
はじめてシートに跨った時、はじめてエンジンをかけてスロットルを開けた時…、まだ相手のことを何も知らないのに「あー、この子好きだわー! 安心するー!」と思える出会いだった。そんなファーストインプレッションをもたらしてくれたのが、2023年3月に日本上陸したロイヤルエンフィールドのハンター350だ。
●文:ミリオーレ編集部(村田奈緒子) ●写真:ロイヤルエンフィールド ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム
中型モーターサイクル市場をリードするロイヤルエンフィールド
世界最古のモーターサイクルブランドであるロイヤルエンフィールドは「Pure Ride, Pure Motorcycling」をコンセプトに掲げ、オーセンティックなバイクづくりを継承。開発は最新のエンジンと必要最低限の電子制御を備えつつ、より多くのライダーに受け入れられるフィーリングや扱いやすさ、そして何よりも手に届く価格でこれらを実現することを重視している。
その結果、世界の中型モーターサイクル(250~750cc)市場をリードしており、このセグメントにおいては本国のインドだけでなくイギリスや韓国、ニュージーランドで1位、台湾で2位、タイで3位のシェアを獲得している。
そんなブランドが満を持して2022年8月に発表したニューモデルが「ハンター350」だ。販売開始からわずか6カ月で10万台以上を登録したという話題のバイクが、今春、日本にも上陸した。
ハンター350のデザインベースとなったのは1950年代に登場した「フューリー」というモデル。俊敏/軽量/フレキシブル/タウンユースをコンセプトにしたモデルだった。モノクロ写真はオリジナルモデルを当時撮影したもので、カラー写真は近年レストアされたもの。
【2023 ROYAL ENFIELD HUNTER 350】主要諸元■シート高790mm 車重181kg ■空冷4ストSOHC単気筒 349cc 20ps/6100rpm 2.45kg-m/4000rpm 変速機5段 燃料タンク容量13L ■タイヤサイズF=110/70-17 R=140/70-17 ●価格:65万7800円〜
350ccエンジン3兄弟の末っ子の実力は…
ハンター350の発売以前、すでにロイヤルエンフィールドは350ccラインナップに「クラシック350」と「メテオ350」を有していた。古き良き英国車を彷彿させるクラシック350とクルーザータイプのメテオ350、ともに異なる性格ながらも親しみやすい乗り味に定評があった。この2モデルと同じエンジン、そしてハリスパフォーマンス製のフレームで新しく構築されたのがハンター350だ。
3兄弟の末っ子として誕生したハンター350だが、3モデルの中でもっともコンパクトで軽量というのが一番の特長だろう。具体的な数値で比較すると、ハンター350の重量はメテオ350よりも10kg軽く、クラシック350より14kgも軽い。ホイールベースはメテオ350よりも30mm短く、クラシック350より20mm短い。またホイールサイズも異なり、ハンター350は前後17インチを採用。クラシック350は前19/後18インチで、メテオ350は前19/後17インチ。こうした数値だけを見ても、軽量ゆえの乗りやすさを感じられる。
ハンター350と初対面したときに思い浮かんだのは、軽快なイメージ。丸目1灯のヘッドライトとポップなデザインのタンクが印象的なバイクは、どことなくクラシカルなバイクの雰囲気も醸し出していた。人懐っこさそうなバイクだなという印象は、跨ってみるとさらにアップ。単気筒ならではのスリムさにシート高790mmという設計で、足着き性も良好。とはいえ身長173cmある身としてはコンパクトすぎて、どこに乗るのが正しいのかが最初はイマイチ分からず。普段はシート高800mmのロイヤルエンフィールド ヒマラヤに乗っており、それと比べてもシート高は5mmしか違わないわけだが、見た目以上のコンパクトさに驚いたのだった。ちなみに以前、試乗したクラシック350(シート高805mm)よりも断然小さい。
市街地に気軽に駆け出したくなるコンパクトさが魅力のハンター350。サイドスタンドだけでなくセンタースタンドも装備。ノーマルのまま楽しむのももちろんだが、いろいろとカスタムをしてオリジナルを追求するのもおすすめ。
タンク/サイドカバー/灯火類などはすべて丸みを帯びたデザイン。その統一感が、クラシカルな雰囲気を醸す。丸型テールランプはLED仕様。スピードのみのシンプルなメーターまわり。オドメーターや時計はデジタル表示になっている。USB充電ポートも標準装備。
