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7月に開催されたKUSHITANI RIDING MEETINGに、イデミツ・ホンダ・チーム・アジアからMoto2にフル参戦している小椋 藍選手がインストラクターとして参加した。走行会の合間に、少しばかり行ったインタビューの様子も紹介しよう。
●文:ミリオーレ編集部(村田奈緒子) ●写真:ホンダ・チーム・アジア、村田奈緒子
小椋 藍(おぐら・あい)/2001年1月26日生まれ。2019年、Honda Team AsiaよりMoto3クラスにフル参戦を開始。2020年は2位を2度、3位を5度獲得してチャンピオン争いを繰り広げ、ランキング3位を獲得。2021年、IDEMITSU Honda Team Asia よりMoto2クラスにステップアップし、総合8位。2022年、第6戦スペインGPで初優勝を飾った。
小椋 藍の走りを間近でチェック!
クシタニが主催しているKUSHITANI RIDING MEETING。この走行会の名物となっているのが、同乗走行(コース内の各ポイントを周り、目の前でプロライダーの走りを見学。 ブレーキングやラインどりなどを細かく確認することができ、インストラクターからのアドバイスもその場でレクチャーを受けることも可能)だ。
7月に開催された走行会では、インストラクターとして参加した小椋が同乗走行に登場。走りを間近で見ることができるチャンスを逃すまいと、多くのファンがカメラを向けた。
KUSHITANI RIDING MEETINGはフリー走行はもちろん、KUSHITANIのサポートライダーによるスクールやKUSHITANIのアドバイザーによるサポートも実施。会場内では最新のレザースーツの試着や、製品メンテナンスの相談なども可能だ。
Moto2で2年目をむかえた現在
2022 Moto2第6戦スペインで初優勝をかなえ、歓喜に満ちた表情を見せた。
MIGLIOREのディレクター、小川は2020年末から機会があるたびに小椋にインタビューをお願いしている。(その一部は、記事「2022 Moto2第6戦スペインGP 【小椋 藍、世界グランプリ初勝利は、完璧なポール・トゥ・ウィン!】」で触れている)。
そのインタビューに立ち会ってまず感じたのは、20代前半とは思えない冷静さ。そして頑なに閉じているわけではないがインタビューだからと言葉を重ねるタイプでもなく、多くは語らないし、ましてや笑顔を見せることがあまりない印象だった。それゆえに2022 Moto2第6戦スペインで小椋が自身初の勝利を挙げたときの喜びを爆発させたような表情に、心底嬉しくなったことを覚えている。
そんな小椋に、走行会のすきま時間で少しばかりインタビューをお願いした。
──スペインでの初優勝、おめでとうございます。常に落ち着いて戦っている印象ですが、今年はどんな感じですか?
小椋「Moto2で2年目ということもあり、予想がつくようになってきました。その分落ち着いて、焦らずに……それは去年に比べるとできているのかなと思います」
──以前お話を伺ったときに「100%を越えるのは難しい」とありましたが、いまはどうですか?
小椋「やはり100%を超えていくのは難しいけど、その分少しずつ自力が上がってきています。1番は高い自力でベストを出す、限界を超えなくていいというのが完璧だと思うので。そうすることでリスクなく、いつも良い結果が出せますし……まあ、言うのは簡単なんですけどね」
──レースを拝見していると、全体をコントロールしながら常に冷静な印象を受けます。
小椋「もちろん全開で走っていますが、入ってきたライダーに無理にかぶせたりとかはしないですね。変に無理をすると、最悪転倒するわけだし。リスクマネージメントの塩梅は気をつけています。特に自分が速いレースはいいんですが、まだまだ周りが早いレースもありますしね。ひとつポジションを下げることも考慮することで、次のレースに確実につなげていこうと思っています」
──「疲れるのは自分の乗り方が悪いから」とおっしゃっていたこともありましたが、トレーニングなど変化はありますか?
小椋「Moto3からMoto2になって多少筋肉は増えたかなと思いますがウエイトトレーニングをそこまでしていないので、基本はこれまで通りオートバイに乗ることがトレーニングです。
もちろん走っていると疲れはしますけど、その点は上手に乗れているか否かで大きく変わりますよね。過剰に疲れるのは何か乗り方が間違っているわけですし」
──疲れるのは乗り方が悪いからというのはレースだけでなく、一般のライダーにも当てはまるポイントですね。
小椋「僕は小柄なので、レースではオートバイの上でかなり動かないといけないのですが、なるべく上手にコントロールしたいと思っています。腕上がり(筋区画の内圧が上昇することで血液循環が低下し、筋繊維と神経に強い痛みをともなう)になるライダーもいますからね。僕? 僕はなったことないです」
インタビュー終わりにふいに手を見せてくださいとお願いして撮った1枚。マメができやすい箇所は爪切りでなるべく薄くなるように整えていて、これは中学生の頃からの習慣とのこと。「体の成長ってすごくて、隔週の頻度で手入れしています」と笑う。世界で戦う21歳の手は、長い積み重ねが感じられつつ清らかな印象だった。
いつでも出せる一発の速さが足りない
──ライバルは?
小椋「いまのライバルは、やっぱりトップ4(チェレスティアーノ・ヴィエッティ、アウグスト・フェルナンデス、アロン・カネット)」
──なかでもヴィエッティ(ムーニーVR46レーシングチーム)とは、お互い意識しているのかな?と思って見ていました。
小椋「彼とは年齢も近いし、CEV Moto3ジュニア世界選手権で走っていた頃から一緒で、同じタイミング(2021年)でMoto2に昇格。常に戦っている相手というか、意識はしていますね」
──どんなライダーになりたいと、いま思っていますか?
小椋「結果だけをみると安定感などは増したとは思うのですが、いつでも出せる一発の速さがちょっと足りない……。だから単純にスピード、速さももちろんですが、コンディションへの慣れや把握がより良く、そして早く対応できるようになりたいです」
──ありがとうございました。期待しています! 頑張ってください!
小椋「ありがとうございました」
改めて彼の経歴などを確認するにあたって、ホンダ・レーシングのWEBサイト内にあるライダー紹介のページを確認した。そこには、まだ幼さが残る小椋のポートレートが掲載されていた。
今回のインタビューでは、顔つきも含めてより凛々しさが感じられた。冷静でありながらも、世界を見据えた情熱の狭間で、着々と自分がなすべきことを見極めて実現するための最善を探る。そこには穏やかさもあるようだった。
次に会うとき、彼はどんな表情で、どんな言葉で語るのか。そのとき、どんなステージが彼を待っているのか。期待は大きくなるばかりだ。
2022 Moto2は後半戦がスタート!
2022年シーズンのMoto2は後半戦がスタート。シルバーストーンで小椋は4位でチェッカーを受けた。最新(第12戦終了時点)のポイントランキングは、1位フェルナンデス(171)、2位小椋(158)、3位ヴィエッティ(156)、4位カネット(127)となっている。日本人ライダーが世界選手権でタイトル争いをするのは本当に久しぶりのこと。応援したい。
ちなみにMotoGPのLCRホンダのチームマネージャー、ルーチョ・チェッキネロは、2023年シーズンのライダーは中上か小椋のどちらかになるとコメント。ここから2戦くらいを見ながら決めるようである。
※本記事は“ミリオーレ”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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