愛車を点検や車検に出した際に「チェーンが伸びていたので、張っておきました」と言われた経験はないだろうか? 伸びのチェックは日常点検でも大切だが、そのそもチェーンはドコが伸びるのだろう? チェーンの販売メーカーであるサンスターに聞いてみた!
●文:ミリオーレ編集部(伊藤康司) ●写真:長谷川徹 サンスター ●外部リンク:サンスター
チェーンのプレート部分は伸びない! ではどこが伸びる?
バイクのドライブチェーンは徐々に伸びていく…が、いったいドコが伸びるのだろう? たとえば1000ccスーパースポーツなら、チェーンは200馬力を超えるパワーをエンジンから後輪に伝えているわけで、その猛烈な負荷や走行距離(時間)による劣化(金属疲労など)で、おもにチェーンのプレートが少しずつ伸びているイメージがある。
ところがそれはカン違い。近年のチェーンは非常に頑強で、大型車用のチェーンの引っ張り強度は数トンにも及ぶので、大パワーが加わっても金属の外プレートや内プレートは伸びたりしない。
それならドコが伸びているのか? じつは『パーツ自体はドコも伸びていない』のだ!
一見するとチェーンは金属性の1本の紐(ヒモ)のように思うが、実際はかなりの数量のパーツで組み上げられ、ブッシュとピンによってリンク(チェーンのコマ)が繋がっている。このブッシュとピンが少しずつ摩耗していくことで隙間が大きくなり、その隙間によってチェーン全体が長くなる。これが“伸び”の正体なのだ。
チェーンの構造
摩耗した分だけチェーンが長くなる!
チェーンが伸びるとどうなる?
多くの中~大型バイクのチェーンは100リンク以上ある。そこでブッシュやピンが摩耗して、仮に隙間が0.1mm広がっただけでも、チェーン全体では1cmほど長くなる。
そしてチェーンが伸びると、チェーンのピッチ(コマのローラーとローラーの間隔)と、スプロケットのピッチ(歯と歯の間隔)が合わなくなる“ピッチずれ”を起こす。この状態で走ると、振動や騒音が大きくなって乗り心地が悪化するのはもちろん、厳密に言えば駆動ロスが大きくなるため燃費も悪化する。
「ピッチずれ」とはこんな状態
また、“ピッチずれ”を起こした状態で走ると、チェーンのローラーをスプロケットの歯底で受け止められない嵌合が緩い状態になるため、スプロケットの摩耗が加速度的に進んでしまい、さらにピッチずれが大きくなる悪循環に陥る。
チェーンが伸びるとスプロケットの減りも早くなる
メンテナンスで寿命が変わる!
距離を走ることでチェーンのピンとブッシュが摩耗するのは避けられないが、メンテナンスで寿命を延ばすことはできる。まず“清掃”と“潤滑”でシールリングを保護したりサビを防いで、チェーンの動きを良くする。そして、チェーンの“張り”を適正に保つことも大切だ。
とはいえ、チェーンの“張り調整”は、近年のバイク(とくに大型車)や外国車は、大型サイズの工具や特殊工具が必要な場合も多く、ユーザー自身で調整するにはハードルが高いのも事実。そこでユーザーは定期的にチェーンの“張り具合”のチェックを行い、調整作業はバイクショップに依頼するのが得策だろう。
チェーンの寿命は? 何キロくらい使える?
チェーンは何キロ使えるのか? シールチェーンで1万5000~2万km、ノンシールチェーンで5000km前後という説もあるが、これはあくまで目安。実際はバイクの種類や装着しているチェーンの種類/走り方/メンテナンスの状況で、けっこう幅があると考えた方が良い。
そこで走行距離ではなく、ピッチずれを考慮して「どれだけ伸びたら交換か?」と考えると、スイングアームのチェーン引きで新品チェーンから8~10mm引いたら使用限度だろう。これはチェーン全体の長さとしては16~20mmぐらい伸びた状態だ。チェーンアジャスターにまだ引き代の余裕があっても、コレくらい伸びたら迷わず交換しよう。
サンスターであれば、チェーン&前後スプロケットの3点セットがあったり、適合表ですぐに愛車のチェーンやスプロケットが適合するかわかるので簡単だ。
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