349ccの単気筒エンジン。ボア×ストロークは75×85.8mmのロングストロークだが、軽やかに回るレスポンスを約束。20psを6100rpmで発揮する。フロントホイールは3兄弟の中でもっとも小径で軽量な17インチで、タイヤはチューブレスを採用。タンクカラーに合わせたリムテープがあしらわれており、こうしたディテールがオシャレ。ロイヤルエンフィールドのラインナップで前後17インチを採用するのはハンター350のみ。全長の短さにも貢献し、これがクイックなハンドリングを生み出す。ブレーキはバイブレ製。
ロイヤルエンフィールドのバイクは、どの車種もシートが上質。ハンター350も同じく、ロング走行後でもお尻が痛くなることはなかった。燃料タンク容量は13Lで、跨った際のホールド感も高い。
あの小動物のような愛らしさと力強さ
小さくて、人懐っこい末っ子と言葉にするとなんとなく柔和だが、スロットルをはじめて開けた途端、その印象は吹き飛んだ。ハンター350はスマートに、そしてクイックに力強く加速。それは「ボクちん、そんなにヤワじゃないよ」と言わんばかりのスポーティーさだ。街中をストップ&ゴーするたびに、その快活な走りに目が覚める思いがした。
もちろん低回転域では、シングルエンジン特有のトコトコ感も楽しめる。高速道路も走行してみたが、120km/h巡航も問題ない。ただ個人的な好みとしては、街乗りで感じた心地よさの延長を高速走行でも求めるとなると、100km/hほどが安心感がある。そのため、ロングツーリングというより、日々の交通手段であったり主に市街地を走ることを想定したクイックさや俊敏さを重視するライダーに、ハンター350は好相性といえるだろう。
ちなみに、これまで私にとってロイヤルエンフィールドのヒマラヤは「アヒルがガーガーしてる感じで牧歌的」であり、それに対してクラシック350は「白鳥のような洗練さとスマートさ」というのがインプレッションとしてあった。愛らしい見た目に秘められたパワーとクイックさがあるハンター350を動物で例えようと考えてみると「回し車で猛ダッシュするハムスター」が思い浮かんだ。
350cc兄弟の末っ子は、計量&コンパクトながらも元気いっぱい。その元気の良さは、世代やキャリアを問わず、多くのライダーに愛されるものだろう。その愛される理由は言葉にする必要はなく、すでに世界で10万台を突破したという販売台数の数字が物語っている。気軽に走りたい……そんな気持ちに寄り添い、気分を高揚させてくれる相棒に選ぶなら、ハンター350は筆頭候補だろう。
同じエンジンながらもこんなに乗り味が異なるバイクが生まれることに、驚きと、バイクというプロダクトの深みを改めて感じたように思う。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
9種類ものバリエーションから好みで選べる ついにクラシック350が発売になった。ついに、と書いたのはその期待値がとても高かったから。ロイヤルエンフィールドは2021年に同系列のエンジンを搭載するメテオ[…]
市街地を散策しながら、そのポジションと鼓動を楽しむ まだ眠っている早朝の都内は、とても静かだった。日の出が早くなるこの季節、朝に乗るバイクがとても気持ち良い。コンチネンタルGT650のセパレートハンド[…]
ヒマラヤでヒマラヤを走る! Moto Himalaya の参加者募集だって! Moto Himalayaのお申込み先:MOTO TOURS JAPANinquiry@mototoursjapan.co[…]
微妙に大型。でも、こだわる価値はある。 この日、早朝の都内は空気がピシッと音を立てて凍ってしまいそうな冷気に包まれていた。でも、こんな日は、空冷単気筒が抜群に気持ちが良い。空気が圧縮されてガソリンと燃[…]
インドで開催されたスーパーメテオ650の試乗会に参加! EICMA2022でロイヤルエンフィールドが発表したスーパーメテオ650の試乗会に参加するため、人生2回目のインドにやってきた。デリーからジャイ[…]
最新の関連記事(ロイヤルエンフィールド)
イベントレース『鉄馬』に併せて開催 ゴールデンウィークの5月4日、火の国熊本のHSR九州サーキットコースに於いて、5度目の開催となる鉄フレームのイベントレース『2025 鉄馬with βTITANIU[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc 400ccクラスは、普通二輪免許を取ってから間もないビギナーも選ぶことができる排気量帯で、16歳から乗ることができる。 そんな400cc[…]
