1957年に初代が誕生して以来、長きに渡って発売されてきたハーレーダビッドソンXLスポーツスター。シンプルかつ普遍的なスタイルと軽快な走りで、時代を越えて幅広い層に愛され続けてきたが、2022年のフォーティエイトファイナルエディションをもって、惜しまれつつも生産を終えてしまった。しかし、その人気は衰えることを知らず、むしろ高まる一方とも言える。そこで本記事では、まず時代を20年以上さかのぼり、エンジンをフレームにリジッドマウントしていた時代の昔ながらのスポーツスターに乗ってみた。「今さら“リジスポ”?」「トレンドを反映していない」とお叱りを受けそうだが、どうしてもベーシックを改めて見直したいのだ。
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ)●写真:磯部孝夫 ●外部リンク:TASTE CONCEPT MOTOR CYCLE
空冷スポーツスターから次章へと移りゆく今、スタンダードのXLモデルに乗る
スポーツスターが新車で買えなくなる…。受け入れがたい宣告であり、そんな日が来てしまうとは、絶望に打ちひしがれる思いであったかもしれない。
2021年12月のことであった。環境性能が厳しく言われるようになって久しく、長きに渡って慣れ親しんできたロングセラーモデルたちが次々と姿を消していくのを目の当たりにしてきた。オートバイを買いに行けば当たり前のようにあったヤマハSRなど、日本の身近なモデルでさえ例外なしに廃盤が決まり、ついには我らのスポーツスター。恐れていたことが現実になってしまったのだから、残念でならない…。
しかしハーレーダビッドソンは、次世代スポーツとして、水冷レボリューションマックスを搭載したスポーツスターSをはじめ、ナイトスターシリーズをデビューさせ、その系譜を繋いでいる。
大きな変革期だ。100年前、アメリカに1500万頭いたとされる馬は、現在では1500万台の自動車に置き変わったし、今度は内燃機エンジンの行方もわからなくなっている。
そんな時だからこそ、原点をまた見つめ直すことが必要ではないだろうか。『ウィズハーレー』誌では、編集長である僕=青木タカオがさまざまなカスタムやニューモデルに乗り、それをレポートしているが、空冷スポーツスターの歴史が終わり次章へと移りゆく今、あらためてスタンダードのXLモデルに乗っておかなければと考えた。
今さらなぜ…!? そう疑問に感じる読者もいるかもしれないが、スポーツスターとは一体なんなのか。ワンメイクレースもあった絶頂期の頃のモデルに再び乗り、もういちど見つめ直したい。
シンプルで普遍的な魅力持つEVOスポーツ
スポーツスターがエボリューションエンジンを積むのは1986年から。排気量が883ccと1200cc(最初の2年間は1100cc)の2本立てというのはお馴染みだろう。フレームは1984年のXLX61から受け継ぎ、「EVOフレーム」とも呼ばれる。2004年式でラバーマウントフレームに骨格が変わるまで、シンプルな姿はほとんど変わることなく継続。オートバイとしての性能が云々ではなく、多くのファンが愛したスタイルであった。
過不足なくジャストフィットしオールマイティなキャラクター
どうして、こんなにもスポーツスターは人気を博してきたのだろうか。
ひとことで言えば「何にでも使える」――用途を選ばず、どんなときも不満を感じないオールマイティなオートバイである。883ccあるいは1200ccもの大排気量を持ちながら、ちょっとそこまでと気軽に乗れるし、旅の相棒として長距離を走るのもいい。スタンダードと呼ぶにふさわしいキャラクターと言っていいだろう。
では、個性がないのか? いいや、違う。独自性の塊で、見た目からして唯一無二。そのスタイルは普遍的であり、誰が見てもすぐにそれとわかる。
ヘッドライトにバイザーをセットし、タンクからとシートにかけては隙間が開き、日欧のバイクなら信じられないが、サイドカバーは最初から備わっていない。
ラバーマウントフレームとなる2004年式を境に、スポーツスターは大きく変わる。今回乗ったのはリジッドマウントフレーム時代の、じつにオーソドックスなスポーツスター。ベースは2002年式のXL1200Sだが、イエローの外装は90年代のムードそのもので、燃料タンクもその時代の小振りなものに載せ替えられている。スーパートラップの2本出しアップマフラーは、当時のカスタムシーンでよく見られた馴染みのあるスタイルで、違和感がまったくない。
エボリューションエンジンは強度メンバーとしてフレームにダイレクトにマウントされるから、Vツインの振動がそのまま直にライダーの身体に伝わってくる。
低中回転域ではより強く鼓動が感じられ、重いクランクマスがほどよいトルクを生み出し、じつに味わい深い。ワイドレンジで早めのシフトアップを許容してくれ、スロットルワークだけでゆったり流すのも心地いい。
せわしないギヤチェンジは不要で、こうした大らかさが扱いやすさを感じさせている。クラッチミートに気をつかうこともなければ、レスポンスが過敏なわけでもない。すべてがちょうど良く、旧知の友人と会話するかのように、自然と心と身体が馴染んでいく。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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