1891年にイギリスで産声をあげたロイヤルエンフィールドは、世界最古のモーターサイクルブランドとしても知られる。長い歴史のなかで拠点はインドへと変わったが、現在ではインドとイギリスそれぞれに研究開発センターを設立。ミドルクラスのカテゴリーでは世界屈指のシェアを獲得し、躍進を続けている。日本でも年々ファンが増えているロイヤルエンフィールドについて、アジア太平洋地域のビジネスヘッドAnuj Dua(アヌージ・ドゥア)さんに伺った。
●文:ミリオーレ編集部(村田奈緒子) ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム
インドとイギリスに550名ほどのスタッフを抱え、年間100万台を生産
──2021年度(2021年4月〜2022年3月)のロイヤルエンフィールドの年間生産量を教えてください。
Anuj Dua「2021年度のバイク販売台数は59万5474台、年間生産能力は約100万台です。ロイヤルエンフィールドは250〜750ccのミドルクラスバイクのセグメントでのグローバルリーダーであると自負しています。
インド国内のミドルクラスバイクの中では約90%のシェアを誇り、世界60カ国以上・840を超えるタッチポイントによって世界中でその存在感を拡大しています」
ちなみに主な海外メーカーの2021年総販売台数は、BMWが19万4261台、ドゥカティが5万9447台。この数字と比較しても、その規模の大きさがよくわかる。
──インド(本社および工場)、イギリス(R&D)、およびロイヤルエンフィールドの他の施設には何人の従業員が働いていますか?
Anuj Dua「チェンナイのグローバル本社で400人近くの従業員が働いており、イギリスのブランティングソープにある英国テクニカルセンターでは154人の従業員が働いています」
──近年、新モデルの導入がこれまで以上に加速していると感じています。企業方針はもちろんですが、組織としても変化はありましたか?
Anuj Dua「世界の中型二輪車市場は大きな成長の可能性を秘めていると感じています。スーパースポーツバイクを好む趣味性の高いライダーもいますが、国際市場で見てみると都市に住むライダーの多くが求めているのは中排気量のバイクです。
我が社はこのチャンスを強く認識していますし、私たちが作り続けてきたプロダクトはこのセグメントを拡大してリードするのに非常に適しています。私たちのバイクは、ブランドスローガンとして掲げている『ピュア・モーターサイクリング』=モーターサイクルに乗ることを純粋に楽しむ経験、を提供するのにぴったりです。時代にマッチしたバイクを少しでも多くの人に早く届けたいという想いで開発しています。開発スピードが増し、常に新しい提案を重ねてきたことでロイヤルエンフィールドは過去7年間で収益が5倍以上に成長しています」
現在、日本では個性豊かな5つのモデルを販売
──現在のラインナップのなかで、開発プロセスでもっとも困難だった点は何でしたか?
Anuj Dua「そうですね、いくつかお話しましょう。
クラシック350の主な課題は、典型的で時代を超越したレトロなスタイルでありながら、現代のモーターサイクルの基盤を維持することでした。何度も再考することで、時代を超えたクラシックスタイルを維持しながら、よりスムーズで洗練された乗り心地で強化された崇高なモーターサイクルが誕生しました。
幅広いカラーやデザインのラインナップで、日本でもとても人気が高いと聞き、嬉しく思います。
メテオ350が目指したのは、エルゴノミクスと取り扱いやすさです。クラシックなスタイリングとモダンな機能の組み合わせによって、ベテランライダーだけでなくエントリーユーザーにも素晴らしいクルージング体験を保証できる1台になっています。
オンロードとオフロードに対応するアドベンチャーツアラーのヒマラヤは、素晴らしいツーリング能力を備えた完全なグラウンドアップエンジンに注力しました。シンプルで有能、そして頑丈なモーターサイクルは、世界中の冒険にふさわしい味方です。
コンチネンタルGT650とINT650の核となるのは、パラレルツインエンジンとイギリスの名門であるハリスフレーム。英国クラシックを感じさせてくれるディテールが溢れるデザインに加え、シンプルでありながら最先端の空冷650cc2気筒エンジンによってパンチの効いた、しかもユーザーフレンドリーな47psを生み出します。ゴージャスなエキゾーストノートも魅力ですね。
こうして幅広いラインナップを提案することで、長距離を走りたいベテランライダーから都会的で意欲的な若いライダーまで、幅広い層から支持を得ています」
──コンチネンタルGT650とINT650に搭載されるエンジンを新たに設計するって、実は凄いことですよね?
Anuj Dua「この2つのバイクは、私たちの歴史が作り出した結晶といえます。目的は、これまでのシングルエンジンが提供できるものを超えて次のレベルの高いパフォーマンスを提供し、威圧感がなく、アクセスしやすく、親しみやすく、乗り心地がよく、扱いやすい、刺激的なモーターサイクルを開発することでした。
クラシカルなスタイルと乖離しないように、排気量はあえて750ccまでは上げないことを選択。とはいえ、あるレベルでの高速走行(ハイウェイを想定)のための十分なパワーとトルクも重視して設計しています」
空冷エンジンを継承すること、未来のこと
──最近は空冷エンジンをやめてしまうメーカーもたくさんあります。ロイヤルエンフィールドはこれからも空冷エンジンのみで継続していくんですか? それとも近い将来に、新たな計画を立てていますか?
Anuj Dua「私たちは、戦略的な製品開発に取り組んでいます。未来を見据えながら、内燃エンジンの提供に引き続き取り組んでいます。インドの自動車メーカー『アイシャー・モーターズ』の一部門であるロイヤルエンフィールドは、ブランドと広範な流通ネットワーク、そして製品開発と製造の能力これらすべてを活用して、グローバル市場向けのプレミアム電気自動車の開発にも尽力します」
──今年6月、伝説的フレームビルダーのスティーブ・ハリス氏が亡くなったという悲しいニュースがありましたね。※ロイヤルエンフィールドは2015年にイギリスのコンストラクターであるハリス・パフォーマンスを買収している。
Anuj Dua「私たちは彼の死をとても深く悲しんでいます。彼が残してくれた素晴らしい技術を礎に、ロイヤルエンフィールドはさらなる発展とモーターサイクル界への貢献を目指していきたいと思います」
──日本のロイヤルエンフィールドファンに向けて、一言お願いします!
Anuj Dua「私たちは、若いライダーからベテランライダーまで、多くのユーザに向けてレジャーライディングをカルチャーとして発展させることに尽力してきました。
古き良きレトロなスタイルを継承しつつ、最新の技術と優れた人間工学を備えることでモダンで乗りやすいスタイルを提供しています。まだロイヤルエンフィールドを未経験というライダーは、ぜひ一度、私たちのバイクに乗ってみていただき、そしてフィードバックをお願いします。その声は、私たちの明日につながっています」
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