●文:根本健(ライドハイ編集部) ●写真:藤原らんか
じつはベテランも毎回同じにできていない
半クラッチはブレーキやギヤチェンジに次いでリクエストの多い課題。その半クラ発進、じつはベテランでもその都度少し違ったクラッチミートになっていて、毎回ピッタリ同じにできないのだ。その理由をクラッチの構造から説明していくと…。
クラッチはエンジンのシリンダーやクランクシャフトのすぐ後ろ、写真の赤い○で囲んだ膨らみがそれだ。
この丸い膨らみの内側には、ご覧のように薄くて細い円盤状で、コルクのような表面で外にツメがでているプレートと、スチールの円盤で内側にギザギザが刻んであるプレートとが、交互に組み込んであるユニットがある。これがクラッチの正体で、コルクに似た材質が貼ってるのがフリクションプレート、スチールのほうをクラッチプレートと呼んでいる。
外のツメと内側のギザギザが、エンジンからの駆動を受けている外側と、ミッションからドライブスプロケットへ繋がっている内側のカウンターシャフトとで、密着したり離れたりでエンジン駆動を切ったり繋いだりする仕組みだ。
これが実際にどんな動きで半クラッチになるのか、イラストの略図をご覧いただこう。見やすくするため、フリクションプレート3枚/クラッチプレート2枚の構造で描いたが、実際には写真にあるようにフリクションプレート9枚/クラッチプレート8枚ともっと多い。
このフリクションとクラッチの両プレートが、スプリングで圧着しているのを、クラッチレバーの操作でお互いが離れれば駆動が繋がらない、つまりクラッチを切った状態で、クラッチレバーを少し引いた位置のお互いの密着が弱くなり、徐々に滑るのが半クラッチと呼ばれる状態だ。
そしてややこしいのが、勢いよく半クラしたとき。お互いが滑って摩擦熱を生じるため、両方のプレートが熱膨張、つまり隙間というより圧着度合いがいきなり変わり、食いついてすぐ繋がった状態になってしまうため、半クラッチ状態が維持できない。ピョコンとフロントが持ち上がったり、エンジン回転がいきなり落ちたりと、スムーズを欠く状態に陥る。
レースライダーはこの膨張するのに合わせてクラッチレバーをわずかに引く調整をして、安定した半クラッチ状態をつくったりするが、これも膨張率が安定しにくいため、なかなか一定にはできない。
ということで、バリバリのキャリアでも、ゆっくり穏やかに発進するときは問題なくても、ちょっと頑張ろうとすると失敗する確立が高くなる、というわけだ。
探りながらレバー操作せず、繋がる半クラ位置だけを使う。そのレバー位置をアジャストしておくのが大事
そうしたムズカシイ操作はともかく、通常の発進では熱膨張もわずかなので、安定した半クラ発進が可能だ。
ただ、なんとなくクラッチレバーを操作するのでは、毎回どこで繋がるか変わってしまう。そうならないように、クラッチレバーのストローク位置と、機能との関係をあらかじめ確認して感覚を掴んでおくのが不可欠だ。
ここでビギナーがやりがちなのが……
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ライドハイの最新記事
世界GP制覇が手に届くとみるや、市販車初のDOHC搭載で英国大型バイクの牙城に斬込んだホンダ ホンダは、1959年にマン島T.T.レースへの挑戦をスタート。まだ輸出もしていない頃に海外レースでの実績で[…]
1964年頃からGPレースで始まった、内ヒザを開くスタイル ヒザ擦りどころかヒジ擦りすら珍しくなくなったレースシーン。そこまでアグレッシブでなくても、ワインディングでそんなに深くバンクしてないのに内側[…]
[A] 猛暑日はライダーへの負担がハンパなく大きい。自分で絶対守る何箇条かを決める覚悟が必須 避けるべきシチュエーション 真夏にバイクに乗る経験がまだ少ない方は、照りつける直射日光と照り返すアスファル[…]
[A] より剛性を高め、スムーズな動きを追求るために開発された フロントのサスペンション機構、“フロントフォーク”には正立タイプと倒立タイプがある…と聞いて、何のこと? と思われた方は、まず写真を見て[…]
メッキのトラスフレームに2スト200cc単気筒。レプリカのバイクブームに迎合しないフィロソフィ 1980年代半ばはバイクブーム真っ只中。レーサーレプリカが乱舞し、毎年フルモデルチェンジが繰り返され、ユ[…]
最新の関連記事(ライディングテクニック)
1964年頃からGPレースで始まった、内ヒザを開くスタイル ヒザ擦りどころかヒジ擦りすら珍しくなくなったレースシーン。そこまでアグレッシブでなくても、ワインディングでそんなに深くバンクしてないのに内側[…]
