
●文:ライドハイ編集部(根本健)
ハイパーレプリカに辟易としたタイミングに、操る醍醐味をアピールした個性派パラツインスポーツ登場
ヤマハTRX850は、ライバルメーカーにないカテゴリーの、知る人ぞ知る個性派ツインスポーツとして1995年にデビューした。
1980年代のレプリカブームがエスカレートしすぎたこともあって、1990年代へ入る手前にその熱も冷め、ネイキッドブームやツアラースポーツにパリダカレプリカなど、メインストリームを模索する渾沌とした状況にあった。
そこに登場したのが、パリダカールで名高いスーパーテネレXTZ750のパラツイン(並列2気筒)を搭載し、大人向けにハーフカウルをアピールしたTRX850だ。
いかにもハイパワーを狙ってはいない、しかし中速の“曲がれる”トラクションを発揮する270°位相クランク、そして見るからにスリムなダイヤモンドトラスフレームと、それは日本製ロードスポーツがまだ追いかけたことのないこだわりの個性に溢れていた。
コーナリングで後輪が路面を噛むとアピールしていた、270°位相の2気筒不等間隔爆発は、実績あるスーパーテネレのパラツインをベースに、100cc排気量をアップ。たくましい中速トルクで、キャリアを積んだライダーを納得させていた。
じつはパリダカのスーパーテネレは360°クランク。270°不等間隔爆発はTRXが初で、後にTDM850も採用
しかしながら、不等間隔爆発の270°位相クランクについて、砂漠の砂地でポテンシャルを発揮するスーパーテネレ譲りと信じるファンが圧倒的だったが、じつはなんとスーパーテネレは一般的な360°だったのだ。
パリダカール制覇に向けて、270°の開発は進んでいたが、過酷なレースだけに新たなチャレンジのリスクは避けていたからだ。
しかしこのTRX850での実用化から、TDM850で1996年から、そしてパリダカールへ出場していたXTZ850TRXにも1997年から採用されたというのが事実。
ヤマハの広告でも、スーパーテネレでの実績から…といった表現もあって、多くのファンはTRX850が初の270°位相とは知らなかったはずだ……
※本記事は2022年10月24日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ライドハイの最新記事
自分のミスではないアクシデントで運命を分ける空気圧! タイヤの空気圧は大事……わかっちゃいるけど、つい面倒でチェックが疎かになりがち。 しかし脅かすワケではないけれど、実は空気圧が適正に保たれていない[…]
レバー位置が遠いとチカラが入らないと思いがち フロントブレーキのレバー位置を、握りやすい近い位置にするライダーが多い。とくに手の小さい女性ライダーは指が届きにくいので、遠いレバー位置だとチカラが入らな[…]
そもそもボア×ストロークって? 最近ロングストロークという表現をみる。エンジンのピストン往復が長いタイプのことで、バイクのキャラクターを左右する象徴として使われることが多い。 これはエンジン性能で高い[…]
力まない柔軟な状態を保ちながら、カーブでのバイクのホールドはアウト側下半身で! 腕や肩、それに背中や腰など、バイクに乗るときはリラックスして力まない状態でいることが大事。ハンドルをちょっとだけでも押し[…]
メーカーのサス設定はPL対策で乗りやすさと快適さを犠牲にしている! ほとんどのビッグバイクにはサスペンションの調整機構が装備されている。 しかし知識のないシロウトが触ったら、メーカーがテストを繰り返し[…]
最新の関連記事(ネモケンのこのバイクに注目)
新型4気筒を待ち焦がれていたホンダファン CBにXが加わった車名のCBX400Fは、1981年10月にデビュー。バイクブーム真っ只中で爆発的な人気を誇ったホンダの切り札となったマシンだ。 実はカワサキ[…]
ボクサーエンジンの誕生、最強バイクとして世界中でコピー BMWといえば、2輪メーカーとしてスーパーバイクS1000系からボクサーのRシリーズなど、スポーツバイクで世界トップに位置づけられるメーカーだ。[…]
特別な存在をアピールする“衝撃”=IMPULSEと名付けたバイク スズキには、1982年から400ccネイキッドのシリーズに「IMPULSE(インパルス)」と銘打ったバイクが存在した。 IMPULSE[…]
