
走行安定性という言葉は“前後サスペンションの運動状況”によっても、大きく左右されるものである。街中だろうがワインディングだろうが、気持ち良く走るためには、前後サスペンションの定期的メンテナンスが必要不可欠だ。今回はカワサキ バリオスのリヤサスペンション、特にスイングアームとリンクの点検整備を行った。
●文/写真:モトメカニック編集部
スイングアーム×フレームピボット、単品作動確認でコンディションがわかる!!
沈み込みコンディションばかりを気にしてしまいがちなサスペンションだが、作動状況は全域で重要なことを忘れてはいけない。例えば、ブレーキング時に上半身が前のめりになる=ノーズダイブのタイミングでは、リヤサスペンションの動きは逆方向、伸びる方向に力が働いている。
フルブレーキング時にリヤ周りがバタバタとホッピングしてしまう挙動の原因は、リヤサスペンションが伸び切り状態ながら、さらにノーズダイブが続くようなときに起こりやすい。また、リヤ周りの動きが良くないときにフルブレーキングすると、そのような症状も発生する。
いずれにしても重要なことは、サスペンションは作動領域の全域でスムーズに作動していることが重要であり、すべての基本とも言える。リヤ周りの動きが良くないから「リヤショックを高性能品に交換したい!!」とは誰もが考えることだろう。
しかしその前に、周辺部品の作動コンディションの良否も確認しておくことが重要だ。特に、スイングアーム式リヤサスペンションは、複合作動でトータルコンディションが決まるものなのだ。
モノショックの採用例が増え、当然にダイレクトではなくリンクユニットを採用したモデルが数多い。実は、このリンクユニットの動きの渋さが原因で、リヤサスペンションの動きが悪くなっているケースが多々ある。
ショックユニット本体の作動性うんぬんを疑う前に、まずは周辺部品のコンディションアップに注目したメンテナンスにトライしてみよう。
高性能グリスを使って潤い改善、油脂注入で驚きのスムーズさに!!
市販ロードバイクの場合は、様々な部品の奥に隠れてしまっているモノショック。上下の締結ボルトを「真横から抜くことができれば」作業性は良い部類だと考えよう。
できる限り部品は取り外さないで作業したいものだが、そうは問屋が卸さない。リヤホイールを取り外したらリヤサスリンクとショックユニット本体の上側締結ボルトを抜き取ってみた。
リヤショックユニットは比較的容易に引っ張り出すことができたので、整備性は良い部類なのだろうか!? リヤショックさえ外れれば、あとはスムーズに作業進行することができる。
リヤショックユニット本体自体の作動性も重要だ。オーバーホールするのではなくても、ダンパーロッドとシールヘッドの付け根あたりにメタルラバーを吹き付けると摺動抵抗が減る。
スイングアームとフレーム本体を接続する複数のリンクユニットを取り外し、スイングアーム単体での作動性、上下の作動性と左右方向へのガタが無いか!? 手で動かして確認しよう。
L字型のリヤサスペンションリンク。作動開始直後と中間作動域以降では、ショックユニットへの押し込み量が変化するリンク形状を採用している。極圧が加わる場所だ。
ベアリングとブッシュに摩耗痕や作動不良は無かったが、ほぼ乾燥した状態でコンディションは良くなかった。汚れていたとしてもグリスが付着していた方が安心だ。洗浄&グリスアップ。
極圧が加わる箇所へはメタルやベアリングが採用されるが、バリオスには極細ニードルローラーベアリングが3 か所すべてに採用されている。ローラー受けブッシュを洗浄しよう。
ベアリング受けブッシュをしっかり洗浄したら、ペアリングとの摺動で発生したキズや摩耗が無いか確認しよう。キズを発見したらブッシュもベアリングも同時交換しないといけない。
ブッシュピンを洗浄し、リンク内のベアリングにもパーツクリーナーを吹き付けてしっかりエアーブローしたら、ベアリング内に高性能グリスを塗り込むようにしっかり塗布しよう。
グリス塗布が完了したら、それぞれのベアリングにブッシュピンを差し込み、それぞれのピンをグルグル回してグリスをしっかり馴染ませよう。このグリスアップで作動性が激変する。
リンクアームの締結ボルトやショックユニット本体を締め付ける締結ボルトにもグリスを塗布して復元しよう。グルグル回る部品ではないが、極圧箇所なのでグリスの塗布は必要だ。
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