
店内に50台以上の絶版車が並ぶ西日本最大級の絶版車専門店・エルオート(京都府)。ここでは1970〜80年代の名車を販売するだけでなく、隣接する自社工場でさまざまな作業を行うことで、手間のかかるフルレストア車両を一定のペースで製作している。ここでは、手間がかかり仕上がりを大きく左右する塗装部品の下地工程と、アルミ部品の研磨を効率的に行うバレル研磨に注目し、さらにバイクショップとしては型破りといっても過言ではない、オリジナルマフラーの内製工程について紹介しよう。
●文/写真:栗田晃(モトメカニック編集部)●外部リンク:エルオート
バイクショップとは思えない機器を活用して、手間のかかる下地作りや磨き作業を効率アップ
新車から何十年もの時を経たオリジナルコンディション車と、フルオーバーホール/再塗装/再メッキが施されたレストア車両が並ぶ、エルオートのショールーム。
絶版車販売店ではショールームに並ぶ期間が見通せないことを考慮して、オーナーが決まってから整備に着手するショップは少なくない。レストアとなればさらに納期がかかることを覚悟する必要がある。
だがエルオートでは、手間のかかる作業の大半を社内で行うことで、コンスタントかつスピーディーな車両製作を可能としているのが大きな特長だ。
ショールームに隣接した工場には巨大なサンドブラスト機があり、フレームにこびりついた頑固な塗装やサビを根こそぎ落として、完全な素地状態に戻している。剥離剤を使うとサビの原因となる水洗いが不可欠だが、乾燥状態で剥離を行うサンドブラストなら心配は無用だ。
この下地処理は、公式サイトから誰でもオーダーできるので、再塗装やレストアを自分でやりたいサンデーメカニックにとっても有効だ。
ホイールやエンジンカバーなどのアルミ部品を研磨するバレル研磨機。この機器が常時稼働しているのもエルオートならではだ。バフ研磨に比べて光沢が自然で、酸化しにくいバレル研磨はレストアに必須だが、これを社内でできるのだから素晴らしい。
さらに見逃せないのが、マフラー製作まで社内で行っている点。キャリア20年のマフラー職人の手による手曲げのショート管と、ベンダーを使った機械曲げが量産される様子は、とてもバイクショップとは思えない光景である。
バレル研磨やマフラー製作に関しても、専用サイトに詳しく説明があるので、ぜひ参考にしてほしい。フルレストア車を購入する際も、下地作りや磨き作業をオーダーしたい時も、絶版車ならではのマフラーが欲しい時にも、頼りになるのがエルオートだ。
フレームも丸ごと入るサンドブラスト
塗装にとって一番大事なのが下地作りで、ここで手を抜くと後で必ずしっぺ返しを喰らう。社内でパウダーコーティングを行うエルオートでは、常に金属パーツの剥離作業を行っており、その際にビッグバイクのフレームを楽に収容できるサンドブラストが大活躍している。それに加えてサンダーやサンドペーパーを使った下地研磨も行っている。
磨き作業に欠かせないバレル研磨機
エルオートが導入しているバレル研磨機は、研磨メディアが入ったバケット内で、パーツを回転させながら上下運動とスイング運動を行う。CBX400F用ブーメランコムスターホイールのような複雑な形状のパーツの細部まで磨き上げる。バフ研磨と異なり、油分を使わず素材自体の輝きを引き出せるのが特長だ。研磨後にエルオート独自のガラスコーティングを行うことで、光沢が持続し汚れにくくなる。
手曲げ対応のオリジナルマフラー製作部門もあり
バイクショップが自社ブランドのマフラーを販売している例は少なくないが、製造はマフラーメーカーに委託するのが一般的なパターン。ところがエルオートにはマフラー工場が丸ごとあって、オリジナルマフラーを製作しているのだから驚きだ。
機械曲げ用のベンダーもさることながら、圧巻なのはベテランマフラー職人の手による手曲げマフラー。「エルオート直管」と呼ばれるオリジナルマフラーはZ1/Z2/KZ1000Mk2/KZ900/1000/Z400FX用の5製品で、価格はいずれも税込11万円。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
必要なのはキャブ本体とパーツリスト! 燃調キット開発プロセスとは 日本製自動車の性能は優秀で、日本国内で役目を終えた後も中古車として世界各地に輸出され、何十年という時を経ても現役で活躍していることが多[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
