのだ。
国内向けの現行型ハイエースバンは、デビューから15年経っても姉妹車であるレジアスエースバンを含め年間6万台弱を販売する人気車種。次の10年、15年を見据えてフルモデルチェンジすることは十分にありえる。お披露目の可能性が高いのは今年10月下旬から開催される2019年東京モーターショーだろう。日本向け新型ハイエースは、4ナンバー標準とそれをベースとするロングボディやワゴンが日本専用ボディとなり、一部ワゴンモデルやグランドキャビン、コミューターが海外専用モデルと共通になる可能性が高いと予想する。
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