
運動性能にとっても省燃費性の面でも、“車体の軽量化”はもっとも効果のあるモディファイ手段のひとつだ。今、リチウムイオンバッテリーを装着するだけで軽量化できる点に注目するライダーが増えている。パワフルで長寿命なうえにコンパクトで軽量なリチウムバッテリーは、チューニングパーツとしても魅力的なのだ。
●文/写真:栗田晃(モトメカニック編集部) ●外部リンク:丸中洋行
車両メーカーの純正バッテリーとしてもシェアを拡大
リチウムバッテリーは、同程度の容量の鉛バッテリーと比較すると、性能の指標であるCCA(コールドクランキングアンペア)値は2倍程度、寿命は3倍程度と、その優位性は圧倒的だが、じつは軽量化の面でも大きなメリットがある。
レース界ではすでに広く知られていることだが、ここでは街乗り用市販車の交換パーツとしての魅力についても改めて注目してみたい。
普通自動二輪免許で乗れるハーレーダビッドソンとして注目度が高いX350のバッテリーは、ミドルクラスで一般的なMFタイプのMTX9-RSで、車体デザインの都合上、シート下に斜めに搭載されている。
マスの集中化では理に叶っているが、純正バッテリーの実測値は約3000gもある。そのため、数年後に寿命を迎えた際に、何も考えず再び鉛バッテリーを選択するのは良策とは言えない。
ここでリチウムバッテリーに交換すれば、積み替えるだけで2000g以上の軽量化が実現するのだ(BS製の場合)。たった2kgと思うかもしれないが、車重200kg程度のバイクから1%分減量するのは容易ではない。
たしかにリチウムバッテリーは高価だが、とはいえ実勢価格は高性能鉛バッテリーの2倍程度(BS製SLAタイプの場合)。一般的な寿命を3倍とすれば、リチウムバッテリーのコストパフォーマンスは鉛バッテリーを上回ることになる。
いつか必ず交換しなくてはならないパーツで、鉛タイプよりコスパが高く、取り替えるだけで軽量化できるリチウムバッテリー。モータースポーツは当然のことながら、市販車に装着するメリットも十分にあるだろう。
【BSLi-03】BS製リチウムバッテリーには容量が異なる8種類があり、BSLi-03は同社製鉛バッテリーのBTX9/BT7B-4/BT9B-4と互換性がある。ちなみに8種類でバイク用12V鉛バッテリーの80%以上をカバーできる。リチウムは単位重量/体積あたりのエネルギー密度が鉛に比べて4〜5倍高いため、大電流を一気に放出でき、その分体積や重量を減らすことができる。純正バッテリーケースに収めた際にできる隙間を埋めるウレタンパッドも豊富に付属する。
純正バッテリーケースの形状と充電電圧を事前に確認してから装着
開放式/メンテナンスフリータイプ/傾斜搭載が可能な密閉式など、鉛バッテリーにもさまざまな種類があり、今回使用したBSバッテリーでは豊富なラインナップを展開している。ハーレーダビッドソンX350用純正バッテリー(右奥)はBS製ではないが、同スペックの鉛バッテリーがある。だがせっかく交換するならリチウムバッテリーを選択したい。
インナーフェンダーの角度に合わせて斜めに搭載されている純正バッテリー。プラス/マイナス端子部分がカットされたホルダーは、左右4個のボルトで固定されている。
マイナス/プラスの順にバッテリーターミナルを外してプレートも取り外す。周辺部品が少ないのでバッテリー着脱は簡単だが、3000gの純正はずっしりとした手応え。
交換だけで2kg以上の軽量化するのだから、リチウムバッテリーを選ばない手はない。スペース的には余裕十分だが、ターミナルとホルダープレートが接近している。
金属部分の接触を避けるため面ファスナーを使用。軽量だからできる固定方法だ。2000〜5000rpmで13.8〜14.4Vの推奨充電電圧内にあることを確認する。
バッテリーケース内の隙間は豊富なウレタンパッドで埋めて搭載
