ビッグバイクに軽さとスポーツ性を融合!

さらばトップパフォーマー!【スズキGSX-Rを振り返る パート1】大排気量レプリカの先駆け!

当時の750ccのライバル車より30~50kgも軽量。これがビッグバイクの常識を覆す

アルミフレームに軽量コンパクトでパワフルな油冷エンジンを搭載したGSX-R750。179kgの車両重量は、当時の750ccのライバル車より30~50kgも軽量。そして最高出力は国内モデルは自主規制いっぱいの77psだが、輸出仕様は100psでパワーウエイトレシオは1.76kg/ps。これは同年代の750cc(輸出モデル)の中で突出した数値。ちなみに当時の輸出向けのカタログでは、簡単なチューンナップで130psにパワーアップできると謳っている。

耐久レーサーを彷彿させるスタイルはもちろん、トップブリッジ下にクリップされた低いセパレートハンドルや後退したステップが生み出す前傾したライディングポジションも、既存のビッグバイクとは隔世の感があった。

1985年 GSX-R750
スズキ独自の超軽量コンパクトな油冷4気筒DOHC4バルブエンジンは77psを発揮(輸出仕様は100ps)。フレームはマルチリブのアルミ製ダブルクレードルで、耐久レーサーGS1000Rを彷彿させるフルカウルを纏い、乾燥重量は179kg。86年はスイングアームを延長してラジアルタイヤを装備し、サイドカウルのダクトも変更。87年は電気式アンチノーズダイブやフローティングディスクの装備、ホイールリムやタイヤがワイド化。

1986年 GSX-750R
FRP製のシングルシート仕様で、乾式クラッチやステアリングダンパー、電気式アンチノーズダイブなどスペシャルな装備を持ち、限定500台で発売。105万円の価格は、国産車で初の100万円越えで話題になった。

1988年 GSX-R750
フルモデルチェンジ。エンジンはショートストローク化してより高回転型になり、SACSのオイル流路を見直して冷却効率を向上。アルミフレームは新設計で足まわりもリファインし、新型カウリングは空気抵抗を11%低減。輸出仕様は112ps。

1989年 GSX-R750R
加速性能を重視してトランスミッションの変速比を変更。シングルシート装備の限定モデルGSX-R750R(写真)も販売し、こちらはボア×ストロークを元に戻し、バフ処理されたコンロッドやチタンバルブ、クロスミッションや大口径キャブレターなどTT-F1レーサー同様のパーツや加工が奢られる。燃料タンクはアルミ製、カウリングはFRP製で、STD車より12kgも軽量。輸出モデルのフルパワー仕様は120ps。

1990年 GSX-R750
89年GSX-R750Rのノウハウを投影してエンジンをリファイン。市販750クラスで初の倒立式フロントフォークを装備。

1991年 GSX-R750
油冷エンジンの最終モデル。2バルブ1ロッカーアームを1バルブの独立型に変更して動弁系を軽量化し、90年のワークスマシンと同一形状の吸排気ポートにリファイン。カウリングもスラント形状に変更し、空気抵抗を低減。

750と似て異なる高速ツアラーの1100も登場

GSX-R750はTT-F1や耐久レースのベースマシンとしての役割もあったが、当時の海外向けの市販ビッグバイクは1000ccオーバーがメジャー。そこで登場したのがGSX-R1100だ。レース目的の車両はないため750よりハンドル位置が高かったり、ハンドリングも安定傾向。

基本的にGSX-R750の1年遅れでマイナーチェンジやモデルチェンジを重ね、93年の水冷化以降はより高速ツアラー的な性格が明確に。98年モデルを最後にGSX1300R Hayabusaにバトンを渡した。

1986年 GSX-R1100
GSX-R750同様の油冷4気筒DOHCエンジンは、排気量1052ccで130psを発揮。アルミのダブルクレードルフレームや耐久レーサーを彷彿させるフルカウルも750と同系列。車両重量は197kg。87年は小変更とカラーチェンジ、88年は新形ホイールで後輪幅を140→160mmに拡大。

1989年 GSX-R1100
フルモデルチェンジ。油冷エンジンはボア×ストロークともに拡大して排気量を1127ccにアップ。キャブレターがスリングショットBST36に換わり、最高出力が143psにパワーアップ。フレームやカウリングのデザインは前年のGSX-R750を踏襲。90年は倒立式フロントフォークを装備。

1991年 GSX-R1100
2バルブ1ロッカーアームを1バルブの独立型に変更して動弁系を軽量化。キャブレターも変更。カウリングがスラント形状に変わって空気抵抗を低減。92年はカラーチェンジのみで、油冷エンジンの最終モデルとなる。

1993年 GSX-R1100W
750の1年遅れでエンジンを水冷化したフルチェンジモデル。ボア×ストロークを75.5×60mmとロングストローク寄りに変更して排気量は1074ccに縮小されたが、最高出力は155psにアップ。新型フレームは剛性を大幅アップし、スラントしたアッパーカウルは前モデルに似ているが外装も変更。94年はカラーチェンジのみ。95年はフレームやフロントフォーク、ホイールなどを薄肉化して車重を10kg軽量化。以降はカラーチェンジのみで1998年まで生産。

こんな原付きスポーツも登場!

初代GSX-R750発売の翌年1986年に、原付きスポーツのGAG(ギャグ)が登場。スチール製角型パイプのバックボーンフレームに、ビジネス車のバーディ系の4ストローク空冷49cc単気筒OHCをベースとした4速MTのエンジンを搭載。ポップなカラーリングが揃ったが、中でも写真のカラーはGSX-Rを彷彿させる。シートカウルのSACSの文字も、よく見ると「スズキ・アドバンス・コミカル・システム」とする凝りようだ。

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