海外向け新型ハイエース突如登場でどうなる!?

日本におけるワンボックスバンの未来は?【ハイエース&キャラバン】

  • 2019/2/27
HIACE & NV350 CARAVAN

2月18日に突如フィリピンにてトヨタ自動車から発表された新型ハイエース。今年に入ってTwitterなどでキャリアカーに積まれた新型と思われる陸送車両の写真が多数投稿されていたが、それがまさにこの新型ハイエースだったのだ。新型は完全に海外向けとして開発され、今までのハイエースと異なりセミボンネットを採用。ボディサイズは、ショートボディで全長を5mオーバー。全幅も1.9m以上と日本における4ナンバー区分を大幅に超えるサイズとなった。トヨタ自動車はこの新型発表のプレスリリースで、日本国内向けは市場環境が国内と異なるとして現行型の継続販売をアナウンス。商用としてだけでなく、個人ユースやバイクのトランスポーターとしても人気のこのジャンル。今後日本市場においてはどのように進化し、どんな未来を拓くのか、予測してみたい。

国内バンのスタンダードはキャブオーバー型

そもそも自動車税などが5ナンバーに比べ安くメリットがある4ナンバー(ただし、車検は初回のみ3年→2年ごとの5ナンバーに対し、4ナンバーは毎年)。ご存じの方も多いかと思うが、ボディサイズが全長4.7m以下・全幅1.7m以下・全高2m以下、そしてエンジン排気量がガソリン車の場合2000cc以下、ディーゼルエンジンは排気量無制限というのが条件となっている。これらの規格に合わせて販売されているバンの日本車を代表する2車種が、トヨタ・ハイエース バン※1と日産NV350キャラバンである。まずは現在日本で販売されている両車をあらためておさらいしよう。

※1:兄弟車としてレジアスエースをネッツ店専売車として設定。ハイエースは全国のトヨペット店(東京地区は東京トヨタおよび東京トヨペット)で販売。

この2台に共通しているのが、エンジンの上にキャビン(居住空間)がある”キャブオーバー型ボディ”を採用している点だ。このボディのメリットは、取り回しの良さや高いシートポジションによる運転のしやすさ、ボディいっぱいに広がり積載の自由度が高いラゲッジスペースである。そして前述した4ナンバー区分の経済性により、商用車としても個人ユースでも(当然バイクなどを積み込むトランスポーターとしても)定番化しているのが実情だ。そんな中でのセミボンネットを採用した新型ハイエースの登場である。今回は海外専用車として発表されたが、日本の道路事情にピタリとはまった既存車を所有するユーザーがそのメリットが失われるのではないかとザワつくのも仕方のないところだろう。

トヨタ・ハイエース バン

現行モデルのハイエース バンは2004年に販売を開始。ロングバン(標準ボディ+標準ルーフ)、ロングバン(ワイドボディ+ミドルルーフ)、ロングバン(標準ボディ+ハイルーフ)、スーパーロングバン(ワイドボディ+ハイルーフ)の4つのボディタイプをラインナップ。搭載されるエンジンは2000ccガソリン(136ps/18.6kg・m)、2800ccディーゼル(151ps/30.6kg・m)を搭載。別途設定されている1ナンバー(ボディサイズもエンジン排気量も制限なし)となるワイドボディには、2700ccのガソリン(160ps/24.8kg・m)も用意。これらバンボディのほか、10人乗りのワゴンと14人乗りのコミューターもハイエースワゴンとして設定されている。

TOYOTA HIACE VAN

TOYOTA HIACE VAN

日産NV350キャラバン

一方の日産NV350キャラバンは2012年に発売を開始。日産を代表する商用バンのキャラバンとしてはシリーズ5代目のモデルとなる。バンボディとしては、ロングボディ(標準幅+標準ルーフ)、スーパーロングボディ(標準幅+ハイルーフ)、スーパーロングボディ(ワイド幅+ハイルーフ)をラインナップ。搭載エンジンは、2000ccガソリン(130ps/18.1kg・m)と2500ccディーゼル(129ps/36.3kg・m)を搭載。1ナンバーとなるスーパーロングボディには2500ccガソリン(147ps/21.7kg・m)も用意される。また、10人乗りワゴンと14人乗りのマイクロバスも設定されている。

NISSAN NV350 CARAVAN

NISSAN NV350 CARAVAN

海外仕様の潮流はセミボンネット型

現時点で海外専用とされている新型ハイエースについては、エンジン搭載位置はセミボンネット下にあり、レイアウトはミニバンなどと同様となった。これはボディサイズの拡大とともに前方衝突やオフセット衝突からキャビンを守り、衝撃を吸収するクラッシャブルゾーンを確保するためである。バンボディにこの構造を採用するのは世界的な潮流であり、トヨタと日産も欧州などで販売しているバンはセミボンネットを採用したレイアウトを採用している。

TOYOTA HIACE[2019海外仕様]

TOYOTA HIACE[2019・海外仕様]