【BSLi-02】BS製リチウムバッテリー最小のBSLi-02は、鉛バッテリーBTX4L+/BTZ7S/BTZ7V/BTZ8Vとの互換品。重量はわずか550gだが、エンジン始動能力を示す指標となるCCA値は140で、メンテフリータイプのBTX4L+のCCA50を大幅に上回る。SLAタイプのBTZ7S等との差はわずかだが、軽さで圧倒する。
リチウム/鉛/6Vに使える高性能専用充電器。BS10はリチウムバッテリーにも鉛バッテリーにも使えるうえに、絶版ミニ用の6Vにも対応する多機能高性能充電器。psE認証も取得しているので安心して使用できる。
ヤマハWR250Rもリチウムバッテリーで軽量化カスタム
ヤマハWR250RはYTZ-7Sが純正指定で、ボッシュ製に交換されていた。トレール車らしく省スペース設計となっており、サイズアップによるバッテリー強化は難しい。
実測値2100gの鉛バッテリーに対して、BSLi-02は550gと1500g以上も軽い。WR250Rの装備重量は132kgなので、バッテリー交換による軽量化は魅力的。
金属部との接触はないが、バッテリーケースに収めると奥に入りすぎてしまうので、ウレタンパッドを背面にセットしてゴムバンドのテンションが効くように調整する。
BSLi-02の真鍮端子のネジ穴と純正配線の向きを合わせて接続する。林道ツーリングなどで人里離れた場所に分け入る際に、バッテリーの信頼性は重要だ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
整備部門に加えて塗装や磨き作業まで社内で行うエルオート。コンディションに応じた最善策で販売車両を製作できるのが最大の強み 数ある絶版車の中で頂点に君臨し続けているカワサキZシリーズ。人気車種ゆえ大物の[…]
メンテナンスで覚えて、カスタムで楽しむモンキー&ゴリラ 今回登場するのは、88ccにボアアップした初期型Z50J-IIIゴリラ(1978)。排気量アップに合わせてキャブセッティングを行う必要性があると[…]
作業環境を整えるアイテムが、ミスを減らして仕上がりを向上させる 塗装好きのサンデーメカニックといえども、整備で使う工具に比べて塗装関連の道具を使う機会は少ないはず。スプレーガンの置き場が定まらずひっく[…]
「失敗したかも…」を最小限に食い止めるアイテムも欲しい 最初から最後までトラブルなく進行すれば文句はないが、ペイントブースを使えない場合、ゴミが付いたり虫が飛んでくることもある。多くのサンメカが経験す[…]
塗装の仕上がりは段取り次第。作業前と作業後に必要な用品にも注目 塗装するパーツが小さなエンジンカバーなのか、ガソリンタンクなのかで、難易度や緊張感は異なるものの、作業に必要な道具には大差はない。エアコ[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
4サイクル/2サイクル/ブレーキ/サス用を設定 ホンダは、二輪車用の純正オイルのラインナップを「Pro Honda(プロホンダ)」ブランドに一新し、4月より順次発売すると発表した。 ボトルパッケージは[…]
Q.猛暑も過ぎようやくツーリングへと出かけたのですが、曲がり角やカーブのたびにハンドルを重く感じて、内側に切れるのを左手で支え疲れ果てました。これまで快適に乗れていた愛車が、わずか2ヶ月乗らずにいたら[…]
気にしてる? 結束バンドの切り方 結束バンド、便利ですよね。タイラップ、インシュロック…呼び名はいろいろあって、その人の呼び方で職業がわかっちゃうとかなんとか。某アニメのお陰で「結束バンド」という呼び[…]
シュアラスターのチェーンメンテナンスアイテム バイクの性能を維持し、安全に走行するために欠かせない チェーンメンテナンス。 今回は、チェーンメンテナンスにオススメな、シュアラスターの「チェーンクリーナ[…]
