
雨風/紫外線/動物のマーキングなどにより、ガレージ保管に比べて屋外保管のバイクの方が劣化しやすいのは仕方がない。特にシートはダメージを受けやすく、応急措置が難しい。中途半端にお茶を濁すぐらいなら、レザー張り替えで一新しよう。本記事ではバリオスのシート表皮を丸中洋行が取り扱うNTB製レザーに張り替える。デザインの再現性も素晴らしいが、リーズナブルなのも魅力で、ウェルダーパターン仕様はベルト/金具付きで参考価格9400円。無地タイプなら金具付きで6400円だ。
●写真/文:モトメカニック編集部 ●外部リンク:丸中洋行
シートレザーを張り込む際はシワができないよう強く引くのがコツ
シートを裏返すと、破れたレザーは全周タッピングビスで固定されていた。ということは、このレザーは過去に張り替えられたものと推測できる。手元にタッカーがなかったのかもしれないが、丁寧な仕事ぶりだった。
スポンジ前端部の色が濃いのは、水が染み込んでいたため。さらに症状が進行するとボロボロに崩れてしまうが、幸いそれほどでもなかったので、風通しの良い日陰で干して水分を乾燥させる。
裂け目が目立つ部分を接着剤で貼り付ける。損傷が大きい場合の対応策として、丸中洋行では補修用スポンジと専用の接着剤も販売している。切れが大きい場合には、スポンジを貼り成型する。
シートボトムとの接着も脆弱だったようで、スポンジを引っ張ると簡単に剥がれてしまった。このまま表皮を張るとボトムとスポンジが動いてホールド性が悪いので、再度接着しなくてはならない。
シートボトムとスポンジの両面に接着剤を塗布する。ゴム系接着剤でポピュラーなボンドG17の場合、塗布した両面が指で触れても付着しない程度に乾燥してから貼り合わせよう。
接着部分の形状を合わせて貼り合わせたら、スポンジを押しつけて24時間程度乾燥させる。ベルトなどを巻くと当たり具合に強弱ができるので、一度スポンジを押しつけたらそのまま置いておこう。
シートレザーは前後と左右の中央部分を最初に固定する。NTBのレザーは前後の中心に合わせマークがあるので、ここをシートボトムの中心に合わせる。レザー境界のパイピング位置も調整しておく。
タッカーの先端でレザーをシートボトムに押しつけながらステープルを打ち込む。エアー圧が高すぎると、ステープルがレザーを突き抜けてしまうので、何度も破れてしまう時は設定圧力を調整する。
前端部を固定したら、シート後方にレザーを強く引きながらシートボトムへ巻き込み、合わせマーク部分にステープルを打ち込む。張り具合が気に入らなければ、ステープルを抜いて打ち直しても良い。
側面はスポンジの角とレザーのパイピングの位置を合わせるため、スポンジを潰しながらレザーをボトム側に巻き込む力が必要。NTBレザーは伸縮性が高いので、張りが甘いとたるみの原因になる。
最初から高い完成度を求める必要はなく、まずは引っ張り込んだレザーを暫定的にでも固定しよう。その後反対側の側面を何点か固定して、偏っていないかを確認しながらステープルの数を増やす。
パイピングや縫製のラインとスポンジやボトムのラインが合わない時は、ヒートガンで軽くあぶってレザーを引っ張るのも有効。ただし加熱しすぎると変質したり偏伸びにつながるので注意が必要。
レザー全体のバランスが整ったら、全周にわたりステープルを打ち込んでいく。メーカー純正のシートは整然と並んでいるが、重要なのは表面なので抜けやすい角部分は複列になってもかまわない。
ステープル固定を前提に設計されたNTB のレザーは、シートボトム側の“糊しろ”部分が均等で美しい。純正補修用レザーとしては、文句の付け所のない製品と言えるだろう。
レザーが折り重ってステープルが貫通しにくい部分は、接着剤で貼り付けておく。シート着脱時に触れることが多い後端は、シートカウルの隙間から見えることもあるので、接着して見栄えを良くしよう。
シートベルト金具の取り付け部分はあらかじめレザーに穴があり、シートボトム裏側のナット置とピッタリ一致している。ベルトの張力も強すぎず弱すぎず絶妙だ。
ワンオフでオーダーするとパターンが縫製仕上げになることが多いが、NTBは純正シートと同様の高周波溶着で製造しているので、雨が染み込みにくい。シートをキレイにするとバイク全体のイメージが激変する!!
※本記事は“モトメカニック”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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