現在、トヨタはヨーロッパ市場において商用ユース向けのバン「プロエース」を販売している。過去、このクルマが新型ハイエースとして日本に入ってくるのでは? と噂されたこともあった。2016年のジュネーブモーターショーで初公開された2代目となる現行型は、トヨタとプジョー&シトロエン(グループPSA)が共同開発したモデル。プジョーからは「トラベラー」、シトロエンからは「スペースツアラー」として専用フェイスを装着して販売されている。ハッチゲートは観音開きタイプで、日本のミニバンのようなボンネットを採用したボディは、ショートボディで全長約4.6m・全幅約1.9m・全高1.9mと全幅以外は日本の4ナンバー区分に収まっている。このほかに、約5mのミディアムと約5.3mのロングも設定。搭載エンジンは1600ccと2000ccのディーゼルエンジンのみだ。「プロエース・ヴァーソ」と呼ばれる7/8/9人乗りのワゴン仕様をそれぞれラインナップしているのも特徴だ。

TOYOTA PROACE

TOYOTA PROACE[欧州仕様]

対して欧州日産はアライアンスを組んでいるルノーから供給されているトラフィックを専用フェイスに変更して「NV300」として2016年から販売している。日本専用のNV350キャラバンに似たネーミングだが、当然ボディ構造やサイズは大きく異なり、パネルバンから乗用ミニバンまで多彩なボディをラインナップしている。ボディ形状はトヨタ・プロエースと同じくセミボンネット付き。ボディサイズはバンの標準ボディ全長約5m・全幅約2m・全高約2mに達する。搭載エンジンは1600ccのディーゼルを基本にシングルターボとツインターボを用意している。サイズ、コンセプト、使い勝手的には海外向けとなった新型ハイエースに近い印象だ。

NISSAN NV300

NISSAN NV300[欧州仕様]

国内仕様が”ガラパゴスカー”になる懸念?!

衝突安全性に考慮してセミボンネットを採用する新型ハイエースやトヨタ/日産の海外専用バンだが、国内仕様のハイエース バンやNV350キャラバンが安全性で大きく劣っているわけではない。衝突時の衝撃を吸収するクラッシャブルゾーンの小ささは確かにあるが、両車ともに衝撃を吸収しやすいボディ構造と強固なキャビンを採用。昨今当たり前の装備になりつつある前を走るクルマとの衝突回避をサポートする自動ブレーキも、まずはNV350キャラバンがハイエース バンに先んじて2016年に装着グレードを設定。その後の改良やマイナーチェンジで採用を拡大し、現在では全車標準装備となっている。対するハイエース バンは、2017年の一部改良で衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」を一気に全車標準装備とした。NV350キャラバンを凌駕する安全パッケージには、ミリ波レーダーに加え、単眼カメラも装備。自動ブレーキは先行車だけでなく歩行者検知も可能で、衝突回避または被害軽減をサポートする。このように事故を未然に回避する予防安全装備については、バンクラスでも採用が拡大しつつある。

Toyota Safety Sense P

Toyota Safety Sense P作動イメージ

安全装備も身につけて、今まで通りの扱いやすいキャブオーバー型ボディが今後も日本市場で存在し続けられるのか!? 冒頭で“どんな未来を拓くのか?”と問いかけてみたものの、日本の自動車メーカーを取り巻く環境を考えると安泰とは言いにくくなりつつある。

ひとつはキャブオーバー型ボディを採用するバンのガラパゴス化だ。新型ハイエースはセミボンネットを採用し、ボディサイズも大型化することでグローバル化を果たした。今後、アジアから中東・アフリカ・オセアニア・中南米へとどんどん新型に切り替わっていくのだ。となるとキャブオーバー型ボディのハイエースは日本だけとなる。また日産のNV350キャラバンについては、もとより日本専用だ。軽自動車のように日本だけのガラパゴスカーとなってしまう可能性が高い。世界的にボディの共有化や車種のリストラが行われている中、日本市場だけいつまでも特別扱いしてくれるのか疑問符が付く、と言わざるを得ない。

そしてもうひとつが安全装備の進化にキャブオーバー型ボディがついて行けるのか? という点だ。安全装備はどんどんコンパクト化が進んでいるが、最近ビックマイナーチェンジした三菱「デリカD:5」のように、商品力進化とともに衝突回避支援パッケージを含む先進安全を装備するため大きくフェイスリフトを行った例もある。ボディ前面のスペースの少ないキャブオーバー型ボディがどこまで安全装備の進化に対応できるのか。ここも気になる点ではある。

MITSUBISHI DELICA D:5

とはいえ継続販売ということで、現行型ファンにとってはひとまず安泰ではある。現状海外専用と発表されている新型ハイエースは、2020年東京オリンピックに合わせるかどうか不明だが、ツーリズムやコミューターと呼ばれるミニバスモデルから導入される可能性が高いだろう。ハイエースバンとNV350キャラバンでひとつの成熟したバン市場を形成している日本。将来的には4ナンバー区分やボディ形状要件の見直しが必須になるかもしれない。が、ユーザーの熱も高く、ここはぜひ現行版を継続させつつ日本専用ニューモデルの開発に期待したいところだ。

TOYOTA HIACE[2019海外仕様]

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いち

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本誌編集長。雑誌は生き残りタイアップ全盛期だというのに、ひとり次期型ネタを嗅ぎまわって反感を買う現代のスクープ魔王。
■1972年生まれ
■愛車:BMW R100GS(1988)