ABSやPPなど、バイクやクルマで多用される樹脂部品の補修において、頼りになるのは“熱”。樹脂補修に特化した高性能な接着剤も存在するが、熱可塑性樹脂のクラックや欠損を修理する際には、破損部分を加熱/溶着するのが手っ取り早いことが多い。ストレートの新製品「プラスチックリペアキットコードレスタイプ7・4V」は、3種類のコテ先いずれも面積が大きく、接合面を幅広く加熱できるのが特徴だ。
●文/写真:モトメカニック(栗田晃) ●外部リンク:ストレート
ステンメッシュを温めてワレ樹脂患部へ潜り込ませて補強!!
樹脂部品の加熱補修には、接合部分に金属製のピンを溶け込ませる方法と、接合部分を溶かして溶着させる方法がある。前者はピンが補強材となって強度を確保し、後者は金属接合における溶接と同様、しっかり溶け込ませれば補修以前と同様の強度が得られる利点がある。
溶着補修の際に重要なのが、加熱温度と加温面積。電気工作用のはんだゴテには、樹脂を溶かすのに十分な熱量があるが、一般的なコテ先だと先端が尖っているため、加熱範囲がピンポイントになりがち。それに対してストレートの新製品「プラスチックリペアキットコードレスタイプ7.4V」のコテ先は、3種類ともいずれも面積が大きく、接合面を幅広く加熱できる。
ストレートでは以前からコードレスタイプのプラスチックリペアキットを販売しているが、新型では内蔵リチウムイオン電池の電圧を2倍にすることで、コテ先温度は420〜500℃から600〜650℃へと大幅にアップ。同時に温度上昇スピードも速くなり、補修開始までの待ち時間が短縮されたのも見逃せない。
ここでは、ウインカーの取り付け部分が大きく破損したリヤフェンダーで、新型リペアキットの使い勝手を試してみた。破損部分に欠損がなく、クラック部分がぴったり合う場合には、突き合わせた断面にV字の溝を掘り、溶接における開先を設けることで溶け込みが促進され、接合部分の強度を上げることができる。
一方、樹脂溶着は金属溶接より広範囲に熱を加えやすいことから、付属のステンレスメッシュを母材に溶け込ませて、“面”で強度を稼ぐこともできる。
ここで実感できるのが、新型の加熱能力の高さだ。従来型でステンレスメッシュを加熱する場合、メッシュ自体の放熱効果によって加温時間が長くなる傾向があった。だが新型では、幅広タイプのコテ先でもメッシュに十分な熱を加えることができ、板厚の厚いフェンダー素材にも余裕で溶け込ませることができた。
金属でも樹脂でも、表面だけ溶けて内部に熱が伝わっていないと強度不足の原因になるが、この熱量ならそうした心配は無用で、むしろ薄手の素材に対する過熱による変形や穴あきの注意が必要なほど。
絶版車ユーザーにとって、破損した部品もなんとか再利用したいという場面は少なくない。「樹脂溶着はしょせん一時しのぎ」という先入観のあるサンメカもいるかもしれないが、これは目から鱗が落ちるに違いない、本格的なリペアキットである。
プラスチックリペアキットを使って、ヒビの入ったリヤフェンダーを補修
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