単気筒1ボディと4連キャブでは洗浄段取りに違いあり。 超音波洗浄が可能なら、完璧に近い仕上がりに!! いつかそのうち乗るつもり…という「いつか」が数ヶ月から数年になり、もうダメか…となるのが長期放置車[…]
ギボシ端子取り付けのポイントをおさらい バイクいじりのレベルやセンスは、その人が手がけた作業の跡を見れば一目瞭然。電気工作なら配線同士をつなぎ合わせる際、芯線をねじってビニールテープでグルグル巻きにし[…]
バイクとの親和性はスマホを圧倒的に上回る AKEEYOが販売する「AIO-6LTE」は、太陽光の下でもはっきり見える視認性の高い大型6インチのIpsモニター、Wi-FiとBluetoothによるスマホ[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
古いゴムは硬化するのが自然の節理、だが・・・ ゴム部品は古くなると硬くなります。これは熱・酸素・紫外線などによる化学変化(酸化劣化)で、柔軟性の元である分子の網目構造が変化したり、柔らかくする成分(可[…]
必要なのはキャブ本体とパーツリスト! 燃調キット開発プロセスとは 日本製自動車の性能は優秀で、日本国内で役目を終えた後も中古車として世界各地に輸出され、何十年という時を経ても現役で活躍していることが多[…]
40%OFFもある! オトクな7アイテム アストロプロダクツ AP ミニタイヤゲージ:32%OFF ツーリング先やガレージでの日常点検に役立つ、手のひらサイズのミニタイヤゲージだ。とてもコンパクトなの[…]
原付でエンジンがかからない主な原因 「原付 エンジン かからない 原因」とネット検索する方が多いように、バッテリー上がりやプラグの劣化、燃料不足など、複数の原因によってエンジンを始動できなくなるケース[…]
製品の概要と価格情報 デイトナ(Daytona) オイルフィルターレンチ 96320は、カートリッジタイプのオイルフィルター脱着専用工具。仕様は14面 64mmで、ホンダ/ヤマハ/カワサキ向けのデイト[…]
人気記事ランキング(全体)
低く長いデザインが個性マシマシ! レトロモダンなボバークルーザー 中国から新たな刺客がやってきた! ベンダは2016年設立の新興メーカーで、独自設計のエンジンを搭載したクルーザーを中心に、ネイキッドな[…]
初の電動スクーターが「C evolution」 2017年、BMWモトラッドは初の電動スクーター「C evolution(Cエボリューション)」を発売。それまでのガソリンエンジンを搭載したC650に通[…]
秋向けライディングギア 機能性抜群なライディングパーカー JK-604:1万2000円台~ ヨーロッパで人気の気軽にはおれるケブラー裏地入り、スリーシーズン向けスエットパーカ。肩と肘にはCEレベル2ソ[…]
月内発売:SHOEI「GT-Air3 MIKE」 インナーバイザー付きフルフェイスの決定版、SHOEI「GT-Air3」に、ニューグラフィックモデル『MIKE(マイク)』が2025年10月に満を持して[…]
原付でエンジンがかからない主な原因 「原付 エンジン かからない 原因」とネット検索する方が多いように、バッテリー上がりやプラグの劣化、燃料不足など、複数の原因によってエンジンを始動できなくなるケース[…]
最新の投稿記事(全体)
スーパースポーツ譲りのエンジンと幅広いシーンに対応する車体 CB1000Fは、ホンダの代表的なプロダクトブランド「CB」のフラッグシップモデルと位置づけられている。 スーパースポーツモデルのエンジンを[…]
世界最高の熱伝導率を誇るシートとレインウェア並みの防水透湿性を融合 ヤマハの純正アクセサリーをリリースするワイズギア。ʼ25年の秋冬ライディングギアは、バイク用として求められる性能を満たしつつ、温かく[…]
古いゴムは硬化するのが自然の節理、だが・・・ ゴム部品は古くなると硬くなります。これは熱・酸素・紫外線などによる化学変化(酸化劣化)で、柔軟性の元である分子の網目構造が変化したり、柔らかくする成分(可[…]
アッパーミドルクラスに君臨する“Sugomi”ゼットの中核モデル カワサキは北米において、948cc並列4気筒エンジンを搭載したスーパーネイキッド「Z900」および上級モデル「Z900 SE」の202[…]
スクランブラースタイルのCL500はカスタマイズも楽しい トラディショナルなスクランブラースタイルの大型バイクとして、2023年に登場したHonda「CL500」とはどんなバイクなのでしょうか? 筆者[…]
- 1
- 2