
新車時に搭載する純正ノーマルエンジンでも、ハーレーダビッドソンの心臓部“ミルウォーキーエイトエンジン”の大排気量化が進んでいるが、カスタムでは2000ccオーバーの超弩級モンスターが出現している。今回は名古屋市のカスタムショップ・フォレストウイングが制作したカスタム車をテストライドしたので紹介する。
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ) ●写真:夏目健司 ●外部リンク:フォレストウイング
荒くれ者の圧倒的パワー。ワイドオープンの一撃は計り知れない!!
大排気量化が進むハーレーダビッドソンの心臓部・ミルウォーキーエイト。新車から搭載されるストック状態でも117キュービックインチ=1923ccと超弩級だが、カスタムシーンでは2リッターを超えるモンスターエンジンへとさらなる変貌を遂げている。フォレストウイングが手がけたストリートグライドは、なんと2212cc! 雨が上がったタイミングを見計らって試乗に出た。
2017 ハーレーダビッドソン FLHXS ストリートグライドスペシャル[フォレストウィングカスタム]
路面はまだ濡れているところもあるから気をつけよう。なんたって、ミルウォーキーエイトエンジンは135キュービックインチ=2212ccもの排気量にスケールアップされている。
最初のうちはアクセルワークに気をつけた。しかし、想像していた以上にマイルドで、何事もなく走るではないか。少しずつ、右手のスロットル操作が大胆になっていく。するとどうだ、パワーの盛り上がりが凄まじい。
クイックシフターによって、シフトチェンジはクラッチレバーを握らずともアクセルを開けたままできるから、シームレスに猛ダッシュが続き、トップエンドまでまだ余裕があることがわかる。駆動輪が路面を力強く蹴飛ばしていくかのような図太いトルクを感じつつ、速度はぐいぐい上がっていく。
ロングストローク設計のOHVエンジンであるから、最大トルクはわずか3500rpmで発揮するし、5000rpmも回せばそこはもうピークに達する領域。DOHCならまだ低回転域だが、3000rpmにさしかかれば、ドラマティックなまでにトルクが湧き上がり、そのまま頭打ちの気配がなく回っていくから、高回転もまだ余裕があることがわかる。
低速で神経質にならず、ミドルからトルクが溢れんばかりに潤沢。全域でよどみなく力を発揮できるエンジンに仕上がっていることについて、フォレストウイングの奥藤悟代表はこう教えてくれた。
「排気量の大きさが大きなアドバンテージになっていることは確かで、ターボなど過給器に頼らずとも、NA(自然吸気)で余裕あるエンジンになっています。高回転で盛り上がるパワーをもたらすのは、ハイカムでバルブをより大きく開けているからで、オーバーラップを長くとって、インレットから引き込む流速を利用して充填効率を高めています」
ポート加工を施し、バルブも大径化。鍛造のピストンやコントロッドで強化され、クランクケースはリードバルブで内圧を抜けるよう加工し、ベアリングも耐久性を上げたものにしている。
「カムをハイリフトなものに交換しても苦手な帯域をつくらず、低いアイドリングから下の領域もスカスカにならず、トルクフルかつマイルドなのは、インジェクションチューニングによるところも大きく、キャブレターの時代ではできなかったセッティングが施せるからです」(奥藤さん)
スロットルボディを62mmに拡大し、アルミ製のハイフローマニホールドにも手を加えた。排気はチューンドエンジンに最適なトラスク製の2in1集合マフラー。管長が短いにも関わらず、低い速度域でもギクシャクすることなく扱いやすいエンジンとしているから舌を巻く。
足まわりも、アルミ角断面で剛性の高いスイングアームやオーリンズのリヤショックで武装。フロントはカーボンホイールを入れる予定で、さらなるポテンシャルアップを図る。楽しみは尽きない。
M8エンジンはT-man Performanceのエンジンキットで135ciにスケールアップ。シリンダーヘッドのポート加工や吸排気バルブの大径化も行われ、ワイセコの鍛造ピストンや軸断面をH型にしたコンロッドも組み込まれた。クランクシャフトは高強度で定評のあるダークホース製。プッシュロッドやオイルタペットもT-man製のショートトラベルタペットに変更されている。回転レスポンスを上げるため、エンジンバランサーは備わっておらず、鼓動はよりダイレクトで荒々しくもある。