エンストを警戒する長い半クラッチだと自信がないまま キャリアの浅いビギナーはもちろん、そこそこ経験年数があっても、発進の半クラッチに自信がないライダーは多い。 典型的なのが、エンストを怖れて少しエンジ[…]
[A] 警戒心が強いほど1点を見つめてしまいがち。全体像を見る訓練を! コレ、じつは多くのライダーが陥りがちな事例で、ボクもやってしまうことがあります。 そもそもバイクで走り出すと、前輪のすぐ前の路面[…]
バイク運転の不安をなくすには“ゆっくり&やんわり”が一番効果的 バイクに乗っていると、何かのきっかけで不安が先に立つことは珍しくない。ましてや立ちゴケなどで心が折れると、ペースを落として走っていても、[…]
グリップ感はライダーが操作して得るもの 「グリップ感」や「接地感」という言葉をよく耳にするものの、体感としてはどういう感じであるのか、なかなかわからないものですよね。最初から難しく考える前に、グリップ[…]
最新の関連記事(Q&A)
幼い頃、ファーストフードのドライブスルーを「自転車でもできるのかな!?」と想像したことがある。大人になった今となっては、もうそんなことはしないが、実際はどこまで可能なのだろうか? と考えたときに、ひと[…]
1分でわかる記事ダイジェスト 旧車とネオクラシックの違い、そしてネオクラシックバイクの特長や選ばれる理由を、知り合いのバイク屋に聞いた。 旧車とクラシックバイクの違いは? ほぼ同じ意味合いで、設計が古[…]
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
1分でわかる記事ダイジェスト 筆者の経験談や失敗談も含めて、バイクエンジンの暖機運転の必要性を解説。 暖機談義その①クリアランスについて クリアランスについてエンジンは熱を発し、ガソリンが爆発するエン[…]
[A] 猛暑日はライダーへの負担がハンパなく大きい。自分で絶対守る何箇条かを決める覚悟が必須 避けるべきシチュエーション 真夏にバイクに乗る経験がまだ少ない方は、照りつける直射日光と照り返すアスファル[…]
人気記事ランキング(全体)
海外向けのNT1100白バイ仕様だっ!! ホンダが2輪メディア向けの編集長ミーティングで白バイ仕様のNT1100海外向けモデル、「NT1100 POLICE」を世界初公開したぞ! ホンダはこれまでにも[…]
BIG-1後継機は“エフ”スタイルで来る?! まさかまさかの新情報だ。ホンダが開発中のヘリテイジネイキッド・仮称「CB1000」が、ホンダ往年の名車“エフ(CB750F/CB900F/CB1100F)[…]
行こうよ。はっぴーでい。 ホンダは、1974年に誕生したサンリオの人気キャラクター「ハローキティ」の50周年を記念し、特別デザインを施した「スーパーカブ50・HELLO KITTY」および「スーパーカ[…]
勝てるはずのないマシンで勝つマルケス、彼がファクトリー入りする前にタイトルを獲りたい2人 MotoGPのタイトル争いに関してコラムを書こうとしたら、最終戦の舞台であるスペイン・バレンシアが集中豪雨によ[…]
コンパクトな車体に味わいのエンジンを搭載 カワサキの新型モデル「W230」と「メグロS1」がついに正式発表! ジャパンモビリティショー2023に参考出品されてから約1年、W230は白と青の2色、メグロ[…]
最新の投稿記事(全体)
インドネシアで発表済みの「NMAXターボ」のグローバル版! ヤマハは欧州で新型125ccスクーターの「NMAX125」「NMAX125テックマックス(Tech MAX)」を発表した。欧州ではこれまでT[…]
タイトル争いを制したのはエンジン車の「RTL301RR」 11月3日、全日本トライアル選手権(JTR)の最終第8戦、City Trial Japan 2024 in OSAKA 大会が大阪市中央公会堂[…]
じつはベテランも毎回同じにできていない 半クラッチはブレーキやギヤチェンジに次いでリクエストの多い課題。その半クラ発進、じつはベテランでもその都度少し違ったクラッチミートになっていて、毎回ピッタリ同じ[…]
第1位:MFK-293 ミニフィールドシートバッグEX [TANAX] 本山さん曰く「シートバッグは小/中/大/特大の4つのサイズに分けられますが、中でも容量19〜27Lの小サイズが人気」とのこと。そ[…]
日本未導入の特別仕様車をベースにカスタム 第2次世界大戦時、軍用として用いられていた車両「WLA」をモチーフにしたカラーリングが採用されているのは、パンアメリカ1250スペシャルの特別仕様車「GIエン[…]
- 1
- 2