放置車両にやってくるエンジン始動不良 久しぶりにバイクに乗ろうと思ったら、エンジンが始動しない…! セルを回しっぱなしにしてもエンジンに火が入る気配はなく、ガソリンタンクの中身をチェックしてもちゃんと[…]
最新の関連記事(バッテリー)
セルが弱くなったらバッテリー交換のサイン スクーターのバッテリーが弱ってきたのか、始動性がイマイチになってきました。 そういえば、このバッテリーもずいぶんずいぶん古くなってきたので、バッテリーを買い替[…]
開放式/MF式/リチウムイオン式が揃うBSバッテリー。充電電圧を管理して優位性の高いリチウムを活用したい 市販車の一部にも純正採用される例はあるが、リチウムバッテリーは鉛バッテリーに比べるとまだまだ少[…]
たしかな選択と工夫でシート下スペースを拡大! バッテリーを交換する際には、車両に適したバッテリー容量(10時間率容量)とともに、物理的な寸法を合わせる必要がある。そのためカスタムにおいては、大きく重量[…]
バッテリーコンディションがいまひとつ…。Kナナゴー用バッテリーを載せたら、これがイイ!! 還暦をすぎた筆者は、大型バイクで気楽に走り回ることができない情けない体調…。リハビリのつもりでバイクいじりは積[…]
リチウムフェライトは構造と素材的に“燃えない” スマートフォンなどデジタル機器の「リチウムバッテリーが発火」というニュースを見聞きする機会は少なくないし、バイクにリチウムバッテリーを付けたら爆発した![…]
人気記事ランキング(全体)
ファーストガンダムのアナザーストーリーをSHOEIプレミアムヘルメットで体感せよ! 『Z-8 機動戦士ガンダム THE ORIGIN』シリーズは、地球連邦軍とジオン軍のモビルスーツを模した全6種が期間[…]
大型連休の休日割引除外から、年間すべての3連休へ除外対象を拡大 4月から始まる’25年度は、GW、お盆休み、年末年始およびシルバーウイーク(昨年度から追加され、’25年度は9月13日(土)~15日[月[…]
“カスタマイズコンセプト”というわりにはライトカスタムで…… ヤマハは、大阪モーターサイクルショーで「オフロードカスタマイズコンセプト」なる謎のサプライズ展示を敢行。これがさまざまな憶測を呼んでいる。[…]
125ccスクーターは16歳から取得可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限[…]
ヤンマシ勝手に断言。これでレースに出るハズだ!! 「CB1000Fコンセプト モリワキエンジニアリング(以下モリワキCB)」は、見ての通り、ホンダCB1000Fコンセプトをレーサーに仕立てたカスタムモ[…]
最新の投稿記事(全体)
コラムニストの村上菜つみさんが『モトチャンプ』誌に寄稿中の人気連載『ぶらり二輪散歩』。足かけ8年になるこの連載から、著者が12編をピックアップしてまとめた書籍『村上菜つみのぶらり二輪散歩』が好評発売中[…]
4サイクル/2サイクル/ブレーキ/サス用を設定 ホンダは、二輪車用の純正オイルのラインナップを「Pro Honda(プロホンダ)」ブランドに一新し、4月より順次発売すると発表した。 ボトルパッケージは[…]
BMWが打ち出すベテラン用オートマチック 違和感はなく、慣れという意識も必要なかった。走り出して10分もすると、僕はASA(オートメイテッドシフトアシスト)のコツを掴み、その機能をより効率良く活用する[…]
量産車ではこだわりきれないパーツを独自の技術で高品位化。完全ボルトオン設計によりパーツ装着が容易で、ユーザー自身によってアップグレードを図ることができると好評を博しているのが、スピードラのカスタムパー[…]
Q.猛暑も過ぎようやくツーリングへと出かけたのですが、曲がり角やカーブのたびにハンドルを重く感じて、内側に切れるのを左手で支え疲れ果てました。これまで快適に乗れていた愛車が、わずか2ヶ月乗らずにいたら[…]
- 1
- 2