![[ハーレーカスタム試乗] ウイリーG.が手がけた不朽の名作XLCR。日本の奇才が高性能を持たせて再創造!](https://young-machine.com/main/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
ウイリーG.が手がけた不朽の名作・ハーレーダビッドソンXLCRを、さらなる高みへ再創造。日本の奇才・サンダンス柴崎氏の手によって造り出された「SUNDANCE XLCR ROBOHEAD TYPE-A」を『ウィズハーレー』編集長・青木タカオが試乗した。
●文:青木タカオ(ウィズハーレー編集部) ●写真:磯部孝夫 ●外部リンク:サンダンスエンタープライズ
XLCRとはあらゆる点で違う
ブラックに統一された精悍な車体の中で、フューエルタンクに貼られたバー&シールドのエンブレムがゴールドで彩られ、誇らしげに煌めいている。
クォーターサイズのコンパクトなフェリングがヘッドライトを抱き込み、ウインドシールドとともにメーターを覆う。ハンドルは短めで、若干ながら後退したステップ位置と相まって、前傾気味のタイトなライディングポジションを決定づけている。
XLCRだ! 見た者は即座にそう思うに違いない。しかし、実際にはあらゆる点で違う。
その正体はサンダンスが創り出した「XLCRロボヘッド」である。近づいてみれば、只者ではないことは一目瞭然。左右にFCRキャブとエアフィルターエレメントが飛び出し、独立した吸気ポートを経て、前後シリンダーへ混合気を供給している。
ハーレーの空冷Vツインは大排気量を有していながら、前後2気筒の間にY字のマニホールドを用いた1スロットル型。前後シリンダーで吸気を奪い合うことになり、効率が良いとは決して言えないのが、純正ノーマルエンジンのレイアウトだ。
サンダンスでは、1980年代半ばに前後シリンダーそれぞれにキャブを持つ前方独立吸気を発表し、米国デイトナに挑んだ1992年のデイトナウェポンIでは対面独立(セミダウンドラフト)吸気のヘッドを導入している。
1994年にはスーパーXR(前方排気/ 後方吸気)を完成させ、さらにはロボヘッドも生み出すなど、4カムやビッグツイン(新旧)を問わず、エンジン開発から製作への情熱は絶えることなく泉のように湧き出て止まらない。
いま乗っているXLCRロボヘッドはタイプA(Vバンク間に向かい合わせの対面吸気)で、純正エンジンと同じカムレイアウトのまま独立吸気/ストレートポートヘッドを実現している。
一方でタイプBは、スーパーXRと真逆になる前方吸気のレイアウトで、専用のカムやロッカーアームなどが必要となり、フロントフォークとの干渉も考慮しなければならない。コスト面において、タイプAは比較的有利と言える。
ちなみにサンダンスでは、1986年に同様のレイアウトで全アルミ削り出しの4バルブヘッドを誕生させ、いかに早くからさまざまなエンジン開発(企画から生産まで)に取り組み、創造してきたかがわかる。
ボア90×ストローク96.7mmで、排気量は1230cc。アイドリングから低く落ち着いたエンジンは、スロットルバルブがまだわずかな開度1/8から1/4ほどから潤沢なトルクを発揮し、そのまま力強くパワーが盛り上がっていく。
光栄なことに、『ウィズハーレー』誌ではこれまでもスーパーXRに試乗する機会を得てきたのはたびたびレポートしてきた通りで、同じ外装を身にまとったスーパーXRCRにも試乗済みである。
スーパーXRでは3000rpmを超えてから怒涛の吹け上がりを見せ、図太いトルクでドラマチックなほどに車体を押し出し加速させるが、ロボヘッドはもっと奥底から強大な力が満ちあふれてくる。
どちらもビッグツインとはまた異なる4カムスポーツらしいエキサイティングな回転フィールを際立たせつつ、トルクの落ち込む気配すら見せぬまま、7000回転まで淀みなくパワーを強烈なほどに漲らせるから血が騒ぐ。その高揚感は得も言われぬ恍惚の境地に入ってしまうほどだ。
アルミ叩き出しで製作されたタンクは「寸分狂わぬ忠実なレプリカなのですか?」と、ZAK柴崎氏に聞くと「いいえ、究極の理想形です」と教えてくれる。