250ccの4気筒はパフォーマンスで不利。それでも届けたかった4気筒の贅沢な快適さ 250ccで4気筒…。1982年当時、それは国産ライバルメーカーが手をつけていないカテゴリーだった。 1976年にD[…]
一般公道は乗りやすさ最優先、そのコンセプトを後方排気でピュアレーシーへ ヤマハは、1980年にレーサーレプリカ時代の幕開けともいうべきRZ250を発売。一躍250ccをビッグバイクを凌ぐパフォーマンス[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車 | ヤマハ [YAMAHA])
我が道をゆくヤマハ【1982 ヤマハXJ650ターボ】 ホンダのCX500ターボと同じく、1981年の東京モーターショーに出展されたモデルで、XJ650をベースにしたターボ車。 モーターショーにはイン[…]
ヤマハ SR400とSR500「100ccの差はストローク違いによるもの」 1976年発売のデュアルパーパス車XT500用のエンジンをベースに、当初フラットトラッカー風ロードスポーツとして企画されたS[…]
国産車として当時最大の1101ccをマーク【1978 ヤマハXS1100】 ヤマハもカワサキやスズキと同様に、1960年代までは2ストを主体に開発を続けてきたメーカーだ。しかし、自動車エンジン部門では[…]
「マウンテントレール」を提唱した新ジャンル:第一世代セロー225(1985~1989) 初期型セロー225のカタログは、ふたつ折りの中とじ2枚もので計8ページ。静かな山奥を想像させるシンプルな表紙に引[…]
’80年代、スポーツバイクファンは2ストで乱舞した バイク歴30年以上なら、2スト全盛のレプリカ時代には並々ならぬ思い入れがあるはず。 若者でも買える250ccスポーツが、すべてのバイクの中で最速とい[…]
人気記事ランキング(全体)
オーディナリーホワイトとアーティザンレッドの組み合わせ カブハウスのSNSでスーパーカブC125の新色が公開された。詳細は記されていないが、1958年以来の“Sシェイプ”デザインに新たなカラーデュオを[…]
Z1、GPz900R、Ninja ZX-9Rから連なる“マジックナイン”の最新進化系 カワサキは昨秋、欧州でZ750→Z800に連なる後継車として2017年に948cc並列4気筒エンジンを搭載したスー[…]
通勤からツーリングまでマルチに使えるのが軽二輪、だからこそ低価格にもこだわりたい! 日本の道に最適なサイズで、通勤/通学だけでなくツーリングにも使えるのが軽二輪(126~250cc)のいいところ。AT[…]
オイルの匂いとコーヒーの香り。隠れ家へようこそ。 56designが4月12日に奈良県奈良市にオープンさせる「56design NARA」。以前から要望が多かったという、同社初となる関西圏の新店舗だ。[…]
自分のミスではないアクシデントで運命を分ける空気圧! タイヤの空気圧は大事……わかっちゃいるけど、つい面倒でチェックが疎かになりがち。 しかし脅かすワケではないけれど、実は空気圧が適正に保たれていない[…]
最新の投稿記事(全体)
カワサキモータースジャパンは、2025年3月に開催予定の「第41回大阪モーターサイクルショー2025」「第52回 東京モーターサイクルショー」、4月に開催予定の「第4回名古屋モーターサイクルショー 」[…]
論より証拠! 試して実感その効果!! 老舗カー用品ブランド・シュアラスターが展開するガソリン添加剤「LOOP」シリーズ。そのフラッグシップアイテムである「パワーショット」をさまざまなバイクやクルマに実[…]
今回のテーマは、モーターサイクル史を振り返り、ヘリテイジモデルを中心に展示 今回の車両展示は、モーターサイクル史を振り返りながら、今に引き継がれている現代のヘリテイジモデルを中心にラインナップ。ベネリ[…]
マジックフォームとは? 「マジックフォーム」とは、シャンプーを泡状にして広範囲に噴霧する、プロのような洗車を自宅でも実践できるアイテムです。 泡噴射ができるフォームガン2種(蓄圧タイプ/高圧タイプ)と[…]
“つながる”機能搭載新の7インチTFTディスプレイほか変更多数 ヤマハが新型「トレーサー9 GT」を発表した。これまで上位グレード『GT+』の専用装備だった7インチTFTディスプレイを採用したほか、先[…]