‘16年10月に発表され、大きな話題を集めた「ホンダとヤマハの協業」というニュース。具体的には原付一種における協業の検討を開始……というものだったが、ついにその第一弾が登場された。ホンダ製となった「新型ジョグ」と「新型ビーノ」である。
エンジンには「HONDA」のロゴが!
今回の2車は「ホンダがヤマハへ、日本市場向けの50ccスクーターをOEM供給する」という検討内容に基づくもの。具体的には、ホンダ・タクトをベースとする新型ヤマハ・ジョグと、同じくホンダ・ジョルノを基とする新型ヤマハ・ビーノを、ホンダが生産してヤマハへ供給するというものだ(ジョグZRとビーノ モルフェは現状ではヤマハ製のまま)。
気になるのはホンダ製のベース車両と、OEM生産のヤマハバージョンがどう異なるのかだろう。ざっくり言ってしまうなら、見て分かる違いはフロントカウル/ヘッドライトまわりの外装パーツと速度計だけ。それ以外の外装パーツはもちろん、エンジン、車体、足回りなどはセッティングまで完全に同一。エンジンの左サイド(ベルトケース)に至っては、「HONDA」のロゴが刻まれたままなのだ!
極力変えない。その理由とは?
実車をチェックしたところ、メットイン内のバッテリーカバー部にもホンダのロゴを確認できたが、他にもホンダロゴが残る部分はあるという。つまり、この2車は新型のジョグやビーノというよりは、タクトやジョルノの一部外装違いと捉えた方が理解しやすい。一時期、スズキがカワサキ・バリオスを「GSX250FW」という名称で、逆にカワサキがスズキ・スカイウェイブを「エプシロン」という車名で販売したことがあるが、今回の2車の関係もそれと同様と言える。
ここまで共通化を推し進めたのは「ギリギリまでコスト低減を追求した」結果のようだ。そもそも協業が検討されたのはコストの低減がねらい。“ガラパゴス”な50ccスクーターを2社が個別に開発するくらいなら、いっそ共通にしてしまおう……という発想に基づくものだ。逆に言えば、そこまでしないとビジネスとして成立しないほど原付一種市場が冷え込んでいることの証明でもあり、さらに言うなら、そんなマーケットだとしても、メーカーの責務として原付一種の灯火を消すわけにはいかない……と、両社が考えていることの証でもある。
2社の協業が発表された際、‘80年代前半の「HY戦争」がよく引き合いに出されていた。あれから30余年後、ヤマハの看板スクーターにホンダの文字が刻まれるとは……。両社の当事者もまったく予測できなかっただろう。