重厚感とユーザー寄りのデザインと扱いやすさが魅力本物のクラシックテイストがロイヤルエンフィールドの特長 1901年にイギリスで創業したロイヤルエンフィールドは、世界最古のバイクブランドとして長い歴史の[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
ニューモデル攻勢は一段落。これからは収穫の時期 REを追うライバルも続々登場しているなか、商品展開も次のステージに移行すると考えていいのだろうか。 「たしかにそうですが、REは他社の競合機種をあまり意[…]
最新の関連記事(新型バイク(外国車/輸入車))
通勤からツーリング、サーキット走行まで使えるカウル付き軽二輪スポーツ 日本の道に最適といえるサイズ感や、通勤/通学からツーリングまで使える万能さが軽二輪(126~250cc)の長所。スクーターやレジャ[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc 400ccクラスは、普通二輪免許を取ってから間もないビギナーも選ぶことができる排気量帯で、16歳から乗ることができる。 そんな400cc[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
AMAスーパークロス2位の実績を持つモトクロッサーのエンデューロ仕様が上陸! トライアンフが開発したオフロードマシンには、250cc4ストローク単気筒エンジンを搭載するモデルと、450cc4ストローク[…]
クラシックなボバースタイルをもつ”個性爆発”のゴアン クラシック350 名は体を表すというが、ロイヤルエンフィールドのニューモデル「ゴアン クラシック350」が表現するものは何か? 英国発祥のロイヤル[…]
人気記事ランキング(全体)
トレッドのグルーブ(溝)は、ウエットでタイヤと接地面の間の水幕を防ぐだけでなく、ドライでも路面追従性で柔軟性を高める大きな役割が! タイヤのトレッドにあるグルーブと呼ばれる溝は、雨が降ったウエット路面[…]
新型スーパースポーツ「YZF-R9」の国内導入を2025年春以降に発表 欧州および北米ではすでに正式発表されている新型スーパースポーツモデル「YZF-R9」。日本国内にも2025年春以降に導入されると[…]
実は大型二輪の408cc! 初代はコンチハンのみで37馬力 ご存じ初代モデルは全車408ccのために発売翌年に導入された中型免許では乗車不可。そのため’90年代前半頃まで中古市場で398cc版の方が人[…]
北米にもあるイエローグラフィック! スズキ イエローマジックといえば、モトクロスやスーパークロスで長年にわたって活躍してきた競技用マシン「RMシリーズ」を思い浮かべる方も少なくないだろう。少なくとも一[…]
アルミだらけで個性が薄くなったスーパースポーツに、スチールパイプの逞しい懐かしさを耐久レーサーに重ねる…… ン? GSX-Rに1200? それにSSって?……濃いスズキファンなら知っているGS1200[…]
最新の投稿記事(全体)
イベントレース『鉄馬』に併せて開催 ゴールデンウィークの5月4日、火の国熊本のHSR九州サーキットコースに於いて、5度目の開催となる鉄フレームのイベントレース『2025 鉄馬with βTITANIU[…]
ロングツーリングでも聴き疲れしないサウンド 数あるアドベンチャーモデルの中で、草分け的存在といえるのがBMWモトラッドのGSシリーズ。中でもフラッグシップモデルのR1300GSは2024年に国内導入さ[…]
カラーバリエーションがすべて変更 2021年モデルの発売は、2020年10月1日。同年9月にはニンジャZX-25Rが登場しており、250クラスは2気筒のニンジャ250から4気筒へと移り変わりつつあった[…]
圧倒的! これ以上の“高級感”を持つバイクは世界にも多くない 「ゴールドウィング」は、1975年に初代デビューし、2001年に最大排気量モデルとして登場。そして2025年、50年の月日を経てついに50[…]
カワサキ500SSマッハⅢに並ぶほどの動力性能 「ナナハンキラー」なる言葉を耳にしたことがありますか? 若い世代では「なんだそれ?」となるかもしれません。 1980年登場のヤマハRZ250/RZ350[…]
- 1
- 2