1977〜78年の2年間に3133台のみが販売された中で、生産工場によって施される溶接が異なり、必ずしも純正オリジナルのCRタンクの形状は統一されていない。そんな中でZAK氏がもっともXLCRらしく見える美しいシルエットを徹底追求し、完成/製品化へと至った。
フェアリングとシートカウルは圧倒的な軽量化を図ることのできるカーボン製で、モノコック構造により純正とは比べものにならないほどの高強度を軽さとともに獲得。
足まわりにも隙がなく、トラックテックサンダンス/エンケイ7スポークアルミキャストホイールは、純正13スポークと比較して25%以上の軽量化を達成している。
前後サスペンションは初期荷重でしなやかに動き、奥で踏ん張りの効く理想的な設定。一切のフリクションを感じさせず、秀逸なトラクション性能と軽快なステアリングフィールを発揮しつつ、ブレーキもフロントをしっかりと働かせ、スポーティーな走りに対応してくれる。
見た目こそXLCRカフェレーサーだが、操作性を含めその中身/内容は現代のスポーツバイクにも通じる性能を持つ。ウィリーGの傑作のひとつが、ここ日本でひとりの奇才によって、最大限のオマージュをしつつ、生まれ変わった。
【ROBOHEAD TYPE-A】エンジンVバンク間に、向かい合わせるようにして独立したインテークを持つROBOHEADタイプA。純正エンジンと同じカムレイアウトで、高効率のストレートポートヘッドを実現でき、スーパーXRと比較するとコストを30%程度抑えられるといったメリットももたらす。高トルク&ハイパワーで信頼性も高いことは、サンダンスハーレーなのだから言うまでもない。■ボア90×ストローク96.7mm 排気量1230cc
つくり手の思いと走行シーンは動画で!!
『ウィズハーレー』誌では青木タカオ編集長がマシンを試乗後、サンダンスZAK柴崎武彦氏にインタビューし、XLCRロボヘッドについて語ってもらった。走行シーンを含め、ぜひご覧いただきたい!!
フェアリングとシートカウルは圧倒的な軽量化を図ることのできるカーボン製
「車体が重く、コーナーの進入では寝ないし、出口では起きない。もっとコーナリング性能に優れ、安全に楽しめるようにという願いから、純正オリジナルにリスペクトしつつ、開発から完成へと至りました」と、サンダンス代表ZAK柴崎氏は教えてくれた。
フロントフォークにはマルチレートフォークスプリングが組み込まれ、アルミ削り出しのボディ内にチッ素タンクを備えるリヤサスペンションは、KYBと共同開発したものだ。サンダンストラックテックのトリプルツリーで、フォークとネックシャフトのオフセット量を最適化し、クセのない軽快なステアリングフィールを獲得しているのも見逃せない。
ノーマルタンクは生産工場などの関係から3種類が存在し、その中間を取ったフォルムとも言うべき“CRらしさをより強調するフォルム”でサンダンスでは形状を決定し、アルミ叩き出しで製造された。エンジンに深く被さるように低くマウントされ、シートカウルまでまっすぐに伸びるカフェレーサーならではのシルエットを実現している。
後方吸気で120ps! SUPER XRCR
筆者は過去にスーパーXRCRの試乗レポートも行っている。4カムらしいスリリングな面白さを持ちながら、コントローラブルで扱いやすい。ボア89.4×ストローク96.7mmの1214ccで軸出力120ps/5200〜7000rpm 、最大トルク15.6kg-m/4800rpmというスペックを誇る。
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スーパーXRCRも動画で見れる!
サンダンスSUPER XRCRについても、走行シーンおよびZAK柴崎氏のインタビューをムービーに収めている。こちらもぜひお見逃しなく!!
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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