動画はコチラ
超弩級と言えるモンスターハーレーを製作したのは、フォレストウイングの奥藤代表。試乗したウィズハーレー青木タカオ編集長が、エンジンチューンの極意を根掘り葉掘り聞き、マル秘ポイントも教えてもらった! その模様は動画でご覧いただこう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ハーレーダビッドソン専門誌『ウィズハーレー』のお買い求めはこちら↓
あなたにおすすめの関連記事
ハーレーダビッドソンサーティファイド埼玉ってどんなお店? 初年度登録から7年以内、走行距離7万km未満の中古車のうち、ハーレーダビッドソンジャパンが定める厳格な点検と整備基準をクリアしたH-D認定中古[…]
使い勝手が劇的に向上! 友人ら複数人でのツーリングで重宝するのは当然だが、スマートフォンのナビアプリの音声案内やお気に入りの音楽を聴きながらツーリングをするのが以前に比べ一般的になり、インカムの需要が[…]
外装&ホイールはカーボン! 倒立フォークほか足回り徹底武装!! バガーレースに即参戦できそうな完成度の高さだ! サイドスタンドを払った途端にわかるのは、ロードグライドスペシャルの車体がこれまで[…]
プレミアム復刻シリーズ“アイコンコレクション”から新登場!「エレクトラグライド ハイウェイキング」世界限定1750台で発売!! ビンテージモデルへの憧れを持つファンは少なくない。そんなライダーが見逃す[…]
ヘリテイジクラシック114|四半世紀を超えるラインナップ歴を誇る“遺産” 前後16インチのスポークホイールに、エレガントなディープフェンダーを組み合わせ、大柄なウインドシールドやトリプルライト、クラシ[…]
人気記事ランキング(全体)
既存の常識を打ち破る驚異的な動力性能 昨今ではあまり話題にならないものの、’70年代以降の2輪業界で、もっとも長く”世界最速”の称号を保持していた…と言うより、もっとも世界最速に”こだわっていた”メー[…]
古いゴムは硬化するのが自然の節理、だが・・・ ゴム部品は古くなると硬くなります。これは熱・酸素・紫外線などによる化学変化(酸化劣化)で、柔軟性の元である分子の網目構造が変化したり、柔らかくする成分(可[…]
初の電動スクーターが「C evolution」 2017年、BMWモトラッドは初の電動スクーター「C evolution(Cエボリューション)」を発売。それまでのガソリンエンジンを搭載したC650に通[…]
低く長いデザインが個性マシマシ! レトロモダンなボバークルーザー 中国から新たな刺客がやってきた! ベンダは2016年設立の新興メーカーで、独自設計のエンジンを搭載したクルーザーを中心に、ネイキッドな[…]
多くのカラーパターンを採用するCB350C、特別な2色のスペシャルエディション ホンダはインドでCB350C(日本名:GB350C)を発表した。これは前年に登場したCB350を名称変更したもので、従来[…]
最新の投稿記事(全体)
高機能ジャケットから防寒パンツまで多彩なラインナップ 朝晩の冷え込みに、本格的なツーリングシーズンの到来を感じるこの頃。バイクウェアの老舗ブランド「クシタニ」より、2025-26年秋冬モデルの新作テキ[…]
ゼロハンが一番熱かった夏 多くの若者がバイクを愛し、GPライダーが同世代共通のヒーローとなった1970年代後半。 それでもフルサイズの“バイク”は、経済的理由や悪名高い“三ナイ運動”の影響からなかなか[…]
新型CBは直4サウンドを響かせ復活へ! ティーザー画像から判明したTFTメーターとEクラッチ搭載の可能性 ホンダは中国がSNS『微博』にて、新たなネオクラシックネイキッドのティーザー画像を公開したのは[…]
芦ノ湖スカイラインとは? バイク乗りに人気の理由 富士山の麓に点在する富士五湖のひとつ、芦ノ湖は箱根の人気観光地ですが、湖の西側の尾根に沿って通じているのが芦ノ湖スカイラインです。 全長約10.7km[…]
ホンダはEクラッチとDCTの二面展開作戦だ 自動クラッチブームの火付け役として、まず一番目に挙げられるのが今のところホンダCB/CBR650Rとレブル250に採用されている”Eクラッチ”。機構としては[…]
- 1
- 2